ロタウイルスによる脳症/脳炎は、年間どれくらい発生しているのか?

ロタウイルスは、稀に重篤な脳症/脳炎を発症する。本邦で実施されたその頻度の結果。

■ ロタウイルス胃腸炎は、基本的には下痢・嘔吐を主体とする症状ですが、稀に重篤な中枢神経系合併症を起こします。

■ もちろん胃腸炎関連けいれんとは、また異なる病態です。

 

 

Kawamura Y, et al. Nationwide survey of rotavirus-associated encephalopathy and sudden unexpected death in Japan. Brain and Development 2014; 36(7): 601-7.

全国の病院に送付されたアンケート963件 (返送率70.5%)を検討し、2年間のロタウイルスによる脳症/脳炎症例を検討した。

背景

■ ロタウイルスは、脳症/脳炎や突然の予期せぬ死亡などの重篤な合併症を引き起こす可能性がある。

■ しかし、ロタウイルス関連脳症/脳炎・突然死の予期せぬ突然の死亡に関しては、未知のままである。

■ そこで、ロタウイルス関連脳炎/脳症や突然の死亡のの臨床的特徴を明らかにするため、全国調査を実施した。

 

方法

■ 2009年~2011年に、脳症/脳炎および突然の予期せぬ死亡を含む、重症ロタウイルス感染症の症例数および臨床的特徴を確認するために、2部構成のアンケートを作成した。

 

結果

■ 病院に送付されたアンケート1365件のうち963件(70.5%)が返送され、分析の対象となった。

■ 結果として、ロタウイルス関連脳症/脳炎58例と突然の予期せぬ死亡例7例を特定した。

■ これらの患者は、イムノクロマトグラフィーによりロタウイルス感染と診断された。

脳症/脳炎患者58人中36人(62.1%)には後遺症がなかったが、58人中15人(25.9%)は神経学的後遺症を残し、58人中7人(12.1%)は致死的な転帰をとった。

■ 髄液細胞増多は40人中9人(22.5%)、脳脊髄液タンパク上昇は40人中4人(10%)のみで観察された。

高乳酸デヒドロゲナーゼ( lactate dehydrogenase ; LDH)(> 500IU / L)またはアシデミア(pH <7.15)は予後不良と関連していた。

論文から引用。LDHとpHが、予後の予測因子として優れている。

 

結論

■ 日本では、ロタウイルス関連脳症/脳炎および突然の予期せぬ死亡例が、それぞれ年間44.0例および4.9例であったと推定された。

LDH(> 500 IU / L)またはアシデミア(pH <7.15)は、脳炎/脳症の予後不良と関連していた。

 

結局、何がわかった?

 ✅本邦でのロタウイルス関連脳症/脳炎および突然の予期せぬ死亡例が、それぞれ年間44.0例および4.9例と推定された。

 ✅LDH(> 500 IU / L)またはアシデミア(pH <7.15)は、脳症/脳炎の予後不良因子と推定された。

 

 

ロタウイルス脳症/脳炎は稀な病態ですが、頭にとどめておく病態でもあります。

■ 予後不良因子も紹介されていましたので、頭にとどめておいて損はなさそうです。

■ ロタウイルス胃腸炎そのものを過剰に恐れてもいけませんが、胃腸炎関連けいれんもロタウイルスワクチンでリスクを減らせるとの報告もありますし、是非、ワクチンを考慮しておきたいところです。

 

今日のまとめ!

 ✅本邦でのロタウイルス関連脳炎/脳症および突然の予期せぬ死亡は、それぞれ年間44.0例および4.9例と推定された。

 ✅LDHとアシデミアが、予後不良因子といえそうだ。

 

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう