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Czarnowicki T, et al. Novel concepts of prevention and treatment of atopic dermatitis through barrier and immune manipulations with implications for the atopic march. J Allergy Clin Immunol 2017; 139:1723-34.

今回から6回にわたって、アトピー性皮膚炎の最新の総論を全訳して お送りします。

■ 最近は、臨床系のジャーナルがインパクトファクターを大きく伸ばし、基礎医学系のジャーナルはインパクトファクターが下がる傾向にあります。しかし、基礎医学はとても重要であり、臨床医学の理解を助けて発達させる重要な分野であることは変わりません。

■ 私の尊敬している先生のお一人に福井大学小児科の大嶋勇成先生がいらっしゃいます。大嶋先生はもともとは基礎医学の先生だったそうですが、その後臨床研究にも取り組んでおられ、多くの素晴らしい業績を残されています。一方で、大嶋先生はレビューも多く書かれており、最新かつ多くの論文が引用されており、私はいつも楽しみにしています。これも、基礎医学をされていたからこその見識からでているものだろうと思っています。

■ 私は基礎医学に疎い臨床医ですが、基礎医学も少しずつ理解しなければならないと思っています。

■  一方、アトピー性皮膚炎の病態・予防に関する戦略は大きく進歩しようとしています。その発展は臨床医学と基礎医学が共に発展してきたからといえるでしょう。そこで、苦手な基礎医学の分野は、もっぱらレビューでキャッチアップしようとしています。

■ 前置きが長くなりましたが、今回は、最近JACI(米国免疫アレルギー学会雑誌)に発表された、アトピー性皮膚炎のレビューを全訳してお示ししたいと思います。このレビューはCME(Continuing medical education)の一貫として発表されたもののようです。

Continuing medical education

■ 「生涯継続した教育」とでも言うのでしょうか、全文がフリーで読めるようになっています。そこで、皆様とシェアさせていただくために、今回は全訳を試みました(一部意訳や省略)。とはいえ、すごく長く、かつ微に入り細に入りのレビューなので、とても1回では紹介できそうにありません。4回にわけてご紹介させていただきます→6回に変更します

■ 一般の方々には難しい内容かもしれず、医療関係者にもそれほどウケない内容と思っています。しかし、料理人が本当の意味で料理ができるようになるためには、卵の凝固温度やその凝固の仕組みまで踏み込んで勉強をするように、医者もその仕組みを知らなければ応用が効かないと思っていただければと思います。

 

抄録

■ 皮膚バリア異常は、生後早期のアトピー性皮膚炎(AD)の発症において基本的な役割を果たす。

■ バリア機能障害からの抗原侵入は、自然免疫応答の増強、抗原提示細胞刺激、および皮膚疾患の呼び水となる可能性がある。

■ Th2が進行している環境では、所属リンパ節で生じているT細胞/B細胞の相互作用は、過度のIgEのスイッチにつながる。同時に、メモリーT細胞を循環系に再分布させることは、T細胞の皮膚浸潤によるADの悪化を招くばかりでなく、食物アレルギー、喘息、およびアレルギー性鼻炎を含むアトピーマーチを発動させ皮膚を越えて拡大する。

■ ADを予防する可能性のある主な介入方法は、保湿剤によるバリア機能の保護を含む皮膚バリアの改善に重点が置かれている。

■ ADが確定した小児に対する二次予防に関しては、軽症ADに対するプロアクティブなアプローチ(ステロイド外用またはカルシニューリン阻害剤外用のいずれかを用いる)、または、重症ADにおいて全身性免疫抑制を必要とするような、他のアトピー性疾患の予防に層別化することが出来る。

 

結局、何を知りたい?

 ✅アトピー性皮膚炎の予防と病態を多くの文献をもとにレビューしようとしている。

 

 

 

 アトピー性皮膚炎の病態。

イントロダクション

■ アトピー性皮膚炎(AD)は、小児の17%〜24%および成人の4%〜7%に発症し、生後6ヶ月までに45%、5歳までに85%が発症する。これまでの概念とは対照的に、罹患した小児の半分しか成人までに寛解せず、その慢性的な性質を支持することが知られている。

■ 一般的に、免疫調節不全(インサイド-アウト仮説)はADの病因と永続化に寄与していると認識されているにもかかわらず、アウトサイド-インもしくは、皮膚のバリアがアレルギー疾患の開始に鍵となる役割を果たしているというADのバリア理論も支持されている

■ 後者の理論を支持するエビデンスは、皮膚透過性(経表皮水分蒸散量[TEWL]を用いて決定される)と疾患重症度や続発性のサイトカインカスケードの誘導に正の相関があることから示される。

■ AD発症において、皮膚バリア異常が主な役割を果たすという説得力のある議論があるが、これらの異常はアレルギー感作においても主要な役割があり、ADだけでなくアトピーマーチ全体の扉を開くことが一般に認められている。

■ 進行中の努力は、ADの予防だけでなくその後のアトピーマーチを予防する、最適な一次予防方法を特定することを目的としている。

■ このレビューにおいて、我々は、様々な皮膚バリア・コンポーネントと、それらの関与をADフェノタイプを具体化してまとめ、ADとアトピーマーチの関連について考察する。

■ 最後に我々は、ADとその以降のアレルギー症状に対する可能性ある予防的介入の、現在のコンセプトを示す。

 

AD患者における皮膚バリア要素とその異常

■ 表皮および脂質表皮は、基底層、有棘層、顆粒層(SG;ケラトヒアリン顆粒[例えばフィラグリン[FLG]とloricrin]とラメラ体[例えば脂質])と角質層(SC[すなわち、最外層];図1)を含む4種類の層から形成される。

図1

■ 皮膚バリア障害は、外来抗原(例えば、ダニおよび食物アレルゲン)の侵入および自然免疫およびパターン認識受容体の活性化を促進する。
■ 組織の炎症(図の拡大されたエリア)を開始および永続化させるために、PAMPおよびDAMPが組織障害および/または微生物プロファイルに続いて分泌される。
■ 抗原刺激はTH2を助長しているサイトカイン分泌(IL-25、IL-33、TSLP)、引き続くIgE-とFCεRI関連LC、真皮のDC活性化に至り、Th2の識別とB細胞のIgE産生を開始する局所の流入領域リンパ節に対する遊走が始まる。
■ T細胞は、皮膚(CLA+ TEM/TCM細胞)に浸潤するために循環するか、多様なアトピー障害を開始するために他の器官に分布する(CLA-TEM/TCM細胞)。

 

■ SCは角質細胞と細胞外基質を構成し、古典的な「レンガとモルタル」構造をつくる。
角質細胞は、接合部構造と改良されたデスモソーム(すなわち、コルネオデスモゾーム)によって、共に機械的に保持される。

■ コルネオデスモシン、カリクレイン関連ペプチダーゼ、リンパ上皮Kazal関連インヒビター(lymphoepithelial Kazal-type related inhibitor ;LEKTI)は全て、コルネオデスモゾーム処理に関与している。

■ コルネオデスモゾームの細胞外部分が完全に分解されたときに、落屑が生じる。コルネオデスモソーム機能不全の遺伝型は、完全な皮膚バリアにおけるこの構造の重要性を強調し説明された。

■ 種々のコルネオデスモゾームのコンポーネント(例えば、デスモグレイン1)の調節不全は、AD患者に関連している。

■ SCは、表皮バリアの主要コンポーネントとして、抗菌、抗酸化、保水、結合、感覚特性を有する。

■ 細胞外マトリックスは、疎水性遊離脂肪酸、コレステロール、セラミドに富み、最適な比率に維持される。

■ 脂質構成物の破壊は、病変部と非病変部のAD皮膚の両方で報告されている。さらに、TMEM79遺伝子(それは脂質を合成しているラメラ体の分泌に関係している)は、ADと関連していることが示された。これらの変化はTEWLを増加させ、皮膚の水分保持を低下させ、バリア機能を弱めた。

■ Cole らは、小児AD皮膚のトランスクリプトミック分析を実施し、FLG突然変異がないにもかかわらず脂質代謝遺伝子に異常を示し、脂質異常が独立してバリア障害に関与することを示した。その後、ADトランスクリプトームにおけるメタアナリシスは、重要な表皮脂質とTh2活性化に有意な負の相関を示した。

■ さらにまた、安定した脂質代謝がインタクトな皮膚バリアに対し重要であることは、魚鱗癬早産症候群によって示された。魚鱗癬早産症候群は、アトピー症状を持つ、鱗片のない魚鱗癬により臨床的に特徴づけられている。この常染色体劣性疾患は脂肪酸輸送タンパク質4遺伝子(fatty acid transport protein 4 gene;FATP4)の突然変異に起因し、胚形成における表皮バリアの形成に基本的な役割がある。

皮膚脂質を回復させることを目的とした治療法は、AD患者に有益であると立証される可能性がある。

■ セラミドが豊富に含有された保湿剤は、皮膚バリアを完全な状態に復元することが示された。

■ さらに、ステロイド外用薬は、OTC(医師の処方なしで売れる)の、ワセリンベースもしくはグリチルリチン含有の保湿剤と比較して、軽症・中等症のAD患者に対する有効性を示さなかった。そして、AD治療に対する外用もしくは経口オイルと脂肪酸の有効性を評価した最近のエビデンスベースのレビューは、オイルの外用がADのために有用かもしれないと結論している。

■ 肝臓X受容体(Liver X receptor ;LXR)は、多数の小分子アゴニストによって賦活化される転写制御因子である。LXRアゴニストは、動物モデルにおいてラメラ脂質レベルと角質細胞分化を増加させ、炎症を減少させて薬効があることが示された。LXRアゴニスト外用薬は、AD患者で研究されている。

 

 

 

結局、何がわかった?

 ✅皮膚バリア異常は、生後早期のアトピー性皮膚炎(AD)の発症において基本的な役割を果たし、インサイド-アウト仮説だけでなく、アウトサイド-イン仮説がアレルギー疾患の発症の鍵となることが示されている。

 ✅バリア機能として、表皮および脂質表皮に関し、脂質や角質層の構造に言及している。

 

 

次回は、アトピー性皮膚炎の病態の続きで、タイトジャンクションやフィラグリンに関してお話しします。

【全訳】アトピー性皮膚炎の予防と治療の新しい概念(第2回/全6回)ータイトジャンクションとフィラグリンー

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