フィラグリン遺伝子変異は、気候によってはアトピー性皮膚炎の素因にならない

皮膚バリア機能に関連するフィラグリン遺伝子変異はアトピー性皮膚炎の発症・増悪因子です。しかし、緯度が高い地域からの報告が多いです。

■ フィラグリンは皮膚バリア機能に関連するタンパク質で、その遺伝子異常はアトピー性皮膚炎の発症や増悪に関連します。

■ 一方で、気候もアトピー性皮膚炎の発症因子として指摘できます。

■ では温暖な地域では、フィラグリン遺伝子変異はアトピー性皮膚炎の発症リスクとなるでしょうか?

 

Sasaki T, et al. Filaggrin loss-of-function mutations are not a predisposing factor for atopic dermatitis in an Ishigaki Island under subtropical climate. J Dermatol Sci 2014; 76:10-5.

石垣島におけるコホート試験であるKIDSコホート試験に参加した小児721人に関しフィラグリン遺伝子異常を検索し、アトピー性皮膚炎との関連を検討した。

背景

フィラグリン(Filaggrin ; FLG)は、角質層(stratum corneum; SC)の主要なタンパク質成分であり、機能喪失型突然変異は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の素因となる因子である。

■ これらは、先行研究である北欧/西欧の児の以前のコホート研究で報告されている。

 

目的

■ FLG機能喪失突然変異キャリアにおけるADの有病率と気候条件との関連を明らかにするために、石垣島の小児コホートにおけるAD有病率とFLG機能喪失突然変異の頻度を測定した。

■ 石垣島は、年間を通して高湿度(月平均60.8-78.7%)と高温(月平均18.5-29.4℃)の亜熱帯気候である。

 

方法

■ 私たちは、Kyushu University Ishigaki Atopic Dermatitis Study(KIDS)コホートの721人に対しAD罹患率を診断し、日本人の集団におけるFLG機能喪失変異8種を解析した。

■ 両親は、2001年から2006年までの医療診察における突然変異の解析に同意した。

 

結果

■ アトピー性皮膚炎(AD)の有病率は年平均7.3%であり、2001年から2006年に少なくとも1回ADと診断されたのは計127人(17.6%)だった。

■ 血清総IgE抗体価の平均は、AD群と非AD群それぞれ199.0 aと69.0 IU/mlだった。

■ 日本におけるFLG突然変異に関する先行研究で単離された5種類のFLG機能喪失突然変異が同定されたが、KIDSコホートに参加した児のFLG機能喪失突然変異頻度は、AD群と非AD群で有意差はなかった(7.9 %と6.1%; P = 0.174)

 

結論

■ FLG機能喪失突然変異の頻度は、亜熱帯気候であるKIDSコホートにおけるAD群と非AD群で有意差はなく、FLG機能喪失変異は必ずしもAD有病率の疾病素因ではないことを示唆している。

 

結局、何がわかった?

 ✅亜熱帯気候である石垣島におけるKIDSコホートに参加した児721人において、FLG遺伝子変異の頻度は、アトピー性皮膚炎群と非アトピー性皮膚炎群で有意差はなかった(7.9 %と6.1%; P = 0.174)。

 

 

フィラグリン遺伝子変異は、アトピー性皮膚炎の発症や増悪因子としてしられているが、気候の影響で相殺されるとも言えるようだ。

■ フィラグリンは重要な皮膚バリア機能を司るタンパク質ですが、一方でアトピー性皮膚炎の発症は環境要因も重要になります。

■ この検討は、フィラグリン遺伝子変異があっても、温暖な気候であればその影響をキャンセルするかもしれないといえる結果です。

 

今日のまとめ!

 ✅皮膚バリア機能が低下する遺伝子変異があっても、温暖な気候によりその影響が低下するかもしれない。

 

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