日本における学童に対するインフルエンザワクチン集団接種の歴史とその社会的影響とは?
■ インフルエンザが流行しています。
■ さて、日本では、1977年からインフルエンザ対策として学童への集団予防接種が実施されていました。
■ しかし、学童へのワクチン集団接種が中止になったあと、高齢者のインフルエンザによる超過死亡が多くなったことが報告されました。
■ 児童に対する集団接種は、高齢者における、年間約37,000〜49,000人の死亡を予防していたのです。
■ では、この時期、学童以外の乳幼児に対する間接的な効果はあったのでしょうか。
■ 乳幼児のインフルエンザによる死亡を大きく減らしていたことがあきらかになっています。
Sugaya N, Takeuchi Y: Mass vaccination of schoolchildren against influenza and its impact on the influenza-associated mortality rate among children in Japan. Clinical infectious diseases 2005, 41:939-947. 10.1086/432938
1972年から2003年の1~4歳の乳幼児の月別全死因死亡率と肺炎・インフルエンザ死亡率、インフルエンザによる超過死亡率を推定した。
背景
■ 1960年代に日本で実施された学童への集団予防接種は、インフルエンザ対策として効果を示し、全死亡率の低下と関連していた。
■ このプログラムは1994年に中止され、その後死亡率は季節的に上昇傾向にあった。
■ 最近では幼児や高齢者へのインフルエンザワクチン接種が普及している。
■ 本研究は、学童への集団ワクチン接種中止前後での幼児におけるインフルエンザ関連死亡率の変化を調査することを目的とする。
方法
■ 1972年から2003年にかけての幼児(1~4歳)の月別全死因死亡率と、1972年から1999年の肺炎・インフルエンザ(P&I)による死亡率を分析した。
■ インフルエンザによる超過死亡率は、ベースラインとなる年間死亡率を前後2年の12月に報告された死亡数を基にした3年間の移動平均で推定した。
結果
■ 幼児の全死因死亡率には1990年代に顕著な冬のピークが見られた。
■ これらのピークは月毎の肺炎&インフルエンザの死亡率の冬季におけるピークと一致し、高齢者の冬季におけるピークと非常に類似していた。
■ 1990年から2000年の冬季11シーズンにおける幼児の過剰死亡数は783人と推定され、2000年以降は死亡数の冬季ピークは観察されなかった。
結論
■ 1990年代の幼児におけるインフルエンザ関連死の増加は、学童への集団予防接種の中止が原因であったと考えられる。
■ 近年の幼児へのインフルエンザワクチン接種の増加とノイラミニダーゼ阻害薬の日常的な使用により、インフルエンザ関連死亡率は減少傾向にある。
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