Bal ZS, et al. The prospective evaluation of risk factors and clinical influence of carbapenem resistance in children with gram-negative bacteria infection. American Journal of Infection Control 2017.[Epub ahead of print]
カルバペネム系抗生物質は最終兵器。カルバペネムが効かなければ、、
■ 耐性菌は頭を悩ませる相手です。
■ 2016年4月5日、関係閣僚会議において、我が国として初めての薬剤耐性菌対策のアクションプランが決定されました。
■ 抗菌薬の最終兵器といえるカルバペネムやニューキノロンといった広域抗生物質に関して、小児でも内服による抗菌薬が上梓されています。濫用は憂慮されると考えられます。
カルバペネム耐性グラム陰性菌の獲得原因と、カルバペネム耐性グラム陰性菌による入院での死亡率を確認した。
背景
■ カルバペネム耐性グラム陰性菌(CRGN)感染症は近年増加しており、重大な罹患率、死亡率、医療費に関連している。
■ この研究の目的は、小児におけるCRGN感染の疫学的と臨床的リスクの特徴、危険因子、転帰を評価し、カルバペネム感受性グラム陰性(CSGN)感染と比較することだった。
方法
■ 2014年4月1日から2014年12月31日までに入院加療した18歳未満の小児における新規に診断されたCRGN感染が、前向きに登録された。
■ また、同じ部署で48時間以内に診断されたCSGN感染患者はすべて対照群に含まれた。
結果
■ この研究には、CRGN感染患者27人とCSGN感染患者28人が登録された。
■ 人工呼吸器関連肺炎が最も一般的な感染タイプであった。
■ 以前のカルバペネムへの使用(相対リスク[RR] 11.368; 95%信頼区間[CI]、1.311-98.589)、長期入院(RR 5.100; 95%CI、1.601-16.242)は、 CRGN感染症を獲得するための独立した危険因子だった。
論文から引用。以前のカルバペネム使用や長期入院はカルバペネム耐性菌の獲得リスクだった。
■ 敗血性ショックは、CRGN群で有意に高かった(RR 9.450; 95%CI 1.075-83.065)。
■ 院内死亡率は、CRGN群で有意に高かった(RR 7.647; 95%CI 1.488-39.290)。
論文から引用。カルバペネム耐性菌群では死亡率が高い。
結論
■ 以前のカルバペネム使用と長期入院は、CRGN感染を獲得するための最も重要なリスク要因であることが示唆された。
■ 先行研究と同様、本研究は、カルバペネム耐性が罹患率、死亡率、医療費を増加させることが示された。
結局、何がわかった?
✅ 以前のカルバペネムへの使用は11.368倍、長期入院は5.100倍、カルバペネム耐性グラム陰性菌感染を起こすリスク因子になった。
✅カルバペネム耐性グラム陰性菌感染は、敗血性ショックを9.45倍、院内死亡率を7.647倍のリスクにした。
カルバペネムは、熟考してから使用するべき。
■ 最近、耐性菌対策に厚労省も本腰を入れるようになり始めました(ポスターはちょっとぶっ飛んでいる印象ではありますが、インパクトはありますね)。
■ カルバペネム製剤は感染症診療の中では最終兵器の一つの言え、その使用には慎重になるべき薬剤です。
■ 現実的には、入院中に使用せざるを得ない場合はあると思いますが、よく考えてから使うべきでしょう。特に、外来のセッティングではそうそう手を出すべき薬剤ではないと思います。
■ 多くの病院で、入院中の静注カルバペネム製剤には、使用制限がかかっているかと思います。一方で内服のカルバペネム製剤(オラペネム)は野放しです。ここには大きな問題があるように思います。もちろん、選択肢として持つべき薬剤ではあるでしょうけれど。
■ とはいえ、ここには簡単でない問題があり、「風邪に抗生剤を処方する」という状況がすくなからず見受けられる状況で、二次感染をきたした場合、セカンドチョイス、サードチョイスの薬剤を使用せざるを得ない状況があるということです。
■ 初期診療で抗生剤に手を出すのをワンテンポまってから、もしくは使用するならば狭域でいいかどうかをよく考える必要があるでしょう。これは、自分自身にも言い聞かせなければならない問題です。
今日のまとめ!
✅以前のカルバペネムへの使用、長期入院は5.100倍、カルバペネム耐性グラム陰性菌感染を獲得するリスク因子であり、カルバペネム耐性グラム陰性菌感染は、敗血性ショックや死亡率を大きく上げた。