皮膚の炎症が強くなると、フィラグリン変異を介してさらに皮膚バリアが低下する

フィラグリンとは、皮膚のバリア機能に関連する蛋白質です。

■ フィラグリンは皮膚バリア機能に関連する蛋白で、遺伝子異常があるとアトピー性皮膚炎の発症リスクになることが示されています。

■ 遺伝子異常があるという話になるとどうしようもないと考えがちですが、「湿疹そのもの」で、フィラグリンの発現が低下することもまた、示されています。

 

Howell MD, et al. Cytokine modulation of atopic dermatitis filaggrin skin expression. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2009; 124(3): R7-R12.

フィラグリン機能突然変異を69人でスクリーニングし、アトピー性皮膚炎の湿疹部位でのフィラグリン発現を調査した。

背景

■ アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis; AD)は、不完全な皮膚バリア機能を特徴とする慢性炎症性皮膚疾患である。

■ 最近の研究では、AD患者の一部において、フィラグリンをコードする皮膚バリア遺伝子の変異が報告されている。

 

目的

■ 既報のフィラグリン変異キャリアではないアトピー性皮膚炎患者にフィラグリン発現の減少があり、フィラグリン発現がアトピー性炎症により調節されるかどうかを調査した。

 

方法

■ フィラグリン発現は、リアルタイムRT-PCRおよび免疫組織化学を用いて皮膚生検や培養ケラチノサイトにより測定した。

フィラグリン機能突然変異は計69人でスクリーニングされた。

 

結果

フィラグリン発現は、正常皮膚と比較してアトピー性皮膚炎急性病変において有意に減少し(P <.05)、2282del4突然変異に関して異型接合であった3人のヨーロッパ人アメリカ人被験者からの急性病変においてさらなる減少が見られた。

AD皮膚におけるフィラグリン染色の減少。

A:   正常被験者(n = 11)、AD患者(n = 12)、2282del4突然変異のあるAD患者(n = 3)、扁平苔癬(n = 6)の、フィラグリンを染色された代表的なパラフィン包埋皮膚生検像。  

 倍率40×、スケールバーは50μm。

B: 染色の強度を、0(染色なし)~5(最も強い染色)スケールで視覚的に等級分けした。

* P <.05; ** P <.01; *** P <.001。

■ これは、免疫組織化学を用いて確認され、IL-4およびIL-13の過剰発現を特徴とした。

■ IL-4およびIL-13の存在下で分化したケラチノサイトは、培地単独(0.16±0.03 0.04±0.01ngフィラグリン/ ng・glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)と比較してフィラグリン遺伝子発現が有意に減少した(0.04±0.01ng; P <0.05)。

図3。

 Th2サイトカインはフィラグリン遺伝子発現をダウンレギュレーションする。

 

結論

アトピー性皮膚炎患者は、炎症反応によって調節され得るフィラグリン発現の後天性の低下がある

 

臨床的意義

■ アトピー性免疫反応は、アトピー性皮膚炎の皮膚バリア障害に寄与する。

■ したがって、IL-4およびIL-13の無効化することは、皮膚バリアの完全性を改善する可能性がある。

 

結局、何がわかった?

 ✅アトピー性皮膚炎の急性病変部位では、フィラグリン発現が正常皮膚と比較して有意に減少しており(P <.05)、IL-4やIL-13が過剰発現していた。

 

アトピー性皮膚炎自体が、フィラグリンの発現を低下させる。

■ 遺伝だから、アトピーはしょうがない、ではなく、アトピー性皮膚炎の症状があると、さらにバリア機能が低下するといえそうです。

IL-4やIL-13の機能を抑えるデュピルマブ(デュピクセント)が、皮膚バリアの改善にも役立つ可能性がある根拠にもなりそうです

 

 

今日のまとめ!

 ✅アトピー性皮膚炎病変部位では、皮膚バリアに関連する蛋白であるフィラグリンが低下している。

 

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