妊娠前/中のサプリメントは必要か?
■ 現状では、妊娠中のサプリメントに関し、葉酸は推奨されているもののそれ以外のサプリメントは特別勧められているわけではありません。
■ 一般的には葉酸は、二分脊椎症などの神経管閉鎖障害の発症リスクを減らすからとされていますが、今回は自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder ; ASD)のリスクを減らすかもしれないという報告です。
Levine SZ, et al. Association of Maternal Use of Folic Acid and Multivitamin Supplements in the Periods Before and During Pregnancy With the Risk of Autism Spectrum Disorder in Offspring. JAMA Psychiatry 2018. [Epub ahead of print]
45300人のイスラエルの小児における自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症リスクを、症例対照コホート研究により追跡調査した。
重要性
■ 妊娠前および妊娠中における母の葉酸やマルチビタミンサプリメントの使用と、子どもの自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder ; ASD)のリスクに関連があるかどうかは明らかになっていない。
目的
■ 妊娠前および妊娠中に母が葉酸およびマルチビタミンサプリメントを使用することと、子どものASDの発症リスクとの関連性を調査する。
デザイン、セッティング、参加者
■ 2003年1月1日から2007年12月31日までに出生した45300人のイスラエルの小児におけるASDのリスクを、症例対照コホート研究により出生から2015年1月26日まで追跡調査した。
■ 症例はすべてASDと診断された小児であり、対照はすべての小児のうち33%のランダムに選択した例だった。
曝露
■ 母親が妊娠前および妊娠期間に内服するビタミンサプリメントは、葉酸(ビタミンB9)、マルチビタミンサプリメント(ビタミンA、B、C、D)、およびこれらの任意の組合せとした。
主な結果と測定
■ 母親のビタミン内服と子どものASDのリスクの関連性は、交絡因子に対して調整されたCox比例ハザード回帰モデルによって相対リスク(RR)および95%CIを定量化した。
■ さらに、感度分析により結果の堅牢性を調べた。
結果
■ 本研究に参加した小児45300人(女児22090人、男児23210人; 追跡調査終了時の平均年齢[SD]は10.0 [1.4]歳)、572人(1.3%)がASDの診断を受けた。
■ 葉酸および/または妊娠前のマルチビタミンサプリメントへの母親の内服は、妊娠前の内服なしと比較し、子どものASD発症の可能性と統計的に有意に関連した(RR、0.39; 95%CI、0.30-0.50; P <.001)。
■ 葉酸および/または妊娠中のマルチビタミンサプリメントへの母親の内服は、妊娠中の内服なしと比較し、子どものASD発症の可能性と統計的に有意に関連した(RR 0.27; 95%CI 0.22-0.33; P <.001)。
■ 子どものASD発症リスクに関し、妊娠前の母親の葉酸内服(RR 0.56; 95%CI、0.42-0.74; P = .001)、妊娠中の母の葉酸内服(RR,0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P <. 001)、妊娠前の母のマルチビタミンサプリメント内服(RR, 0.36; 95% CI, 0.24-0.52; P <. 001),、妊娠中のマルチビタミンサプリメント内服 (RR 0.35; 95% CI, 0.28-0.44; P <. 001)と、それぞれ見積もられた。
■ 結果は、感度分析において、概して統計的に有意であった。
結論と妥当性
■ 妊娠前および妊娠中における母の葉酸およびマルチビタミンサプリメント内服は、内服していない母親と比較し、子どものASDの発症リスクの低下と関連している。
結局、何がわかった?
✅妊娠前、妊娠中に母が葉酸もしくはマルチビタミンサプリメントを内服すると、子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症リスクが低下した。
妊娠前/中の葉酸は推奨。マルチビタミンに感して明らかにするには介入研究が必要だが、内服推奨しても良いかもしれない。
■ あくまでコホート研究からの結果ですので、この関連を明らかにするためには介入研究を要します。
■ ただ、少なくとも葉酸摂取はサプリメントで内服することが勧められていますし、マルチビタミンも内服しすぎなければ、問題は少ないでしょう。過量内服でなければ内服を推奨しても問題はないと思います。
今日のまとめ!
✅妊娠前/中に葉酸もしくはマルチビタミンサプリメントを内服したほうが、子どもの自閉症スペクトラム障害の発症リスクを減らすかもしれない。