以下、論文紹介と解説です。

Sim DW, et al. No Difference in Allergenicity Among Small-Sized Dog Breeds Popular in Korea. Allergy, Asthma & Immunology Research 2020; 13.

8犬種(マルチーズ、プードル、シーズー、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、スピッツ、コッカースパニエル、ビションフリーゼ)52頭のイヌのアレルゲン量を比較した。

背景

■ 韓国を含め、世界的にペットの飼育が増加しており、家庭でのペットとしては犬が最も一般的である。

■ このようなペット飼育の増加により、韓国では過去10年間でイヌアレルゲン感作率とアレルギー疾患の発生率が上昇している。

■ 低アレルゲン性ペットは儲かるビジネスだが、低アレルゲン犬種については、いまだに議論の余地がある。

■ 韓国では、大多数のペットが室内で飼われているため、小型犬種の人気が高い。

■ そこで、韓国におけるさまざまな犬種の普及度を評価し、韓国で人気のある小型犬種の毛の抽出物におけるアレルゲンの違いを調査した。

 

方法

■ 韓国における犬種の所有状況を調べるために、動植物検疫庁のデータベースの記録を評価した。

韓国で人気のある8犬種を代表する52頭の健康な純血犬(マルチーズ[n = 8]、プードル[n = 7]、シーズー[n = 5]、ヨークシャーテリア[n = 9]、ポメラニアン[n = 5]、スピッツ[n = 7]、コッカースパニエル[n = 5]、ビションフリーゼ[n = 6])の毛から、アレルゲン抽出液を調製した。

■ 毛のサンプルは、ペット病院において、一人の獣医師が動物の背または脇腹から採取した。

■ アレルゲンを抽出するために、サンプルをエチルエーテルで脱脂、超音波で抽出し、分子量3.5kDaのカットオフ膜を用いて透析し、ろ過し、凍結乾燥した。

■ 最も強い犬アレルゲンである唾液中のリポカリン「Can f1」の濃度を測定したところ、犬の毛にも含まれていた。

■ 免疫グロブリンE(IgE)免疫ブロット法により、犬アレルゲンに感作された患者の血清中のIgEに反応するアレルゲン抽出物中の成分を調べた。

■ 犬種間や各種因子の差異は、それぞれKruskal-Wallis検定とMann-Whitney検定を用いて解析した。

■ P < 0.05を統計的に有意とした。

 

結果

■ 韓国における犬の飼育は、2008年から2014年にかけて218倍に増加した。

■ 最も人気のある犬種はマルチーズ(24.5%)で、次いでプードル(12.5%)、シーズー(8.3%)、ヨークシャーテリア(6.8%)、ポメラニアン(6.0%)、スピッツ(2.3%)、コッカースパニエル(1.7%)、ビションフリーゼ(1.0%)の順だった。

Can f1は、各犬種内で個体間のばらつきがあったが、犬種間の差は有意ではなかった(P = 0.827)(図A)。

Can f1は、性別、年齢、ホルモン状態によって差はなかった(表)。

■ 特異的IgE ImmunoCAP inhibitionでは、犬種間で免疫反応性が保たれていた(59%-89%)(図B)。

■ 患者血清では、アレルゲン抽出液中の23 kDa(Can f1と推定される)、69 kDa(Can f3と推定される)のタンパク質によってIgE免疫反応が示された(図C)。

■ 23kDaバンドは8品種全ての抽出液に存在したが、69kDaバンドはプードルの毛抽出液には観察されなかった(図C)。

論文から引用。犬種間で差がない(A)。

■ 本研究で評価した小型犬種のアレルゲン活性のばらつきは、欧米で人気のある様々な大型犬種で報告されているものと同程度だった。

■ プードルと他の犬種に、IgE反応性に違いが見られた。

■ 性別、年齢、避妊手術の有無はアレルゲン生成に影響しなかった。

 

考察・限界

■ この研究にはいくつかの限界があった。

■ 犬アレルギー患者の約64%が反応を示すCan f1の濃度のみを測定・評価した。

■ さらに、プードルと他の種との間のイムノブロッティングの結果の違いを説明することはできなかった。

■ この研究は犬アレルゲンを包括的に評価したものではなく、今後さらなる研究が必要である。

■ いわゆる低アレルゲン犬種において、アレルゲン性が低いことを示すエビデンスはこれまで存在しない。

■ さらに、犬の毛のアレルゲン性は、以前に報告されているように、同じ犬種でも個体によって異なることがわかり、「低アレルゲン」という概念は、現在のところ科学的なエビデンスに裏付けられていないことがわかった。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

低アレルゲン性の犬種はないといえるようだ。

■ 低アレルゲンであるという犬種はないといえそうです。

■ 一方で、ネコのアレルゲン性を下げるというワクチンが開発されているという報告があります(倫理的にどうなのかは別問題として…)。

■ アレルギーのある方にとって、ペットを飼うかどうかに関して相談されることもありますが…なかなか結論が難しい問題です。

 

created by Rinker
¥2,420 (2024/04/26 11:21:44時点 Amazon調べ-詳細)

今日のまとめ!

 ✅ 低アレルゲンの犬種はないようだ。

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモであり、細かい誤字脱字はご容赦ください。基本的に医療者向けです。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう