Corren J, et al. Tezepelumab in Adults with Uncontrolled Asthma. N Engl J Med 2017; 377:936-46.
このTSLPモノクローナル抗体の報告は重要と思います。
■ 今回ご紹介するのはNEJMで発表された報告です。このブログではNEJMの報告の紹介ははあえて避けています。多くの先生がNEJMは目を通しておられるのではないかなあと思いますし、私の拙い邦訳などはいらないのではないかと思うからです。実際、私がUPしても、他の先生方のブログよりGoogle検索で上位に来ることはあまりないですから。私のブログでお役に立つ場面が少ないんです。
■ でも、時々、「これは!」という論文があり、自分自身でも備忘録として残しておかねばならないと思う報告はUPさせていただいています。
■ 今回もアレルギー領域のトピックスであろうと思い、UPさせていただきます。
テゼペルマブを3種類の量で52週間投与し、喘息の増悪率を比較した。
背景
■ 中等症から重症の喘息患者、特に非好酸球性炎症患者では十分にコントロール出来ていない。
■ この試験では、中程度から高用量の吸入ステロイド+長時間作動型β刺激剤による治療にもかかわらず、喘息がコントロール不良であった患者において、上皮細胞由来サイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin;TSLP)特異的ヒトモノクローナル抗体であるテゼペルマブ(AMG 157 / MEDI9929)による効果と安全性を検討した。
方法
■ この検討は、3種類の用量によるテゼパルマブ皮下投与をプラセボと52週間比較したフェーズ2の無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。
■ 主なエンドポイントは、52週時点における患者1人当たりの年間の喘息増悪率だった。
結果
■ 4週間ごと70mg(低用量; 145人)、4週間ごと210mg(中用量; 145人)、2週間ごと280mg(高用量; 146人)のテゼパルマブを使用した。
■ 第52週の喘息増悪率は、プラセボ群(148例)が年換算0.67件であったのと比較し、それぞれ0.26件、0.19件、0.22件であった。
■ すなわち、テゼペルマブ群の悪化率は、それぞれ、プラセボ群の増悪率よりも61%、71%、66%低かった(P <0.001)。
■ 登録時の好酸球数にかかわらず、同様の結果が観察された。
■ 気管支拡張薬使用前のFEV1は、52週時点でテゼペルマブ群は、プラセボ群と比較して全て高値だった(差、低用量群0.12リットル[P = 0.01]、中用量群0.11リットル[P = 0.02]、高用量群0.15リットル[P = 0.002])。
■ 一方、中用量群2人、高用量群3人、プラセボ群1人が有害事象により試験レジメンを中止した。
結論
■ 中高用量の吸入ステロイド薬+長時間作動型β刺激剤で加療している患者において、テゼペルマブ治療を受けた患者は、試験開始時の好酸球数とは関係なく、臨床的に喘息増悪率が有意に低かった。
結局、何がわかった?
✅TSLP特異的モノクローナル抗体であるテゼペルマブは、好酸球にかかわらず喘息増悪率を低下させた。
✅テゼペルマブは、呼吸機能も改善させた。
生物学的製剤はアレルギー性のターゲットを狙っているものが多く、”非”好酸球性に効果が認められたテゼペルマブは期待される治療法。
■ 生物学的製剤は、喘息治療のパラダイムシフトをもたらそうとしていますが、ターゲットは好酸球性炎症がメインでした。
生物学的製剤による難治性喘息治療のパラダイムシフト~米国で承認された生物学的製剤(第3回/全3回)
■ テゼペルマブは、非好酸球性炎症に効果があるのが特筆すべき点と思います。
今日のまとめ!
✅TLSPモノクローナル抗体であるテゼペルマブは、好酸球性炎症以外の重症喘息への効果が期待される。