離乳食早期導入と食物アレルギー予防(第2回/全4回)~介入研究とメタアナリシス~

Abrams EM, et al. Early Solid Food Introduction: Role in Food Allergy Prevention and Implications for Breastfeeding. J Pediatr 2017; 184:13-8.

 食物アレルギーの予防に関するレビューの2回目。

■ 体調を崩していて、(仕事はしていたけど)1年ぶりくらいにweekdayに連日でブログ更新を怠りました。ということで、年末ですが記事を更新したいと思います。

■ Journal of Pediatricsに発表された食物アレルギー予防の総論の2回目です。結構長いので分割していますが、それでも今回は結構長いです。原文は全文フリーで閲覧可能です。

■ 1回目は以下のブログカード(リンク)からどうぞ。図は再度最下部にUPします。

離乳食早期導入と食物アレルギー予防(第1回/全4回)~イントロダクション~

■ また、今回ご紹介する総論に出てくる報告のほとんどは、すでに本ブログでご紹介済みです。ブログカード(リンク)も提示します。適宜ご確認ください。

 

食物アレルギー予防研究の介入研究とメタアナリシス。

早期離乳食開始における介入研究

■ 観察研究では因果関係は示されている(第1回参照)が、早期離乳食開始が食物アレルギーの発症率低下と強く関連しているというエビデンスは、過去数年間にわたる重要なランダム化比較試験によってさらに支持されている

 

ピーナッツ早期開始における介入研究

■ 最も説得力あるエビデンスは、Learning Early About Peanut(LEAP)試験から生まれた。LEAP試験は、英国のハイリスク乳児640人(重篤な湿疹and/or卵アレルギーと定義)ををランダム化した。

LEAP試験は、ピーナッツの早期導入によるピーナッツアレルギーの発症が有意に減少することを示した除去群の17.2%と比較し、早期導入群では3.2%にピーナッツアレルギーを発症した(P <.001; absolute risk reduction 14; NNT 7.1)

■ LEAP研究では、参加者は皮膚検査をリスク分類の尺度として、ピーナッツ皮膚検査陰性群と皮膚検査陽性群の2群に分けて層別化した(皮膚プリック試験が5mm以上の児は既にアレルギーである可能性が高いと考えられ除外されている)。

■ 皮膚試験に関して予防効果は不均一であり、陰性結果の児でのNNTは8.5であり、軽度陽性結果の児でのNNTは4だった。

ピーナッツを早期に摂取開始したほうがピーナッツアレルギーが減少する(LEAPスタディ)

 

■ LEAP試験の終了後5〜6歳時に、両群において意図的にピーナッツ除去を調査した追跡調査(LEAP-ON)は、いずれの群においてもピーナッツアレルギーの有意な増加を示さず、早期摂取開始したピーナッツ耐性は一時的な現象ではないことが示された。

乳児期に早期導入して予防した食物耐性は、中断しても維持される(LEAP-ONスタディ)

 

ハイリスクでない一般集団での複数食物に対する、早期離乳食開始による介入研究

Enquiring About Tolerance(EAT)試験は、複数のアレルゲン性の高い食物に対して早期導入をランダム化した一般の乳児で調査された。

■ EAT試験では1303人の乳児を6種類のアレルゲン性の高い食物(すべての児に対してミルクを導入し、次に決められた導入を卵、小麦、ゴマ、ピーナッツ、魚に関しランダム化)を、早期導入(3か月)と標準群(6ヶ月)にランダム化し、1〜3歳時の食物アレルギーの有病率を調査した。

■ この研究では、ITT分析では群間のアレルギー発症率に有意差は見られなかったが、調整per protocol分析では早期導入群において、ピーナッツアレルギー発症率(0%vs 2.5%; P = 0.003; NNT、40)および卵アレルギー発症率(1.4%vs 5.5%; P = 0.009; NNT、26)が有意に低下した。

■ しかしながら、この研究はプロトコルの順守に重大な問題を有していた。早期導入群の42.8%しか食物に対し順守しておらず、ドロップアウトのために、逆の因果関係の可能性や統計力が疑わしいという問題が浮上した。

生後6ヶ月より前からの早期離乳食開始は食物アレルギー予防となるかもしれない(EATスタディ)

 

卵早期開始による”成功した”介入研究

■ 今日まで、いくつかの試験が早期卵導入の影響を調査してきた。最も成功した結果は、日本における乳児のランダム化比較試験であり、圧倒的な成功のために早期に中断された

湿疹のある乳児121例をランダム化し、生後6ヵ月から加熱卵パウダー摂取群は 12ヶ月までの除去群と比較し、卵アレルギーの割合が有意に低く(8%対38%; P = .0001)2群間におけるほとんどの有害事象率に有意差が認められなかった

加熱卵を少量で早期開始すると、1歳時の卵アレルギーを予防できる(PETITスタディ): ランダム化比較試験

 

卵早期開始による”不成功だった”介入研究

他の早期卵開始試験では、卵アレルギーの発症リスクを低減する上で、有意な効果を示していない

Beating Egg Allergy(BEAT)試験では、アトピーの家族歴を有する319人の乳児において、生後4カ月から低温殺菌全卵パウダーを早期開始して生後8カ月までの継続は、プラセボ群と比較して、卵感作の発症リスクを有意に下げた(OR、0.46; P = .03)ものの、卵アレルギー発症リスク低下には有意差はみられなかった

■ 生後4ヶ月で卵白検査が陰性であったにもかかわらず、参加者の約10%が最初の卵負荷に反応したが、全体的には2群間に有害事象率に有意差は認めなかった。

生後4ヶ月からの卵早期摂取は卵白感作を減少させる (BEATスタディ): ランダム化比較試験

 

■ 中等症から重症の湿疹のある乳児86人に対するプラセボ対照試験であるSolids Timing for Allergy Research(STAR)試験は、生後4ヵ月に対する低温殺菌卵パウダー群は、生後8ヵ月からの卵開始群と比較して、1歳時の卵アレルギー発症率の低下傾向と関連していた(P=33% vs 51%; p=0.11)ことを示したが、生後4ヵ月時の早期開始群にランダム化され卵感作された小児群でのアレルギー反応率が有意に高い(31%)ことが注目され、本研究の中断を促した

卵の早期開始は予防に効果がある可能性があるが、危険性も伴う(STARスタディ)

 

Starting Time of Egg Protein(STEP)試験において、アトピーの家族歴を有する湿疹のない820人の乳児に対し、生後4-6.5ヵ月群 vs 生後10ヵ月群からの低温殺菌生卵粉パウダーの早期導入は、卵アレルギー発症リスクの危険性を減少させなかった(7.0% vs 10.3%、絶対リスク低下 0.75; P = .20)が、早期開始群での卵感作は有意に低下していた。

 生卵早期開始は卵アレルギーを予防しない(STEPスタディ) 2017年5月24日

 

Hen's Egg Allergy Prevention(HEAP)試験のデータは、潜在的に最も懸念されている。HEAP試験は、一般乳児406名において、生後4-6ヶ月からの低温殺菌生卵パウダーの早期開始は、プラセボと比較して、卵アレルギーまたは卵の感作の発症率に有意差を認めていない。しかし、試験開始時に卵感作のある23人はランダム化から除外されたものの、別途に卵負荷を行った17人中11人は、開始初期にアナフィラキシーを経験し、低温殺菌生卵パウダーの早期開始の安全性に疑問が呈された

卵早期摂取は、卵アレルギー予防に効果がない (HEAPスタディ): ランダム化比較試験

 

離乳食早期開始と食物アレルギー予防に対するメタアナリシス

■ アレルギー疾患の発症時期とアレルギー疾患の発症リスクを調査した最近のメタ解析(5件の試験、1915例)は中程度の確実性を示しており、生後4-6ヶ月からの卵導入は卵アレルギー(相対リスク 0.56; P = .009)を減らすとした。

■ その後の一連の研究の分析を通じ、著者は、介入の確実性において、30%効果に達するためにさらに多くの追加的な参加者が必要である点に注目した。

■ 同様に、このメタアナリシスでは、2試験(1550例)に基づき、生後4〜11ヵ月におけるピーナッツ開始によりピーナッツアレルギーのリスクが減少する(相対リスクは0.29、P = .009)という中等度のエビデンスがあるとした。しかし、さらなる検討は、これらの試験の参加者数が不十分なために実施されなかった。

 

現在進行中の介入研究

■ 早期離乳食開始と食物アレルギーの発症との関係を探るためのさらなる試験が進行中である。

Preventing Atopic Dermatitis and Allergies in Children (PEAAD)試験(ClinicalTrials.gov ID NCT02449850)は、2種類の介入(生後4ヵ月から保湿剤の定期使用し、4種類のアレルゲン性の高い食物、卵・乳・小麦・ピーナッツの早期導入)における、約2500人のヨーロッパにおける人口ベースのプロスペクティブ分娩非盲検ランダム化コホート試験である。乳児は、観察群、早期アレルゲン開始群、スキンケア群、早期開始+スキンケア群に無作為化されている。

■ プライマリアウトカムは、アトピー性皮膚炎の発症と、1種類の介入されたアレルゲンに対する食物アレルギーである。この研究は成人期まで続けられることが予想される。

Preventing Peanut Allergy in Atopic Dermatitis(PreventADALL)試験では、湿疹のリスクの大きい乳児において、ピーナッツ導入時の年齢とピーナッツアレルギーのリスクを調査している。

■ 生後5〜30ヶ月で登録され、1歳時のピーナッツアレルギーの発症をプライマリアウトカムとして、乳児に対する医療提供者はピーナッツ摂取または1歳までのピーナッツ除去を選択する。

 

介入研究のまとめ

■ 要約すると、離乳食の早期開始が食物アレルギーを予防する可能性があるというエビデンスが蓄積している。

卵の開始初期に関するデータは混在しており、生卵と加熱卵の開始に依存している可能性があるものの、このエビデンスは牛乳、卵、ピーナッツの観察研究、ハイリスク乳児に対するピーナッツや卵のランダム化比較試験によって裏付けられている

■ リスクが標準である乳児に対する複数の食物の早期開始における大規模ランダム化比較試験では、生後3ヶ月群もしくは6ヶ月群に対し、おそらく低い順守率のためアレルギー罹患率に差は認められなかった。そして、per protocol解析では、ピーナッツと卵の両方に小さな予防効果が認められた、

■ 最悪の場合、これらの知見は、そのようなアプローチの非劣性を強く示唆しており、せいぜい、リスクが標準である児に対しては小さな保護効果しかないことを指摘している。

■ 早期のアレルゲン性の高い食物導入のメリットは、最近の大規模なメタアナリシスによってさらに支持されている。

■ 早期離乳食開始と食物アレルギー予防との関係をより深く理解するためにはより多くの研究が必要であるが、これが食物アレルギーの増加に対抗するための効果的な戦略であることを示唆している。

 

論文から引用し、管理人が翻訳(1回目の再掲)。

 

結局、何がわかった?

 ✅LEAP試験に始まった早期離乳食開始が食物アレルギー予防するというエビデンスは蓄積されている。

 ✅ただし、卵早期介入に関するデータは混在しており、生卵と加熱卵の開始に依存している可能性がある。

 ✅早期離乳食開始において、ハイリスク群(湿疹をすでに発症している)場合には効果がある可能性が高いようだが、ハイリスクでない群に関しては、まだ明らかではない。

 

 

食物アレルギー予防に対する、さまざまな早期離乳食開始。

■ このレビューにおけるほとんどの報告は、すでに本ブログでご紹介してきました。それらがきれいにまとまっています。

■ 卵の予防に関しては、すでに「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」が小児アレルギー学会から発表されています。

「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」に関して考えたこと。

 

※ 2018/3/11段階で第2回までの更新で止まっています。後日再開するつもり、、です。

 

 

今日のまとめ!

 ✅食物アレルギー予防に関する、早期離乳食開始は、ハイリスクの乳児に関してはある程度確定してきている。ただし、開始時のリスクもあり十分な注意は必要である。

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