きょうだいから受け継いだ腸内細菌叢は、下のきょうだいの食物アレルギーを防ぐ一因になる?

兄弟姉妹の数やペット飼育が健康に与える影響:衛生仮説の要因は?

■ 「衛生仮説」は、もともとは1989年に英国の疫学者ストラカンが提唱した概念です。

■ ストラカンは、1958年のある週に出生した英国の小児17414人を23年間観察していった結果を報告し、生まれたときの上のきょうだいの数が多いほど花粉症や湿疹が少ないことを示しました。

■ そしてその理由として、「きょうだいからの感染症が多くなる環境だとアレルギーが少ないのではないか」と推測したのです。

▷Strachan DP. Hay fever, hygiene, and household size. Bmj 1989; 299:1259-60.

■ そのような背景のもと、腸内細菌叢の成熟度と食物アレルギーとの関連を、兄弟姉妹の数やペット飼育を考慮した研究として公開されていました。

Gao Y, Stokholm J, O'Hely M, Ponsonby AL, Tang MLK, Ranganathan S, et al. Gut microbiota maturity mediates the protective effect of siblings on food allergy. J Allergy Clin Immunol 2023; 152:667-75.

2010年から2013年にかけてオーストラリア南東部のBarwon Infant Studyコホートに参加した1074人の乳児のうち、ランダムにサンプリングされたサブコホート324人の乳児を対象に、生後1ヶ月、6ヶ月、1歳の時点の糞便を調査し、腸内細菌叢の成熟度を分析した。

背景

■ 年上の兄弟姉妹がアレルギー疾患を予防するメカニズムは不明であるが、乳児の腸内細菌叢に関連している可能性が考えられている。

目的

■ 年上の兄弟姉妹がいる場合、乳児の腸内細菌叢の成熟が促進され、IgEを介した食物アレルギーのリスクが低下するかどうかを調査した。

方法

■ 非選択的な出生前サンプリングフレームを使用して作成した出生コホート(n = 1074)から、1ヵ月、6ヵ月、1歳時に糞便サンプルを収集し、1歳時の食物アレルギーの状態を皮膚プリックテストと食物負荷試験により判定した。

■ 16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシングを用いてアンプリコン配列の変異を解析した。

■ また、ランダムサブコホート(n = 323)において、生後1年間の腸内細菌叢の成熟を示すために、糞便アンプリコン配列変異体を使用して各時点の年齢別微生物叢zスコアを計算した。

結果

■ 兄弟姉妹の数が増えるにつれて、1歳時の年齢別微生物叢zスコアが高くなった(兄弟姉妹1人増えるごとにβ=0.15;95%CI、0.05-0.24;P=0.003)。

■ これは、食物アレルギーの発症リスクの低下と関連していた(オッズ比、0.45;95%CI、0.33-0.61;P<0.001)。

■ 微生物叢の年齢別zスコアは、兄弟姉妹の保護効果の63%を媒介していた。
■ 同様の関連は低年齢では観察されなかった。

結論

■ 乳児期のIgE依存性食物アレルギーの発症リスクに対する年上の兄弟姉妹の防御効果は、1歳時の腸内細菌叢の成熟によって実質的に媒介されることが示唆される。

 

※ 論文の背景とその解説・管理人の感想は、noteメンバーシップでまとめました。

 

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