1歳未満でRSウイルスに罹ると、5歳までに喘息になりやすいかもしれない：INSPIRE研究

RSウイルス感染は、その後の『喘鳴』を悪化させる可能性がある。

■ RSウイルス感染症は、 1歳までに7割、2歳までにほぼすべての子どもが1回はかかるという、感染症の原因としてとても多いウイルスです。

■ しかし、『1歳未満でのRSウイルス感染』が、5歳までの喘息発症に関連する可能性があるかもしれないという報告が、Lancet誌に公開されました。

※RSウイルスにかかったからいけないという意味ではなく、今後、予防や疫学的データを増やす必要性のあるテーマです。

Rosas-Salazar C, Chirkova T, Gebretsadik T, et al. Respiratory syncytial virus infection during infancy and asthma during childhood in the USA (INSPIRE): a population-based, prospective birth cohort study. The Lancet.[epub ahead of print]

米国テネシー州中部の11の小児科診療所からリクルートされた児1946人のうち、生後1年間のRSウイルス感染を評価するデータを入手できた1741人（89％）を検討した。

背景

■ 早期の重症呼吸器合胞体ウイルス（respiratory syncytial virus; RSV）感染は、小児期の喘鳴疾患の発症と関連があるとされている。
■ しかし、乳幼児期のRSV感染と小児喘息の発症との関連は不明である。
■ そこで、乳幼児期のRSV感染と小児喘息との関連を評価することを目的とし検討した。

方法

■ INSPIREは、2012年6月から12月、または2013年6月から12月に正期産で生まれた非低出生体重児の健康な乳児を対象とした大規模な集団ベースの出生コホート研究である。
■ 乳児は、米国テネシー州中部の11の小児科診療所からリクルートされた。
■ 生後1年間のRSV感染状況（感染なし vs 感染あり）を、分子および血清学的手法によるウイルス同定を伴う受動的・能動的サーベイランスを併用して確認した。
■ その後、主要アウトカムである5年後の現在の喘息について、小児を前向きに追跡調査し、5年間の追跡調査を完了したすべての参加者を対象に分析した。
■ 統計モデルは、データが入手可能な子どもについて行い、小児の性別、人種、民族、母乳育児の有無、乳児期のデイケアへの参加、胎内もしくは乳児期早期の副流煙への暴露、母親の喘息で調整した。

結果

■ 本研究に登録された1946人の適格児のうち、1741人（89％）が生後1年間のRSV感染状態を評価するためのデータを入手できた。
■ 乳児期にRSVに感染していた小児の割合は、1741人中944人（54％；95％CI 52-57）だった。
■ 5歳時の現在の喘息のある児の割合に関し、乳児期にRSV感染していない児（587人中91人［16％］）は、乳児期にRSV感染した児（670人中139人［21％］、p＝0-016）より低かった。

■ 乳児期にRSVに感染していないことは、乳児期にRSVに感染するより、5歳児の現在の喘息のリスクが26％低いことと関連した（調整RR 0-74，95％CI 0.58-0.94，p=0.014）。

■ 乳児期のRSV感染を避けることで予防できる5歳時の現症の喘息の推定割合は、15％（95％CI 2.2-16.8）だった。

解釈

■ 正期産の健常児において、生後1年間にRSVに感染していないことは、小児喘息の発症リスクを有意に低減することと関連した。
■ 今回の結果は、乳児期のRSV感染と小児喘息に年齢依存的な関連があることを示している。
■ しかし、因果関係を明確にするためには、最初のRSV感染を予防、遅延、もしくは重症度を低下させる介入が小児喘息に及ぼす影響について研究する必要があるとおもわれる。

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