慢性副鼻腔炎に対して、鼻腔内ステロイド薬は効果があるか: コクランシステマティックレビュー

Chong LY, et al., Intranasal steroids versus placebo or no intervention for chronic rhinosinusitis. Cochrane Database Syst Rev 2016; 4:Cd011996.

副鼻腔炎と点鼻ステロイド。

■ このブログではコクランシステマティックレビューによる二次資料を提示することは少ないのですが、今回は珍しくコクランの結果です。

 

PECO
P: 慢性鼻副鼻腔炎患者に対し、鼻腔ステロイド薬の効果を評価したランダム化比較試験 18件(2738人)
 鼻ポリープありの患者を含む14研究+鼻ポリープなしの4研究(小児を対象にした研究は1つのみ)
E: 鼻腔内ステロイド薬使用
C: プラセボ使用
O:鼻腔内ステロイド薬は副鼻腔炎に効果があるか

 

結果

■ プライマリアウトカムに特異的なHRQLを評価するRhinosinusitis Outcome Measures-31(RSOM-31)を使用した研究は、ポリープのない20人の成人患者に対しての1研究のみであり、有意差を示さなかった(エビデンスレベル非常に低い)。

■ セカンダリアウトカムである重症度に関しては、ポリープのない134人に対し、Chronic Sinusitis Surveyを使用して評価されたが、明らかな差を認めなかった(平均差[MD] 2.84、95%信頼区間[CI] -5.02~10.70; 0~100スケール)。

■ 一方、別の報告では鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎患者109人を評価し、鼻腔内ステロイド群で有意に改善することを報告した(RR 2.78、95%CI 1.76~4.40)。

■ EPOS基準の全4つの症状(それぞれ0~3スケール)で評価された2研究(243人)では、ベースラインからのMDの変化は平均 -0.26(95%CI -0.37~-0.15)だった。

鼻閉塞と鼻漏だけを考慮した6研究(1702人)場合は、MD -0.31(95%CI-0.38~-0.24)であり、嗅覚低下を考慮した4研究(1345人)もMDは同程度だった。

■ 個々の症状に対する効果は、鼻漏(MD-0.25、95%CI-0.33~-0.17; 1702人; 6研究)、嗅覚(MD-0.19、95%CI-0.28~-0.11; 1345人; 4研究)より、鼻閉塞(MD-0.40、95%CI-0.52~-0.29; 1702人; 6研究)で大きかった。

鼻腔内ステロイドは、鼻出血のリスクを上昇させた(リスク比(RR)2.74、95%CI 1.88~4.00; 2508人; 13研究)が、局所的な刺激のリスクは、不明だった(リスク比 0.94、95%CI 0.53~1.64; 2124人; 11研究)。

 

コメント

■ 慢性副鼻腔炎に対し、鼻腔内ステロイド薬は汎用されていますが、生活の質(QOL)に対しての情報はほとんどないとされています。

■ 一方、症状に関しては、すべての症状を改善させるようで(エビデンスレベル低)、鼻閉に対しても中等度の有益性鼻漏に対しての小さな有益性がある(エビデンスレベル中)とまとめられます。

鼻出血のリスクは増加しますが(エビデンスレベル高)、鼻出血は患者さんにとっての主要な懸念にはならないのではないかとされていました。

■ また、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎には「鼻うがい」が有用です。

 

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