妊娠初期のMRIは胎児に安全だが、造影剤は避けるべき

Ray JG, et al., Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes. Jama 2016; 316:952-61.

妊娠中のMRIの安全性評価。

■ 妊娠中の検査に関しては何かと心配になるものですし、安全性に関し聞かれることも多いでしょう。

■ 今回は、第1トリメスター(妊娠 14週未満=人間としての基本的な形が完成するまでの重要な時期)までのMRI(核磁気共鳴画像法)が、胎児に悪影響を及ぼさないかを確認した研究結果をお示しいたします。

 

PECO
P: 2003-2015年 カナダのオンタリオ州でのヘルスケアデータベースから生後20週以上で出生した児1424105人
E: 妊娠の第一トリメスター(妊娠 14週未満)のMRI検査曝露とガドリニウム造影によるMRI検査
C: MRI検査なし
O: 1) MRIの安全性(死産もしくは生後28日までの新生児期死亡、4歳までのすべての先天奇形、腫瘍、聴力、視力)
 2) ガドリニウム造影MRIの安全性(腎性全身性線維症様疾患 (NSF-like) 、出生時のリウマチ様・炎症性・浸潤性皮膚疾患)

 

妊娠初期のMRI検査と、造影剤に関するリスクを140万人以上の妊婦さんに対して評価。

■ 1424105出生(女児48%、妊娠期間の中央値39週)のうち、MRIの実施率は3.97回/1000妊娠だった。

妊娠 14週未満でのMRI実施1737人は、MRI未実施の1418451人と比較して、調整相対危険度[RR]1.68( 95%CI、0.97~2.90)だった。

■ 先天奇形、腫瘍、視力、難聴のリスクも有意差は認めなかった。

■ また、妊娠 14週未満におけるガドリニウム造影によるMRI実施の397例は、MRI未実施1418451人と比較して、 NSF-likeのリスクに対するハザード比は高くならなかった。

■ 一方、ガドリニウム造影によるMRI実施は、リウマチ様・炎症性・浸潤性皮膚疾患のリスクは調整ハザード比は1.36(95%CI、1.09~1.69)となり、死産と新生児死亡は、ガドリニウム造影MRI実施群の7例 vs MRI未実施群の9844例であり、補正リスク比は3.70(95%CI、1.55~8.85)と見積もられた。

論文から引用。妊娠中のMRIは有意なリスクの増加はない。

 

 

論文から引用。造影剤を併用すると有意にリスクが増加する。

 

 

 

妊娠初期のMRIは基本的に奇形や新生児死を増やさない。しかし、造影剤使用は出来れば避けたほうが良いかもしれない。

妊娠初期という奇形が発生しやすい時期でも、MRIは奇形や新生児死亡を増加させることはなく、ガドリニウム造影によるMRIはリスクが高くなり、新生児期の死亡は3.7倍になるとまとめられます。

妊娠中のMRIは禁忌ではないといえますが、一方で、ガドリニウム造影は避けるべきといえるでしょう。

■ なお、オンタリオ州では、妊娠24週までに90%以上は超音波検査を受けているので、妊娠週数にはまず間違いはないそうです。

■ なお、MRIの胎児への悪影響の機序は高周波による組織の加熱とされており、1.5テスラ以上のMRIは回避したほうが賢明であるともされていました(この点に関しては論文で検討はされていませんので、確かではありません)、 ただし、限界として、まれな有害転帰を検出することができないかもしれないとされていました。

 

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