マラセチアは、セラミドを分解しアトピー性皮膚炎の頭頚部の湿疹を悪化させる?

真菌であるマラセチアは、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因のひとつと考えられている

■ 夏が近づくと、アトピー性皮膚炎の患者さんから、首周りや頭皮が悪化するという訴えが増えてきます。

■ そういった『頭頚部』の悪化に関連すると考えられているのが『マラセチア』という真菌(カビ)です。

■ そのマラセチアよってアトピー性皮膚炎が悪化することが報告されており、さらに最近、そのメカニズムが報告されていました。

 

Chu H, Kim SM, Zhang K, Wu Z, Lee H, Kim JH, Kim HL, Kim YR, Kim SH, Kim WJ, Lee YW, Lee KH, Liu KH, Park CO. Head and neck dermatitis is exacerbated by Malassezia furfur colonization, skin barrier disruption, and immune dysregulation. Front Immunol. 2023 Feb 22;14:1114321.

マラセチアフルフルへの感作がアトピー性皮膚炎の頭頚部湿疹に及ぼす影響を明らかにするために、アトピー性皮膚炎患者312人を検討した。

はじめに&目的

■ 頭頸部皮膚炎(Head and neck dermatitis; HND)は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の難治性のフェのタイプであり、従来の治療法に十分反応しないため、治療上の課題となり得る。

■ 先行研究では、マイクロバイオームやファンジオーム(真菌叢)がHNDの誘発に関与している可能性が示唆されているが、その根本的な発症メカニズムは不明なままである。

■ そこで、HNDとファンジオームの関連性を明らかにし、Malassezia furfurの寄与を検討することを目的とした。

材料と方法

■ M. furfurの感作がHNDに及ぼす影響を明らかにするために、ADと診断された患者312名を登録した。

■ M. furfurの効果のメカニズムを解明するために、ヒトのケラチノサイトと真皮内皮細胞をM. furfurで培養し、Th2サイトカインで処理した。
■ 炎症と血管新生を含む様々なサイトカインの下流効果をリアルタイム定量PCRで調査した。
■ 脂質組成の変化とM. furfur感作の関連を明らかにするために、D-squameテープストリッピングを実施した。
■ 脂質組成は、液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析計を用い、セラミド種に着目して評価した。

結果

■ HND患者では、M. furfurに対する感作の増加が観察された。
■ さらに、M. furfurに対する感作は、これらの患者における疾患の重症度の上昇と関連していた。

■ M. furfurで培養したIL-4処理ヒトケラチノサイトは、VEGF、VEGFR、IL-31、IL-33を有意に多く産生した。
■ IL-4/M. furfurを共培養した皮膚内皮細胞は、VEGFR、TGF-β、TNF-α、IL-1βのレベルを有意に上昇させた。
■ 角層脂質分析では、エステル化オメガ-ヒドロキシアシル-スフィンゴシンレベルが低下し、HNDにおける皮膚バリア機能障害が示された。

■ このセラミドレベルの低下は、皮膚のバリア機能に影響を与える可能性がある。

■ また、これらのセラミドを培養液に添加すると、M. furfurの増殖が抑制されたが、Cutibacterium acnesを含む他の微生物群の増殖は抑制されなかった。

結論

■ HNDを有するAD患者において、セラミドレベルが低下すると、M. furfurは増殖し、炎症性サイトカインレベル、血管■ 新生、組織リモデリングを促進すると考えられる。
■ したがって、M furfurはADのHNDの病態に中心的な役割を担っていると考えられる。

 

 

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