Eid NS, et al., Anti-inflammatory dosing of theophylline in the treatment of status asthmaticus in children. J Asthma Allergy 2016; 9:183-9.
以前はよく使われていたテオフィリン。最近は使われなくなっています。
■ 今週は夏季休暇の関係で、久しぶりにweekdayの更新を1日飛ばしてしまいました。そこで、土曜日の更新をしたいと思います(今日はすでに仕事はしています)。
■ さて、私が医者になったばかりの頃は、まだステロイド吸入薬もロイコトリエン拮抗薬(オノン・シングレアなど)は喘息診療には使用されておらず、喘息患者さんの入院はとても多かったのを覚えています。
■ そして当時は、テオフィリン製剤はきわめて一般的な薬剤でした。しかし、吸入ステロイド薬やロイコトリエン拮抗薬の出現により、その重要性は低下し、現在はあくまでピンチヒッター的な役割になっています。
■ けいれんの問題なども使用頻度の低下に影響し、また、海外でテオフィリンは十分認められていなかったことも要因でした。
■ しかし、最近、テオフィリンの有用性に関する研究結果が出始めており、その一つをご紹介いたします。
テオフィリンを使用した群と現在のテオフィリンを使用しなかった群をレトロスペクティブに比較。
背景
■ 低用量テオフィリンは、ステロイドの反応性を改善させるhistone deacetylase-2活性を回復させる能力があることが認められており、臨床転帰を改善する。
■ このコンセプトの証明として、急性喘息増悪のために入院した小児患者に対し、レトロスペクティブに低用量テオフィリンによる治療の効果を評価した。
方法
■ 現在の標準治療のみを受けた患者と、低用量テオフィリン(5-7mg/kg/日)治療を受けた患者を比較した。
■ 本研究の主要評価項目は、病院入院期間 (length of stay; LOS)だった。
■ 全般的な線形混合効果モデル(Generalized linear mixed-effects modeling; GLMM)は、テオフィリンが独立して結果を予測したかどうか調べるために用いられた。
■ テオフィリンがLOSに影響するかどうかを調べるために、Cox回帰モデルが実施された。
結果
■ 疾患重症度で調整され、評価された。
■ テオフィリンは有意にコストを改善させた(β=-2,746米ドル、P < 0.001)のと同様、入院期間(LOS)(β=-21.17、P < 0.001)、酸素投与中断までの時間(β=-15.88、P=0.044)、呼吸機能改善までの時間(β=-16.60、P=0.014)、アルブテロールの間隔(β=-23.2、P < 0.001)を改善させた。
論文から引用。テオフィリンはそれぞれの指標を有意に改善させた。
■ さらにまた、テオフィリンは、有意に病院から退院するまでの時間を改善させた(ハザード比 1.75、95%信頼区間1.20-2.54、P=0.004)。
■ 低用量テオフィリン治療を受ける患者とそうしなかった人々の間に副作用の違いを認めなかった。
結論
■ この後向き研究の結果は、低用量テオフィリンが急性喘息持続状態において有効性があることを示唆する。
■ 本研究は、前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験による更なる確認を実施し、この知見を広げていくための根拠となる。
結局、何がわかった?
✅入院した喘息患児に対し、テオフィリン投与は、コスト・入院期間・酸素投与中断までの時間・呼吸機能改善までの時間・気管支拡張薬の使用間隔・退院までの期間を改善した。
テオフィリンの見直しも必要かもしれない。
■ テオフィリンは、今の若い先生方にとっては「過去の遺物」くらいに感じるかもしれませんが、我々の世代は、長く”戦友”として戦ってきた武器でもありました。
■ あくまでレトロスペクティブな研究ではありますが、ベテランのピンチヒッターのように、テオフィリンを切り札として使えるようになっておく必要はあるでしょう。
今日のまとめ!
✅テオフィリンは、追加治療として、まだ道が残っているかもしれない。切り札として残しておくべきだろう。