卵早期摂取は、卵アレルギー予防に効果がない (HEAPスタディ): ランダム化比較試験

Bellach J, et al. Randomized placebo-controlled trial of hen's egg consumption for primary prevention in infants. J Allergy Clin Immunol 2016.[Epub ahead of print]

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27523961

 


■ 本日と明日、”卵早期摂取によって卵アレルギーが予防できるか"というランダム化比較試験を2件提示させていただきます。

■ 2本とも米国免疫アレルギー学会雑誌(J Allergy Clin Immunol)への報告ですが、それぞれドイツ、オーストラリアからの検討結果です。

■ 本日は、”効果がない”という結果、明日は”卵アレルギーの予防効果は不十分だったが、感作は減らす”という結果にまとめられます。

生後4ヶ月からの卵早期摂取は卵白感作を減少させる (BEATスタディ): ランダム化比較試験

■ なお、本邦からの報告が近日中に発表予定であり、”卵アレルギーの予防に効果がある”という結果で、すでに学会では報告されています。

加熱卵を少量で早期開始すると、1歳時の卵アレルギーを予防できる(PETITスタディ): ランダム化比較試験

■ さらに、最近行われたJAMAでのシステマティックレビューでは、卵の早期摂取開始には有益性があるとしており、当ブログでもご紹介いたしました。

離乳食導入タイミングはアレルギー疾患のリスクを変化させる: システマティックレビュー&メタアナリシス

■ 本邦からの結果は、論文の形で発表されたら、是非読んでみたいと思っています。


 

P: 生後4-6ヶ月の乳児 383人

E: 卵粉末 蛋白重量2.5g(=1/3個卵相当) 週3回摂取 199人

C: プラセボ(米粉)週3回摂取 184人

O: プライマリアウトカム:生後12ヶ月での卵感作率

  セカンダリアウトカム: 生後12ヶ月での卵アレルギー(鶏卵蛋白7gの乾燥粉末負荷試験で確定)

 

結果

■ 406人中23人(5.7%)はランダム化前に卵白特異的IgE抗体価陽性であり、鶏卵感作のリスクファクターは、帝王切開と湿疹だった。それら23人中17人が二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を受け、16人はアレルギー症状が確認され、さらに11名はアナフィラキシー反応を呈した。

■ 研究中のアレルギー症状は、卵摂取群の7.1%(13/184)対プラセボ群0.5%(1/199)であり、有意差が認められた(P = .001)。粉末摂取のコンプライアンスは、両群間に有意差はなかった(卵摂取群80.3%、プラセボ群83.9%(P =.45))。

■ 生後12ヵ月で、卵白摂取群の5.6%、プラセボ群の2.6%は卵白感作が認められ、相対危険度は2.20 (95%CI 0.68-7.14; P = .24)だった。

■ また、12ヶ月時の鶏卵アレルギー率は、卵白摂取群2.1%、プラセボ群で0.6%で相対危険度 3.30 (95%CI 0.35-31.32; P = .35)だった。

 

コメント

■ 本研究はHen’s Egg Allergy Prevention (HEAP) 研究という、結果が期待されていた研究ですが、生後4~6ヵ月からの卵摂取は、卵アレルギーの予防効果はなく安全性も十分ではないと結論されています。

■ 先行したピーナッツ早期摂取による予防研究であるLEAP試験が、ピーナッツ早期導入がピーナッツアレルギー予防するという結果を示したことと対照的です。

ピーナッツを早期に摂取開始したほうがピーナッツアレルギーが減少する(LEAPスタディ)

■ また、卵早期導入に関するオーストラリアにおけるSTAR研究は、リスクが高いことが判明し、途中で試験中止となっています。

卵の早期開始は予防に効果がある可能性があるが、危険性も伴う(STARスタディ)

■ では、卵早期導入は、危険で効果がないのでしょうか。

■ まず、明日、別の研究の結果で生後4ヶ月からの早期導入の結果を提示いたします。そちらは”感作を予防する”という結果になっています。

生後4ヶ月からの卵早期摂取は卵白感作を減少させる (BEATスタディ): ランダム化比較試験

■ さらに、すでに本邦での研究結果で、”卵早期導入が卵アレルギーを予防できる”という結果が判明しており、近日中に発表される予定だそうです(http://search.proquest.com/openview/34385372fa7bcf7f607f1c38dc582ce2/1?pq-origsite=gscholar&cbl=105664)。

■ おそらく、それぞれの検討手法を十分検討し、”効果が高く安全な方法”を探求する必要性が出てくるであろうと思われます。

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