
Abrams EM, et al. Early Solid Food Introduction: Role in Food Allergy Prevention and Implications for Breastfeeding. J Pediatr 2017; 184:13-8.
食物アレルギーの予防に関するレビュー。
■ 以前、食物アレルギー予防の総論をご紹介しましたが、その後、格段の進歩を遂げようとしています。
■ そんな中、Journal of Pediatricsに、全文フリーで読めるレビューが発表されました。特に表がきれいにまとまっていて有用です。
■ そこで、翻訳してご紹介したいと思います。
食物アレルギー予防研究は、観察研究から臨床研究へ。
イントロダクション
■ 食物アレルギーは全世界の人口の2%〜10%に影響を及ぼすと推定されている。
■ 米国疾病管理予防センターは、1997年から2011年にかけて、米国の食物アレルギー罹患率が3.4%から5.1%に上昇したと報告した。
■ その結果、食物アレルギーの研究は治療から予防に移行してきている。
■ いくつかの研究は、離乳食を生後6ヵ月前に早期開始することが、特に卵やピーナッツアレルギー予防の有効な手段となる可能性があることを示唆している。
■ しかし、離乳食早期導入は、多くの一般的な小児ガイドラインと同様、生後6ヶ月までの完全母乳という現在の世界保健機関(WHO) の勧告と矛盾している。
■ WHOの韓国は、アレルギー予防を意味しておらず、最近の食物アレルギー予防と早期離乳食導入の関係を結論づけた最近のリサーチ結果の前に決められたものである。
■ しかし、早期離乳食導入の潜在的影響は、母乳育児期間と同様に、完全母乳の利益とともに評価する必要がある。
■ ここでは、生後6ヵ月前に離乳食を導入すると食物アレルギーのリスクが低下する可能性があるかどうかというエビデンスを調査した。
■ さらに、早期離乳食導入が、完全母乳のメリットと母乳育児の継続期間の両方に及ぼす影響を検討する。
食物アレルギー予防に対する生後6ヶ月前の離乳食導入の役割
■ 過去10年間に発表された重要な観察研究のいくつかは、生後6ヵ月前にアレルギーの可能性のある食物を導入すると食物アレルギーの発症リスクが低下する可能性があることを示唆している。
論文から引用し、管理人が翻訳。
■ 2008年のアンケート調査は、イスラエル在住のユダヤ人の児童と比較して、英国在住ののユダヤ系児童のピーナッツアレルギーの罹患率は10倍高かったと報告した(1.85% vs 0.17%、P <.001)。英国と比較して、イスラエルでは、1歳までにピーナッツの導入がより早く頻繁であったことに起因していた。
■ 2010年、オーストラリアでの乳児2589人の横断研究では、生後4-6ヶ月での卵開始は、その後の開始に比較して卵アレルギーの罹患率が低かった(aOR、10-12ヵ月導入1.6、12ヵ月以降の導入3.4)。
■ 同じ年、13000人以上のイスラエル在住の乳児の摂食歴に関する前向き研究は、生後14日以内に牛乳製品の定期的な摂取を開始すると、その後の摂取開始と比較して牛乳アレルギーのリスクが低いと報告した(14日以降の導入 OR 19.3 )。
■ さらに、症例対照研究では、牛乳摂取を1ヵ月以上遅らせるか、または不規則に摂取していると、牛乳アレルギー率が高いとした(対照と比較してaOR 23.7、卵アレルギー群と比較してaOR 10.2)。
■ 最近発表されたいくつかの観察研究でも、早期からの多数の食物の摂取が食物アレルギーを含むアレルギー疾患のリスクを低下させることを示唆している。
■ 2011年、米国の乳児 - 母親594ペアの前向き出生コホートでは、生後4ヵ月前の離乳食摂取が、ピーナッツ感作のリスクを減少させ(aOR、0.2; P = .007)、アレルギーまたは喘息の両親を患う小児では2歳時点で卵の感作も同様にリスクを減少させた(カットオフ;卵特異的IgE≧0.70 kU / LとしてOR, 0.5; P=. 022)。
■ フィンランドの出生コホート994人は、オート麦(> 5ヵ月)と小麦(> 6ヵ月)を含む複数の食物導入は、食物アレルゲン感作と有意に関連していたと報告した。
結局、何がわかった?
✅食物アレルギーの予防研究は、観察研究から臨床研究に進んでいる。進行中の研究もあるが、ピーナッツ・卵に対する臨床研究はかなり進んできている。
✅観察研究として、1)イスラエル在住/英国在住のユダヤ人でのピーナッツアレルギー、2)オーストラリアでの卵アレルギー、3)イスラエル/日本での乳アレルギーなどで、時期は違えど、早期摂取開始が食物アレルギーの予防に効果があることを示している。
まずはイントロダクション&観察研究の紹介ですが、図はしばらくは現役で使えるでしょう。
■ しばらく、と言っても1年程度でしょうか。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の予防に関しては、今後も研究が進むと思われます。
■ すでに、本邦でも「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」により、予防策が現実に運用され始めています。
■ ただし、これが現実に卵アレルギーを減らすのかどうかは、これからの運用と経過を見ていく必要があります。
■ 「生後6ヶ月までの完全母乳という現在の世界保健機関(WHO) の勧告と矛盾」という点に関しては、以前、WHOの提言に関してご紹介し、その提言はアレルギー予防に関して行われたわけではないことをご紹介しました。
WHO(世界保健機構)はアレルギー予防のために生後6ヶ月以降に離乳食開始を推奨しているわけではない
→ 第2回に続きます。
今日のまとめ!
✅鶏卵、ピーナッツアレルギー予防は、観察研究からはじまった。