以下、論文紹介と解説です。

Katoh N, et al. A phase 3 randomized, multicenter, double-blind study to evaluate the safety of upadacitinib in combination with topical corticosteroids in adolescent and adult patients with moderate-to-severe atopic dermatitis in Japan (Rising Up): An interim 24-week analysis. JAAD International 2022; 6:27-36.

中等症から重症のアトピー性皮膚炎のある日本人患者(12~75歳)272人に対し、ウパダシチニブ15mg、30mg、プラセボ群にランダム化し24週間投与した(プラセボ群のみ16週から8週間ウパダシチニブを投与)。

背景

■ 安全性の高いアトピー性皮膚炎の全身治療薬が求められている。

 

目的

■ アトピー性皮膚炎の治療において,経口ヤヌスキナーゼ阻害薬ウパダシチニブとステロイド外用薬(topical corticosteroids ; TCS)を併用した際の安全性を評価する。

 

方法

■ 第3相二重盲検試験(Rising Up)において、中等症から重症のアトピー性皮膚炎のある日本人患者(12~75歳)を対象に、ウパダシチニブ 15mg+TCS、ウパダシチニブ 30mg+TCS、プラセボ+TCS(16週目にウパダシチニブ 15mgもしくは30mg+TCSのいずれかを1:1の率で投与)を1:1:1の比率でランダムに投与した。

論文から引用。研究フローチャート。

■ 安全性については、有害事象および臨床検査データを評価した。

 

結果

■ 治療を受けた272人において、24週目の重篤な有害事象の発生率は、15mgと30mgのウパダシチニブ+TCSで同等であったが(15mg:56%、30mg:64%)、プラセボ+TCS(42%)よりも高かった。

ざ瘡(いずれも軽症もしくは中等症、中止には至らず)は、プラセボ+TCS(5.6%)に比べ、ウパダシチニブ+TCS(15mg; 13.2%、30mg; 19.8%)で多く発生した。

■ さらに、帯状疱疹感染(4.4% vs 0%)、貧血(1.1% vs 0%)、好中球減少(4.4% vs 1.1%)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)上昇(2.2% vs 1.1%)が、ウパダシチニブ30mg+TCSでウパダシチニブ15mg+TCSに比べて高頻度に発生した。

■ プラセボ+TCSではこれらの事象は報告されなかった。

■ 血栓塞栓症、悪性腫瘍、消化管穿孔、活動性結核、死亡のいずれも発生しなかった。

論文から引用。有害事象のサマリー。

 

制限

■ 本研究の限界は、サンプル数が少ないこと、観察期間が短いこと,日本人以外に結果を一般化できないことだった。

 

結論

■ 既報の結果とおおむね一致しており、新たな安全性リスクは認められなかった。

内服JAK阻害薬は、必要な状況を慎重に判断する必要性があるでしょう。

■ 有害事象がすくなからずあることもあり簡単に導入できる薬剤ではありませんが、内服JAK阻害薬はどうしても寛解にいたれない場合は寛解導入に使用できる有用な薬剤となっていくだろうと考えています。

■ 先行した生物学的製剤デュピクセントよりも有効性が高いという報告も出てきていますし、内服薬という投与方法も有用性を高めています。

 

■ 一方、別の内服JAK阻害薬であるトファシチニブ(商品名ゼルヤンツ)に対し、重大な心血管イベントおよびがん発症のリスクが高いことが示されたとしてFDAから警告が発出されています。

Initial safety trial results find increased risk of serious heart-related problems and cancer with arthritis and ulcerative colitis medicine Xeljanz, Xeljanz XR (tofacitinib)

 

■ どの薬剤にもいえることですが、内服JAK阻害薬は必要なケースを慎重に考えていくべき薬剤のように思っています。

 

今日のまとめ!

 ✅ ウパダシチニブは、アトピー性皮膚炎の治療において有効であるが、有害事象やFDAの警告などに配慮しつつ、慎重に適応を考えていく薬剤である。

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