Vredegoor DW, et al. Can f 1 levels in hair and homes of different dog breeds: lack of evidence to describe any dog breed as hypoallergenic. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2012; 130(4): 904-9. e7.
「低アレルゲン性犬種」というのはあるのか?
■ 外来で、「ブリーダーさんに”この犬種ならアレルゲン性が低いので飼えますよ”といわれました。そのイヌなら飼っていいですか?」と聞かれることがあります。
■ そこで、この質問を受けたときに、以前調べて行き当たった報告をご紹介いたします。
床や空気中のCan f1(イヌの主要抗原)量を測定し、各種の犬種で差があるかを検討した。
背景
■ 特定の犬種は、イヌアレルギーのある患者に対してより許容されるという散発的な報告に基づき「低アレルギー性」であるとされ、市販されている。
目的
■ この観察研究は、毛および皮せつ試料中と、さまざまな低アレルゲン性とされている犬種(Labradoodle、Poodle、Spanish Waterdog、 Airedale terrier)・低アレルゲン性でないとされる犬種(Labrador retriever と対照群)のいる家庭環境において、Can f1(イヌの主要アレルゲン[Canis familiaris])量を比較した。
方法
■ 毛および皮せつ試料はイヌから取得し、床や空気中のハウスダスト試料はイヌのいる家庭から採取した。
■ ELISAを用いてCan f1濃度を測定し、複数の線形回帰分析を用いて結果を分析した。
結果
■ Can f 1濃度は、低アレルゲン性とされるイヌの毛および皮せつ試料(n = 196、幾何平均[ geometric mean;GM] 2.26μg/ g;幾何標準偏差[geometric standard deviation; GSD] 0.73および GM 27.04μg/ g;GSD 0.57)より、低アレルゲン性でないとされる犬種 (n = 160, GM 0.77 μg/g:GSD 0.71および GM, 12.98 μg/g,;GSD, 0.76)よりも有意に高かった。
■ 品種間の差異は、品種内の差異に比べて小さかった。
■ 床のハウスダスト試料中のCan f 1レベルはLabradoodlesの方が低かったが、他のグループ間で差は見られなかった。
■ 品種間で空気中のアレルゲン量に差は見られなかった。
結論
■ いわゆる低アレルギー性の犬種は、対照犬種よりも毛および皮せつ試料中のCan f1量が高かった。
■ これらの違いは、イヌアレルゲンに対する環境曝露量を上げることにがつながらなかった。
■ ある種の犬種を「低アレルギー性」と分類するエビデンスはない。
結局、何がわかった?
✅イヌの主要抗原であるCan f 1濃度は、低アレルゲン性とされるイヌの毛および皮せつ試料より、低アレルゲン性でないとされる犬種よりも有意に高かった。
「低アレルゲン性の犬種」はないとお答えしています。
■ もちろん、ペットを飼いたいというお気持ちはわかるのですが、喘息やアトピー性皮膚炎で飼い始めるときには、悪化する可能性を十分考慮しなければなりません。
■ 特に、感作されている場合は、その後症状が明らかになるリスクが高いことがわかっています。
小児期のネコやイヌの感作は、将来のネコやイヌの症状発症を予測する
■ そして、さらに喘息発作のリスクも上げていくことになります。
イヌやネコアレルゲンにより、全米で毎年50万~100万件の喘息発作が起きている
■ 私が外来で「アレルギーは起こさない犬種があると行っていたのですが」というご質問を受けたときは、この研究結果をお話することにしています。納得される場合もあれば、すごくご立腹される場合もあります。難しい問題ですね。
■ Twitterでこの話題を出したとき、ペットショップの方から、「毛が少ない犬種はいるというお話をすることはあるが、アレルギーを起こさないというお話はしませんよ」と聞きました。実際にどういうお話をその保護者さんがお聞きしたのかはわかりませんが、良いふうに受け取られたのかもしれません。
今日のまとめ!
✅ある犬種を「低アレルギー性」と分類するエビデンスはないようだ。