以下、論文紹介と解説です。
Ahmadi N, et al. Intranasal corticosteroids do not affect intraocular pressure or lens opacity: a systematic review of controlled trials. Rhinology 2015; 53(4): 290-302.
点鼻ステロイド薬の眼圧上昇、水晶体混濁、緑内障、白内障発症率に関して検討した19研究に関し、システマティックレビューを実施した。
背景
■ 鼻腔内ステロイド薬(Intranasal corticosteroids; INCS)は、炎症性の上気道状態に対し長期予防治療のため処方される。
■ 局所経路を介した若干の全身吸収もあるが、臨床的意義については議論の余地がある。
■ 眼圧(intraocular pressure; IOP)および水晶体混濁(lens opacity; LO)に対する経口ステロイドの影響は十分に確立されているが、INCSの影響はあまり明確ではない。
■ 本研究の目的は、INCS使用による有害な潜在性のイベントのエビデンスについて文献を系統的にレビューすることだった。
方法
■ Medline、Embaseデータベース(1974年1月~2013年11月21日)からの文献に対し、システマティックレビューを行った。
■ PRISMAガイドラインを用いて、IOP、LO、緑内障、白内障発症率に関し測定値を報告している、INCSを用いた患者の全ての対照臨床試験を含めた。
■ 経口、吸入、静脈内ステロイドの補助的な投薬を行った試験は除外した。
結果
■ 665件が検索され、137件がフルテキストのレビューの対象とされた。
■ このうち116件(85%)が文献レビューであり、2件が症例報告だった。
■ 定性的レビューには19研究(RCT 10件、ケースコントロール1件、ケースシリーズ8件)が含まれ、そのうち18件がIOPに関するデータを報告し、10件が白内障やLOに関するデータを報告した。
■ 緑内障もしくはIOPに関するRCT10件のデータのいずれも(n=0)、対照と比較してIOPの変化を示さなかった。
■ また、白内障や水晶体混濁を報告したRCT6件のうち、対照と比較して変化を示したものはなかった(n=0)。
結論
■ バイアスの低い試験から得られたデータは、眼圧、緑内障、水晶体混濁、白内障のいずれに対してもINCSの臨床的意義のある影響を示さなかった。
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ステロイド点鼻薬の眼への影響は、大きな懸念は低いと思われるが頭の片隅にはおいて良いだろう。
■ さらに最近実施されたメタアナリシスでは、「点鼻ステロイド薬は、眼圧上昇や後嚢下白内障発症のリスクの有意な増加と関連していないが、緑内障は、臨床的有害事象として懸念される」という報告もあります(Laryngoscope 2019; 129:6-12.)。
■ そして、「ステロイドレスポンダー」の方は少ないながらいらっしゃいます。
■ 長期使用する場合には、おおむね問題はなさそうですが「一応念頭に入れておく」のは必要かもしれません。
今日のまとめ!
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