O'reilly R, et al. Increased airway smooth muscle in preschool wheezers who have asthma at school age. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2013; 131:1024-32. e16.
気管支喘息は、未就学時からリモデリングが起こっているか?
気道のリモデリングって知っているかな?
気管支は慢性の炎症が続いているということだから、ひどい炎症が起きると上手く再構築できなくなって、硬く厚くなってしまうんだ。アトピー性皮膚炎の湿疹がひどいのが続くと、皮膚が硬く厚くなってしまうイメージに近いだろう。あの状況に近いね。
このリモデリングというのは1990年代からさかんに言われはじめて、2000年代には定着した感があるね。
アトピー性皮膚炎がひどくなって皮膚が硬く厚くなってしまうと、治療がとても難しくなってくるだろう?
同じように、喘息もとても治療が難しくなってきてしまうんだ。
だから、リモデリングがひどくならないうちに治療を開始したいというのが早期治療として大事な考え方になるんだね。
最近の小児に対するメタアナリシスでは、まだリモデリングに関しての意見は十分一致していないようなんだけど、今回は小児でも早期からリモデリングがおこっているかもという報告を紹介しよう。
未就学時の気管支生検結果と、学童期の喘息状態の関連を調査した。
背景
■ 気道平滑筋(airway smooth muscle; ASM)の肥厚は、確立された小児喘息の特徴であるが、就学前の喘鳴児におけるASMについては何も知られていない。
目的
■ 我々は、就学前喘鳴児における得られた気管支生検の標本におけるASM面積率と、就学時の喘息との関連性を調査した。
方法
■ 重症の再発性喘鳴(47人; 年齢中央値 26ヵ月)と、喘息のない対照(21人; 年齢中央値 15ヶ月)において、ASM面積、網状基底膜厚、粘膜好酸球、ASM肥満細胞値を、就学前から気管支鏡検査で事前に得られた生検標本から定量した。
■ 小児はフォローアップ調査を受け、6〜11歳で喘息状態を確認された。
■ 就学前の気管支病変を、学童期の喘息と関連させ調査した。
結果
■ 68人のうち42人(62%)がASMの評価可能な生検標本が1つ以上あった。
■ 学童期に、68人中51人がフォローアップ調査をうけ、就学前喘鳴児37人中15人(40%)が喘息に罹患していた。
■ 評価可能な生検標本があった喘息児は、喘息のない小児(24人;年齢中央値 7.3歳 [範囲5.9~11歳]; ASM中央値 0.07: 範囲0.02~0.23)と比較し、未就学時の気道平滑筋(ASM)の肥厚面積率(8人;年齢中央値 8.2歳 [範囲 6〜10.4歳]; ASM中央値 0.12 [範囲 0.08~0.16])がより肥厚していた(P = 0.007)。
■ しかし、就学前の網状基底膜厚および粘膜好酸球、ASM肥満細胞値は、就学時に喘息の有無で有意差がなかった。
結論
■ 就学前の気道平滑筋(ASM)肥厚は、就学時の喘息罹患と関連している。
■ したがって、ASMの早期変化に焦点を当てることは、その後の小児期喘息の発症を理解する上で重要となる可能性がある。
結局、何がわかった?
就学前に気管支生検を実施し、そのうえでその後、中の6~11歳での喘息状況を確認したところ、
✅喘息のない小児(24人;年齢中央値 7.3歳 [範囲5.9~11歳]; 気道平滑筋の肥厚面積の中央値 0.07)と比較し、喘息児の気道平滑筋の肥厚面積率がより多かった(8人;年齢中央値 8.2歳 [範囲 6〜10.4歳]; ASM中央値 0.12)(P = 0.007)。
喘息は、すでに未就学時点で気道平滑筋の肥厚を起こしてきており、その肥厚面積がその後の喘息の持続に影響しているかもしれない。
■ すこし難しめの論文かもしれませんが、結果はすっきりしているかと思います。
■ もちろん現実的には、未就学児に気道生検は簡単ではありませんので研究的な視点ではあり、実臨床にそのまま適応はむずかしいでしょう。
今日のまとめ!
✅未就学児から、喘息による気道平滑筋の肥厚(リモデリングの指標)は進行してきている可能性があり、喘息持続に関与しているようだ。