皮膚バリア低下は、アトピー性皮膚炎の発症・増悪の原因ですが、そのバリア機能を上げる物質の報告をご紹介します。
■ 皮膚バリアの低下がアトピー性皮膚炎の発症や増悪因子になることに関し、いくつかの研究結果をご紹介してきました。
■ また、フィラグリンという皮膚バリアに関連する蛋白質の異常が、アトピー性皮膚炎の発症・増悪因子にもなります。
■ 京都大学のグループが、フィラグリンの産生を補助する化合物を突き止めており、その初報告をご紹介します。
Otsuka A, et al. Possible new therapeutic strategy to regulate atopic dermatitis through upregulating filaggrin expression. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2014; 133:139-46. e10.
生物活性物質ライブラリーをスクリーニングして見出された化合物JTC801を、アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNC / Ngaマウスに経口投与した。
背景
■ フィラグリン(filaggrin; FLG)突然変異は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の原因に対する重要な遺伝的要因である。
目的
■ FLG発現をアップレギュレートする薬物候補を見つけ出し、FLG発現増加がAD発症をコントロールするかどうかを決定することは非常に重要である。
方法
■ 我々は、ヒトの不死化したケラチノサイト細胞株(human immortalized keratinocyte cell line; HaCaT)を用いてFLGのmRNAの発現を促進する候補を見つけるために、FLGリポーター分析を用いて生物活性物質ライブラリーをスクリーニングした。
■ さらに、ケラチノサイトに対する化合物の効果をヒトの皮膚モデルを用いて検討した。
■ そして、NC / NgaマウスにおけるAD様の皮膚炎症に対する化合物の効果を試験した。
結果
■ JTC801は、HaCaTや正常のヒト表皮ケラチノサイトの両方に対するFLG mRNAとタンパク質の発現を促進した。
論文から引用。JTC801は、ヒトの皮膚モデルでのmRNAの産生を増加させる。
■ 興味深いことに、JTC801は、ヒトの皮膚モデルにおいて、FLGのmRNAやタンパク質発現レベルを促進したものの、ケラチノサイト分化の他の産生物(ロリクリン、ケラチン10、トランスグルタミナーゼ1を含む)のmRNAレベルは促進しなかった。
■ さらに、JTC801の経口投与は、FLGのタンパク量を増加させ、NC / NgaマウスのAD様の皮膚炎症の発症を抑制した。
論文から引用。アトピー性皮膚炎モデルマウスにおいて、JTC801は皮膚炎発症を予防した。
結論
■ これは、ヒトおよびマウスケラチノサイトのFLG発現を増加させる化合物が、マウスのAD様の皮膚炎症の発症を改善させたという最初の報告である。
■ この知見は、FLG発現の調節がADにおける新規治療標的であり得るというエビデンスを提供する。
結局、何がわかった?
✅JTC801を、アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNC / Ngaマウスに経口投与すると、フィラグリンタンパク量を促進し、アトピー性皮膚炎様の皮膚炎症を抑制した。
アトピー性皮膚炎を「内服で」治す薬物の研究が進んでくるかもしれない。
■ アトピー性皮膚炎に対する内服薬でバリア機能を直接強化するというものはなく、有望な化合物と言えましょう。
■ もちろん、さらに治験にすすむにはハードルはたくさんあるだろうなあと思いますけれども、、大塚先生に期待します!
今日のまとめ!
✅マウスレベルではあるものの、皮膚バリアに関連したフィラグリン機能を増強させる化合物が見出され、効果が確認された。