自閉症スペクトラム障害の発症を、MRIで予測できるかもしれない

Hazlett HC, et al. Early brain development in infants at high risk for autism spectrum disorder. Nature 2017;542:348-351.

 自閉症スペクトラム障害の発症を低年齢で鑑別することは困難です。

■ 私はアレルギー専門医ですので、重症の自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder;ASD)のお子さんを長期に見ていくことはほとんどありませんが、診断に悩むことがあります。

■ ASDのお子さんを早期に画像で検査できるかもしれないという報告がNatureに報告され、話題になっていましたので、抄録を中心に読んでみました。

■ この論文は、すでに全文がフリーで読めますので上のリンクからどうぞ。

 

 

 ハイリスク家族歴のある乳児106人と低リスクの乳児42人において、生後6~12か月時にMRIを実施し、自閉症スペクトラム障害の発症を予測できるかどうかを検討した。

■ 脳の拡大は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児で観察されている。しかし、この現象のタイミングと症状の出現との関係は不明である。

■ 4歳までフォローアップ調査した児において、レトロスペクティブに検討した2歳時点での頭囲および縦断的な脳容積に関する研究は、ASDにおいて発症初期に脳容積の増加が現れる可能性があるというエビデンスを示している。

■ 自閉症のリスクが高い家族歴のある乳児に対する研究は、自閉症の早期発症に関する洞察を提供している。そして、ASDにおける特徴的な社会的障害が生後1歳後半と2歳時に出現することを見出した。

■ これらの観察結果は、ASDのハイリスク家族歴のある幼児において、前向きの脳の画像検討が、ASDの診断の出現前に起こる脳容積の出生早期の変化により鑑別可能性があることを示唆している。

ASDハイリスク家族歴のある乳児106人および低リスクの乳児42人における前向き神経画像研究において、生後6-12ヵ月における皮質表面積過剰増大が、生後24ヵ月にADSと診断された15人のハイリスク乳児における12-24ヵ月の脳容積過成長に先行することを示す。

論文から引用。ハイリスクASD児における生後6〜12ヶ月時点での脳表面積の顕著な拡大を示す皮質領域。

 

■ 脳容積過成長は、自閉的な社会的障害の発現と重症度にリンクしていた。

■ 主に生後6ヶ月および12ヶ月の脳MRIからの表面積情報を使用したディープラーニング(深層学習)アルゴリズムは、ハイリスク児における生後24ヶ月の自閉症の診断を予測した(正の予測値は81%、感度は88%)

■ これらの知見は、自閉症行動が最初に現れる時期に脳の初期の変化が明らかになることを証明する。

 

結局、何がわかった?

 ✅生後6~12か月時の特定の脳皮質領域の過成長は、生後2歳での自閉症スペクトラム障害の発症を予測し、ディープラーニングアルゴリズムを使用した感度は88%だった。

 

 

 ディープラーニングを用いた画像診断は、今後さらに発展するでしょう。

■ まだ一般診療に使える方法ではないでしょうけれど、MRIにこの研究で用いたアルゴリズムを用いると、早めにASDの発症を予測できる可能性があります。

■ AIやらディープラーニングやら、人間の出る幕ではないような研究手法が増えてきていますが、こういった手法により、より早期に適切な治療に介入できるようになれば良いと思います。人間は人間しかできないことを出来るようにならないとですね。

 

 

今日のまとめ!

 ✅特定の脳皮質の過形成が自閉症スペクトラム障害の発症を予測し、その予測精度も感度88%と良好だった。

 

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