アトピー性皮膚炎の治療に対する食物除去は、正しい場合はあるものの、新たな火種をまく可能性があります。
■ 子供さんのアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関係していると考えて受診される患者さんは多く、実際に食物除去で改善する患者さんがいらっしゃるのは確かです(ただし、実際に証明した研究は少なく、メタアナリシスで統計的に有意ではない程度です)。
■ 一方で、経口免疫寛容(食べることでアレルゲンを受け入れるようになる)の機序から、完全除去はかえって免疫寛容を破綻させて即時型反応が起こるようになってくるという報告もあり、除去は諸刃の剣ではないかという考えもあります。
E: 食物除去指導あり
C: 食物除去指導なし
O: 除去食は新規の食物アレルギーの発症に関連するか
結果
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、アレルギー専門医によって診断された。
■ 298例の患者のうち、初回受診時に183例(61.4%)は食物に引き起こされるアトピー性皮膚炎の可能性があると診断されたが、その後19例(6.4%)は湿疹を食物とは無関係とされ、96例(32.2%)は食物との関係ははっきりしないとされた。
■ 追跡調査をされた206例のうち、132例は食物に引き起こされるアトピー性皮膚炎と診断された。
■ 追跡期間中、60回の即時反応偶発的な誤食もしくは食物系後負荷試験(OFC)で認められた。
■ 25例(追跡調査中19.8%、全コホートの8.4%、計31回即時反応)は、初診時に即時反応の既往歴がなかった。
■ 60例中、11例(18.3%)は以前は任意に任意に摂取していた食物で即時型反応を起こしていた。
■ 食物に引き起こされるアトピー性皮膚炎を有し、以前の即時型反応を起こしていない患者の19%は、除去食開始後、食物即時型反応を呈しており、食物除去は、その食物に対する即時型反応を惹起するリスク増加と関連した(P < .01)。
■ 即時型反応の70%は皮膚症状だったが、30%はアナフィラキシー症状だった。
■ 牛乳と卵は、即時型反応の原因として最も多かった。
除去食をすることによって、摂取できていた食品に対しても即時型反応やアナフィラキシーを起こすようになるかもしれない。
■ 過去の症例報告では、長期の除去食をすることによって、以前摂取できていた食品に対しても即時型反応やアナフィラキシーを起こすようになることを示唆しています。
■ そのため、食物によって悪化するアトピー性皮膚炎児に対する完全食物除去は注意しなければならないと結論されています。
■ 今後、問題ある食物を許容される範囲に摂取しておくといった研究が必要ではないかとされていました。
■ なお、この論文中にも記載がありますが、食物によって悪化するアトピー性皮膚炎の診断には最適なスキンケアがなされなければならないとあり、十分なスキンケアの必要性が強調されています。
■ アトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与する場合があるにせよ、まずはスキンケアをしながら、摂取できる範囲では維持をすることが大事だろうと考えています。