
フィラグリン遺伝子異常は皮膚のバリア機能を下げ、アトピー性皮膚炎の発症・悪化に関連します。では、臍帯血の段階からその後のアトピー性皮膚炎の発症を予測できるでしょうか?
■ フィラグリン遺伝子異常に関してはアトピー性皮膚炎の素因として報告されています。
皮膚バリア機能低下をきたしやすい素因を持っていると食物アレルギーを発症しやすい: コホート研究
E: 臍帯血(umbilical cord blood; UCB)のFLG発現
C:
O: 1歳までの皮膚炎の発症に関連・発症を予測するか
結局、何を知りたい?
✅臍帯血中のフィラグリンということを知ろうとしている。
Ziyab AH, et al. Expression of the filaggrin gene in umbilical cord blood predicts eczema risk in infancy: A birth cohort study. Clin Exp Allergy 2017.[Epub ahead of print]
結果 ― 臍帯血中のフィラグリンはアトピー性皮膚炎の発症リスクになる?
■ 3、6、12ヵ月時に、皮膚炎の評価を受けた。皮膚炎は、HanifinとRajka基準に従い、特徴的な形態と分布で6ヶ月以上続く、慢性または慢性に再燃を繰り返す痒みのある皮膚炎と定義された。
■ 臍帯血(UCB)から抽出されたDNAから、ヨーロッパ人種で一般的な3種類のFLG null異型がgenotypedされた(R501X、S3247X、2282del4)。
■ 皮膚炎の有病率は、3、6、12ヵ月時でそれぞれ、10.2%、20.5%、16.3%だった。
■ FLG機能低下異型(R501X、2282del4、S3247X)のキャリアを合わせた率は、6.4%だった。
■ 強い相違評価をポアソン回帰を使用して関連が評価された。曲線下面積(AUC)は、適したモデルの区別的な/前兆となる性能を説明して、ロジスティック回帰から推定された。
■ プローブA_24_P51322で測定されたFLG発現増加は、1歳までの皮膚炎のリスクが低下した(RR=0.60、95%CI:0.38-0.95)。
■ 対照的に、プローブA_21_P0014075で測定したFLGアンチセンス・コピーは、皮膚炎のリスクを増した(RR=2.02、95%CI:1.10-3.72)。
■ FLG発現、FLG遺伝子の異型、性別を含む予測モデルにおいて、生後3ヵ月で皮膚炎を呈する、呈しない児の鑑別された(AUC:0.91、95%CI:0.84-0.98)。
結局、何がわかった?
✅英国のワイト島コホートにおいて、臍帯血のフィラグリン遺伝子変異は1歳までのアトピー性皮膚炎のリスクを予測し、フィラグリン遺伝子の発現・異型・性別による予測式が作られた。
コメント ― 臍帯血中のフィラグリン遺伝子異常は1歳までのアトピー性皮膚炎発症を予測するが、本邦で再現されるかどうかは不明
■ 本研究はUCBのFLG発現形式が乳児期の皮膚炎発症に関連していることを証明した初めての報告だそうです。そして乳児期のアトピー性皮膚炎発症の予測モデルを提供しました。
■ 皮膚炎の発症リスクが高い乳児を早めの鑑別出来る可能性があり、リスクの高い新生児を早期に層別化して介入できるメリットがあるかもしれないと述べられています。
■ フィラグリン遺伝子変異は、他の皮膚疾患にも関与する可能性も指摘されています。
フィラグリン遺伝子変異はアトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患にも関連するかもしれない
■ さらに、食物アレルギーにも関与する可能性もあります。
皮膚バリア機能低下をきたしやすい素因を持っていると食物アレルギーを発症しやすい: コホート研究
■ しかし、一方で、本邦で行われた石垣島コホートではフィラグリンとアトピー性皮膚炎の発症には差がないことが報告されており、本邦ではフィラグリンは必ずしもアトピー性皮膚炎の原因にはならないと思われます。
石垣島コホート:血清TARCはアトピー性皮膚炎以外のアレルギーにも関連する?
■ おそらく、フィラグリン遺伝子異常が影響するのは地域性もあるのではないかと私は考えており、環境因子が関係するのではと考えています。
■ 実際、「ダブルスイッチ」理論に関して、最近ご紹介しましたね。
今日のまとめ!
✅英国のワイト島コホートでは、臍帯血のフィラグリン遺伝子変異の検索はアトピー性皮膚炎発症予測に有用だった。しかし、本邦で同様の結果になるかどうかは不明である。