アトピー性皮膚炎を発症しやすい新生児を区別し、予防策を講じることが出来るか?

アトピー性皮膚炎を効果的に予防できないか?

アトピー性皮膚炎の発症を予測できるか?その発症する可能性があるお子さんを効果的に予防できないか?

■ 今年1本目の論文は、「非侵襲的(痛くない)検査を事前に行うことでアトピー性皮膚炎の発症を予測し、さらに効率的に予防できるか?」というテーマの報告です。

■ なお、論文中に出てくるTEWLは、皮膚バリア機能の評価で良く用いられる、センサーを使用した指標です。以前、TEWLに関してはご紹介しました。

TEWL(経皮水分蒸散量)を小児アレルギー専門医が解説してみた。

 

 

Horimukai K, et al. Transepidermal water loss measurement during infancy can predict the subsequent development of atopic dermatitis regardless of filaggrin mutations. Allergology International 2016; 65:103-8.

新生児期からの保湿剤定期塗布によるアトピー性皮膚炎予防研究に参加した116人の検討結果に関し、皮膚バリア機能に関し再検討を実施した。

背景

■ アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能障害によって特徴付けられる。

■ しかし、皮膚バリア機能を測定する非侵襲的な方法を用いて、症状のない新生児がアトピー性皮膚炎を発症をするかを予想する研究はほとんどない。

 

方法

■ 以前、我々が報告したランダム化対照照比較試験における116人の乳児のデータを解析した。

経表水分蒸散量(TEWL)、角質水分量(SCH)、pHにより皮膚バリア機能を測定し、アトピー性皮膚炎発症時期の関連性を評価した。

■ 参加者をTEWL・SCH・pHを高値群と低値群に層別化して評価し、アトピー性皮膚炎発症までの期間およびハザード比を推定、さらに32週間の卵白およびオボムコイドに対する感作を評価した。

 

結果

■ フィラグリン変異にかかわらず、生後1週間以内の前額部のTEWL(最適なカットオフ値 6.5g /m2/h)は、下腿外側TEWL、SCH、pH測定よりもp値が低値を示した(管理人注; 前額部TEWLがもっともアトピー性皮膚炎発症を予測した)。

■ 試験開始時、TEWL高値群・低値群で平均在胎週数を除いて群間に特徴に差はなく、TEWLは湿度の影響を受けていなかった。

前額部のTEWL高値群とTEWL低値群の累積アトピー性皮膚炎発症率に有意差が認められ(p <0.05)、 TEWL高値群ではTEWL低値群よりアトピー性皮膚炎発症率が高かった

論文から引用。TEWL高値群のほうがアトピー性皮膚炎発症率が高い。

 

■ さらに、TEWL高値群のみ、毎日保湿剤を使用することによりアトピー性皮膚炎発症率は有意に低下した。

論文から引用。Aは対照群(ワセリンを乾燥した部位のみに少量適宜塗布)、Bは毎日保湿剤塗布。A群ではTEWL高値群・低値群でアトピー性皮膚炎の発症に有意差あり。B群では有意差なし。保湿剤によりアトピー性皮膚炎発症が抑制されたと考えられる。

 

■ TEWL高値群は、(有意差は認めなかったものの)オボムコイド感作率がより高かった(p = 0.07)。

 

結論

生後1週間以内の前額部TEWLは、アトピー性皮膚炎発症に関連している。

 

結局、何がわかった?

 ✅生後1週間以内の皮膚バリア機能を示すTEWLが、特に前額部(おでこ)で高値である場合、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが高い。

 ✅ただし、TEWLが高くても、保湿剤の定期塗布でTEWLが低い群とアトピー性皮膚炎発症リスクは変わらなくなる。

 

 

 

アトピー性皮膚炎のお子さんがさらに減ることを期待したいです。

■ この論文は、以前報告した、「新生児期からの保湿剤によりアトピー性皮膚炎発症が予防できた」という論文のpost-hoc解析(後付け解析)による報告です。

新生児期からの保湿剤定期塗布はアトピー性皮膚炎を予防する: ランダム化比較試験

■ 有用な報告に関しては、よくこういった後付け解析による報告が行われますが、その手法と考えていただければよいでしょう。

■ TEWLがアトピー性皮膚炎や食物アレルギー発症を予測するという報告は、ほぼ同時期に海外からも報告されました。

新生児期の皮膚バリア機能(TEWL)は、アトピー性皮膚炎発症を予測する

■ しかし、今回の報告で重要なのは、「TEWLが高い(=バリア機能が低いことを示す)」場合でも、保湿剤により保護が出来る可能性がある」ということを示した報告にもなっていると思います。

■ さらに、各種のバリア機能を示唆する指標の中でTEWLが最も有用で、その予想できる測定部位も示したことも重要と思っています

■ ただし、もちろん、これで全てではありません。まだやらねばならないことが沢山あります多くの先生方が、現在、アトピー性皮膚炎のお子さんが減るために努力をつづけていらっしゃることも申し添えたいと思います

 

 

 

今日のまとめ!

 ✅前額部TEWL高値はアトピー性皮膚炎発症を予測するが、保湿剤塗布でキャンセルできるかもしれない。

 

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