
子どもでも増えている木の実アレルギー。1歳以降に発症するリスクは?
■ 木の実類アレルギーは、日本でも一般的な食物アレルギーの原因となっており、最近、小麦アレルギーを抜いて3位の頻度となりました。
■ しかし、木の実類アレルギーの有病率に関するデータは多くはなく、特に乳児期の木の実類に対し感作している児がどのように経過するのかは十分わかっていません。
■ ピーナッツと木の実類は、基本的に別のアレルギーです。
■ しかし、ピーナッツアレルギーのある小児は、木の実アレルギーのリスクが高いと考えられています。
■ ある報告では、ピーナッツアレルギーのある小児患者の約30%が木の実アレルギーであると報告されています。
■ 1歳以降に木の実類アレルギーを新規に発症する可能性も高いです。
■ では、1歳時の食物アレルギーと6歳時の木の実アレルギー発症との関係はなにかあるのでしょうか?
McWilliam V, Peters R, Tang MLK, Dharmage S, Ponsonby AL, Gurrin L, et al. Patterns of tree nut sensitization and allergy in the first 6 years of life in a population-based cohort. J Allergy Clin Immunol 2019; 143:644-50.e5.
オーストラリアで実施されているHeatlhNuts研究に参加した小児5276人児に対し、1歳時にアレルギー経口食物負荷試験を行い、6歳時に追跡調査を実施した。
背景
■ 木の実アレルギーに関する縦断的集団ベースのデータは限られている。
目的
■ 6歳時点での木の実アレルギーの集団有病率を明らかにし、1歳時点での卵およびピーナッツアレルギーと6歳時点での木の実アレルギーの発症との関係を調査することを目的とする。
方法
■ 5276人の集団ベースの小児サンプルを1歳の時に募集し、6歳時に追跡調査を実施した。
■ 1歳の時点で、卵とピーナッツに対するアレルギーを経口食物負荷試験により判定し、保護者は子どもの木の実に対する反応歴を報告した。
■ 6歳時には、木の実アレルギーを経口食物負荷試験で確認した。
結果
■ 1歳の時点で、親が報告した木の実アレルギーの有病率は0.1%(95%CI、0.04%~0.2%)だった。
■ 生後1年間に木の実を摂取した乳児は18.5%に過ぎなかった。
■ 6歳時の経口食物負荷試験で確認された木の実アレルギーの有病率は3.3%(95%CI、2.8%~4.0%)で、カシューナッツが最も多かった(2.7%;95%CI、2.2%~3.3%)。
■ 1歳時にピーナッツアレルギーのみを有する小児の27%(95%CI、16.1%~39.7%)が6歳時に木の実アレルギーを有していたのに対し、卵アレルギーのみを有する小児では14%(95%CI、10.4%~17.9%)、ピーナッツアレルギーと卵アレルギーを両方有する小児では37%(95%CI、27.2%~47.4%)だった。
結論
■ 1歳までは木の実アレルギーはまれであるが、これは木の実の摂取が限られているためと考えられる。
■ 6歳では、木の実アレルギーの有病率はピーナッツアレルギーと同程度である。
■ 乳児期にピーナッツと卵の両方のアレルギーを有する小児の約3分の1以上が、6歳時に木の実アレルギーを発症する。
■ 木の実アレルギーの予防方法を理解することは、今後の研究において緊急の優先課題である。
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