生後6ヶ月から使用できるようになったデュピルマブは、子どものアトピー性皮膚炎に有効かつ、感染リスク減少に効果があるかもしれない
■ アトピー性皮膚炎は、小児で発症することが多い病気です。
■ アトピー性皮膚炎があると、さまざまな皮膚の感染症を発症しやすくなり、黄色ブドウ球菌やヘルペスなどが原因になることが多いです。
■ 全身性(内服など)ステロイド薬は、長期間の継続した使用では特に、免疫を下げて感染症のリスクを高めます。
■ しかし、インターロイキン-4受容体αに作用するデュピルマブは、全身性のアトピー性皮膚炎に対する治療薬ではあるものの、感染症を増やさないことが期待されています。
■ 6歳から11歳の子どもにおいて、皮膚感染症のリスクを下げる効果があることが分かっていますし、成人の研究でも、感染症全体のリスクを増やさず、細菌による皮膚感染症やヘルペス以外の感染症のリスクを下げることが成人の研究でも確認されています。
■ 最近、生後6ヵ月以上の中等症以上のアトピー性皮膚炎の児に、デュピルマブが使用できるようになりました。
■ 生後6ヶ月から5歳の児に対してデュピルマブ治療中の感染症はどのように影響するでしょうか。
■ LIBERTY AD PRESCHOOL 試験からの事後解析のデータが報告されています。
Paller AS, Siegfried EC, Cork MJ, Arkwright PD, Eichenfield LF, Ramien M, et al. Infections in Children Aged 6 Months to 5 Years Treated with Dupilumab in a Placebo-Controlled Clinical Trial of Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis. Pediatric Drugs 2024:1-11.
中等症から重症のアトピー性皮膚炎を持つ生後6ヵ月から5歳までの小児162例に対し、デュピルマブをステロイド外用薬と併用して4週ごとに16週間皮下投与した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)患者、特に乳幼児は、皮膚感染症を発症するリスクが高い。
■ 本研究では、生後6ヶ月から5歳のAD患者に対するデュピルマブ治療の感染率について評価を行った。
方法
■ 二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験であるLIBERTY AD PRESCHOOLにおいて、中等症から重症ADの生後6ヶ月から5歳の小児を対象に、デュピルマブ皮下投与する群とプラセボ群に1対1でランダム化し、低力価ステロイド外用薬を併用しながら4週ごとに16週間投与した。
■ 治療群間の比較には曝露量で調整した感染率(Exposure-adjusted infection rates)を用いた。
結果
■ 解析対象は162例で、このうち83例にデュピルマブが投与され、79例にプラセボが投与された。
■ 総感染率はデュピルマブ群とプラセボ群で有意差は認められなかった(rate ratio [RR] 0.75, 95% CI 0.48-1.19; p = 0.223)。
■ 非ヘルペス性皮膚感染症と細菌感染症は、プラセボ群に比べデュピルマブ群で有意に頻度が低かった(非ヘルペス性皮膚感染症:RR 0.46、95% CI 0.21-0.99、p = 0.047;細菌感染症:RR 0.09、95% CI 0.01-0.67、p = 0.019)。
■ 全身性抗生物質を使用した患者数もデュピルマブ群で有意に少なかった(RR 0.52、95% CI 0.30-0.89、p = 0.019)。
■ 疱疹性感染症の発生数については、デュピルマブ群とプラセボ群間で有意差はなかった(RR 1.17, 95% CI 0.31-4.35; p = 0.817)。
■ 2回以上の感染イベントを報告した患者数はプラセボ群で有意に多かった(RR 0.29、95% CI 0.12-0.68、p = 0.004)。
■ デュピルマブを投与された患者においては、重症または重篤な感染症(ヘルペス性湿疹を含む)は認められなかった。
結論
■ これらのデータから、ADの6歳未満の乳幼児および小児に対するデュピルマブ投与は、感染症の全体的なリスクを増加させず、プラセボと比較して細菌性や非ヘルペス性皮膚感染症のリスクを低下させることが示され、結果として感染症に対する薬剤の必要性が減少することが示唆された。
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