慢性じんましんと寄生虫は関連するのでしょうか?その検討の結果のレビュー。
■ 慢性じんましんの原因のほとんどは”特発性(原因不明)"ですが、寄生虫がその原因のひとつになるかもしれないという報告があります。
■ 慢性じんましんは、決して予後がいいとは言えず、”治療可能な”慢性じんましんがあるならば朗報と言えます。
■ 今回は、慢性じんましんと寄生虫に関するシステマティックレビューをご紹介いたします。
Kolkhir P, et al. Chronic spontaneous urticaria and internal parasites-a systematic review. Allergy 2016; 71:308-22.
慢性特発性蕁麻疹と寄生虫感染を検討した研究を抽出し、関連を検討。
■ 慢性特発性蕁麻疹(Chronic spontaneous urticaria; CSU)は、既知または未知の原因により持続性の丘疹、血管浮腫、またはその両方が6週間以上続くと定義される。
■ いくつかの疫学的研究および症例報告は、寄生虫感染(parasite infections; PI)がCSUの原因になりうることを示唆している。
■ CSUにおける寄生虫感染の罹患率および関連性に関する、これまで発表されてきた知見のシステマティックレビューを提供し、可能性のある病理機序について議論する。
■ CSUにおける寄生虫感染の有病率は、独立した39研究によって検討され、報告された合併症は0〜75.4%だった(これらの研究の2/3は感染率10%以下だった)。
■ 成人および小児CSU患者における寄生虫感染の有病率は、それぞれ0%〜75.4%および0%〜37.8%だった。
■ CSU患者は、健常対照と比較して、原虫であると診断されたり、トキソカラ症血清陽性もしくはアニサキスシンプレックス感作のリスクが有意に高かった。
■ 21研究において、抗寄生虫薬による治療の有効性は0〜100%だった(CSU患者269人中35.7%)。
■ 21研究のうち9件(42.8%)において、50%以上の有効性が観察された。
■ 独立した18研究の寄生虫感染患者におけるじんま疹の同時罹患率の既報告の率は1~66.7%だった。
■ 糞線虫症とblastocystosisにおいて、CSUを含む蕁麻疹は、きわめて一般的な症状である可能性がある。
■ 寄生虫感染によるCSUの病原性機序は、特異的IgE、Th2サイトカインの変化、好酸球、補体活性化、凝固系が推定されている。
結局、何がわかった?
✅慢性じんましん患者において、寄生虫感染の合併は0~75.4%と開きがあり、2/3は感染率が10%以下だった。
✅一方、抗寄生虫薬による治療の有効性は35.7%だった。
じんましんの原因として、寄生虫感染はありうるかもしれない。
■ メタアナリシスがきちんと出来たわけではないようですが、寄生虫感染がじんましんの原因になることはあるようです。
■ この考え方から、妊娠中に駆虫薬を使用したらアレルギーがふえるか?という視点からの検討がありましたが、その影響はなかったとされています。
■ また、小児の慢性じんましんの予後を診た検討でも寄生虫は原因に挙げられていません。
■ 本邦ではそこまで寄生虫が多いとは思えないですし、そのまま臨床につかうわけにはいかないかなあと考えています。
今日のまとめ!
✅慢性じんましんに対し、寄生虫感染が原因になるかもしれない。