海外基準の軽症喘息でも、吸入ステロイド薬は使用すべきかもしれない

Reddel HK, et al. Should recommendations about starting inhaled corticosteroid treatment for mild asthma be based on symptom frequency: a post-hoc efficacy analysis of the START study. Lancet 2017; 389(10065): 157-66.

吸入ステロイド薬は、軽症から導入しても有効か?

本邦での小児の喘息ガイドラインは、海外のガイドラインより早めにステロイド吸入薬を導入します(逆に投与量は少ない)。

■ 今回は、吸入ステロイド薬を発作頻度が少ないうちから導入しても、重症喘息発作を減らすかどうかを検討した、Lancetからの報告です。

 

軽症喘息で吸入ステロイド薬を使用していない患者(4〜66歳)を、吸入ステロイド薬群またはプラセボ群にランダム化し、重症喘息関連イベントまでの期間を比較した。

背景

■ 低用量の吸入ステロイド(inhaled corticosteroids; ICS)は、喘息増悪や死亡率の低減に非常に有効である。

■ 従来は、1週間に2日以上の症状がある患者に対しICS治療が推奨されてきたが、この基準にはほとんどエビデンスがない。

■ そこで、喘息症状頻度により試験開始時に決められたサブグループにおける重症喘息増悪、肺機能、喘息症状コントロールについて、ブデソニド vs プラセボの反応性が異なるかどうかを確認することで、ICS開始前の症状によるカットオフの妥当性を評価することを目的とした。

 

方法

■ 32カ国で実施され、3年間、3ヵ月ごとに診察を受けたinhaled Steroid Treatment As Regular Therapy(START)のpost-hoc解析を実施した。

過去2年間に診断された軽症喘息患者で、これまで定期的な吸入ステロイド薬を使用していない患者(4〜66歳)は、吸入ブデソニド1日1回400μg(11歳未満200μg未満)またはプラセボ1日1回にランダム化された。

■ この解析結果は、初めての重症喘息関連イベント(severe asthma-related event; SARE;入院、緊急治療、死亡)までの期間と、気管支拡張薬治療後の肺機能のベースラインからの変化を比較したものだった。

■ 試験開始時の症状頻度との相互作用を調べ、1週間に2回以上の症状日および1週間に2日以下の症状日(症状なし~1日/1日~2日に層別化)に分類された。

■ 分析はintention to treat解析で実施された。

 

結果

7138人の参加者(ブデソニド 3577人、プラセボ 3561人)の試験開始時の症状頻度は、1週間に0-1日が2184人(31%)、1週間に2日以下が1914人は、1週間に2日以上が3040人(43%)だった。

■ ブデソニド群はプラセボと比較して、最初の重症喘息関連イベント(SARE)までの期間は、症状頻度サブグループ群それぞれで、より長かった(週0-1症状日がハザード比0.54 [95%CI 0.34-0.86]、週1~2日で0.60 [0.39- 0.93]、>週2日で0.57 [0.41-0.79]、pinteraction = 0.94)

■ また、気管支拡張後の肺機能の低下は、3年間の経過観察時では少なかった(pinteraction = 0・32)。

■ ブデソニドとプラセボの比較では、経口または全身性ステロイドを必要とする重症喘息増悪が軽減された(rate ratio 0-1症状の日/週 0.48 [0.38-0.61] 、>週1回~2回の徴候日数 0.56〔0.44-0.71〕、>週2回の症状日 0.66 [0.55-0.80]、pinteraction = 0.11)

気管支拡張薬前の肺機能はより高く、症状のない日数はより多く(3つのサブグループ全てにおいてp <0.0001)、症状頻度による相互作用は認められなかった(前気管支拡張剤のpinteraction= 0,43; 無症状日のpinteraction = 0.53)。

■ 参加者が、ガイドライン基準、いわゆる持続性vs間欠喘息によって分類された場合にも同様の結果が認められた。

 

解釈

発症から間もない軽症喘息では、1日1回低用量のブデソニドはSAREリスクを低下させ、肺機能の低下を軽減し、すべての症状サブグループにわたって症状コントロールを改善する。

■ この結果は、週2日以上の症状を呈する患者に対して吸入ステロイド薬を制限することを支持せず、軽症喘息に対する治療推奨は、リスク低下と症状の両方を考慮する必要があることを示唆している。

 

結局、何がわかった?

 ✅軽症喘息に対し吸入ブデソニド400μg/日(11歳未満200µg)を導入すると、最初の重症喘息関連イベント(SARE)までの期間は、長くなった(週0-1症状日群でハザード比0.54 [95%CI 0.34-0.86]、週1~2日群で0.60 [0.39- 0.93]、>週2日群で0.57 [0.41-0.79])。

 ✅吸入ブデソニド群では、気管支拡張薬前の肺機能はより高く、症状のない日数はより多くなった。

 

 

吸入ステロイド薬の導入時期を考えるに重要な研究と考えられます。

■ 本邦での吸入ステロイド薬の投与量は海外より少なく早期に導入するため、「週に2日以上の症状がある患者」という基準自体に違和感がでてきます。

■ 週に1回どころか、月に1回以上の発作でも子どもの生活の質は大きく下がります。本邦のガイドラインが先見の明があったといえるのかもしれません。

■ ただ一方で、漫然とした吸入ステロイド薬の使用が勧められるわけでもありません。

 

 

今日のまとめ!

 ✅海外基準の軽症喘息に対し吸入ステロイド薬を導入すると、重症喘息発作を減らし、全身性ステロイド薬の使用リスクも減らす。

 

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