Snast I, et al. Are Biologics Efficacious in Atopic Dermatitis? A Systematic Review and Meta-Analysis. American journal of clinical dermatology 2017:1-21.
アトピー性皮膚炎にも、生物学的製剤の波が訪れようとしています。
■ 以前、気管支喘息に対する生物学的製剤に関してご紹介しました。
■ アトピー性皮膚炎に関しても、近日中にデュピルマブ(商品名;デュピクセント)が上梓される予定であり、アレルギー疾患にパラダイムシフトが訪れる可能性があります。
■ そこで、最近のアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤の効果を検討したシステマティックレビューをご紹介いたします。ただし、当面小児適応はないことに注意。
9種類の生物製剤を評価した13のランダム化比較試験、10の観察試験を調査し、効果や副作用を検討した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)に対する現在の全身的治療は有効性が限られており、安全性の懸念によりしばしば制限される。
■ しかし、生物学的製剤は、AD治療法の改善という現在満たされていないニーズに対処できる可能性がある。
目的
■ この研究の目的は、ADにおける生物学的薬剤の有効性および安全性を評価することだった。
方法
■ 生物学的製剤で治療したAD患者を評価する研究に関し、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。
■ プライマリアウトカムは、試験開始からのEczema Area and Severity Index (EASI)-75 の反応であり、セカンダリアウトカムは、試験開始からのSCOring Atopic Dermatitis (SCORAD)-75、EASI-50、SCORAD-50, Investigator Global Assessment 0/1 の反応と変化、および有害事象だった。
結果
■ 我々は、9種類の生物製剤を評価した13のランダム化比較試験(RCT)、10の観察試験を調査した。
■ デュピルマブ、ネモリズマブ、ウステキヌマブについては、高品質のエビデンスが利用可能だった。
■ プールされた5つの試験から、毎週から隔週ごとのデュピルマブ300mgの使用が、プラセボより12-16週時点でのEASI-75を55%を達成したことが示された(相対リスク[RR] 3.3, 95%信頼区間 [CI] 2.9~3.6])。
■ ネモリズマブはプラセボと比較してEASI-75反応は同程度だったが、掻痒を有意に改善した。
■ レブリキズマブは、プラセボと比較してEASI-50反応が優れており(RR 1.3,95%CI 1.04-1.7)、トラロキヌマブは、プラセボと比較してSCORAD-50反応に優れていた(RR 1.7,95%CI 0.97-3.1) 。
■ 2件のランダム化比較試験では、オマリズマブとウステキヌマブはプラセボと同等であったが、抗TSLP受容体、インフリキシマブ、リツキシマブは有効性に対する十分なエビデンスがなかった。
■ 全ての薬物は、プラセボと同等の安全性プロファイルだった。
制限事項
■ ランダム化比較試験の不足と多様な転帰尺度の使用は、結論を制限している。
結論
■ デュピルマブは現在、ADに対する有効性における強いエビデンスを有する唯一の生物学的製剤である。
■ ネモリズマブ、レブリキズマブ、トロロキヌマブは有望であるが、さらなる検討が必要である。
■ より長期間の追跡調査およびより大規模な研究により、その安全性プロファイルが確立されることになるだろう。
結局、何がわかった?
✅9種類の生物製剤が評価され、デュピルマブは12~16週でEASI-75を55%達成した(相対リスク[RR] 3.3, 95%信頼区間 [CI] 2.9~3.6])
✅ネモリズマブは掻痒を有意に改善し、レブリキズマブはEASI-50(RR 1.3,95%CI 1.04-1.7)、トラロキヌマブ、SCORAD-50(RR 1.7,95%CI 0.97-3.1)を有意に改善した。
アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤のうち、デュピルマブ(デュピクセント)が先行している。
■ まだ現状では、小児アトピー性皮膚炎に生物学的製剤は使用できませんし、とても高価な薬剤ですので、どこまで使用を拡大するのかの検討や基準は必要でしょう。
■ 今のところ、デュピルマブが先行していますが、ネモリズマブもランダム化比較試験で有効性が報告されています。
今日のまとめ!
✅アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤のうち、デュピルマブが先行して効果が報告され、保険適応間近になっている。