アトピー性皮膚炎乳児にピメクロリムス早期に塗布するとアレルギーマーチを予防するか?

保湿剤を早期に開始するとアトピー性皮膚炎が予防出来る可能性がある。では、抗炎症薬を塗布するとどうか?

■ 新生児期からの保湿薬塗布によりアトピー性皮膚炎発症を減らすことが報告()されており、さらに、アトピー性皮膚炎がその後の食物アレルギーをはじめとしたアレルギー疾患のリスクを上げることが示されています。

■ これらの現象は”アレルギーマーチ”と称されます。しかし、現状ではアトピー性皮膚炎の予防で”直接”アレルギーマーチも予防できるかどうかは証明されていません。

■ この証明は、大規模な保湿剤によるアトピー性皮膚炎予防研究であるBEEPスタディの結果を待つ必要があると思われますが、今回ご紹介するのは、湿疹発症時に早期にピメクロリムス(本邦未発売;免疫抑制薬)外用を塗布するとアレルギーマーチを予防できるかどうかを検討した研究結果です。

P: 3か月以内発症の生後3~18ヵ月のアトピー性皮膚炎(AD)患児 1,091人

E: ピメクロリムス軟膏×3年間(盲検化フェーズ) 546人⇒ 非盲検化フェーズ

C: 基剤×3年間(盲検化フェーズ) 545人⇒ 非盲検化フェーズ 

O: ピメクロリムスによる早期介入が、3年間の観察期間中のアトピーマーチを予防するか

 

 

結果

ベースラインで、対照群 (35.2%)よりピメクロリムス群(45.7%)のほうがに中等度ADが認められた。

3日間改善が見られない場合、ステロイド外用(プロピオン酸フルチカゾン0.05%クリーム)を許可され、使用の判断は、第14週までは研究者が、その後は介護者が決定した(ランダム化時にトレーニングされた)。

健常皮膚もしくは炎症を起こした皮膚に対する毎日の保湿剤の使用は推奨された。

研究者による有効性評価は、重症度の調査者アセスメント(Investigator Global Assessment;IGA)、症状のある総体表面積(TBSA;0-100%)、EASIスコア(0-72スケール)、症状部位(頭頸部、上肢:0-14スケール;体幹・下肢:0-22スケール)といったスコアリングによった。

平均追跡期間は、全調査フェーズ 平均2.8年と非盲検化フェーズ 1.2年間だった。

結果として、喘息10.7%、アレルギー性鼻炎22.4%、食物アレルギー15.9%、アレルギー結膜炎14.1%、一つ以上のアトピー性疾患37.0%発症したが、ピメクロリムスとプラセボ投与を受けた群の発症率に有意差は認められなかった。

ベースラインでのAD重症度がより高い乳児群では、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、一つ以上のアトピー性疾患(喘息もしくはアレルギー結膜炎単独を除く)を有意に発症した。

頭頸部に対するEASIスコアは、二重盲検相の全体を通じてピメクロリムス群が有意に改善しており、ピメクロリムス群は、対照群よりステロイド塗布日数が少なかった(中央値32対49日; p=0.20;ANCOVA、 van Elterenテスト;p = 0.002)。

 

コメント

ピメクロリムスを保護者判断で症状出現時に塗布しても、アトピーマーチの予防はできなかったとまとめられます。

ピメクロリムスを塗布する期間はプロアクティブに塗布するわけではなく症状が出たときのみであり、3日間使用して改善しなければ両群にステロイド外用薬を使用し、受診も可能になっていますので、湿疹の期間が短く済んでいる可能性があります。

また、保湿薬は”推奨”にとどまっているのですが、十分に塗布されていた可能性もあります。

それは、論文中に記載されているのですが、他の研究より、本報告で観察されたアトピー性疾患の率は低くなっていました。

例えば湿疹を持つ児におけるコホート試験のシステマティックレビューで6歳で喘息有病率29.5%であるとか、アトピー性皮膚炎患児 2,270人の横断調査において3歳時点で66%が一つ以上のアトピー性疾患を有していたなどの報告があり、それらよりこの検討でのアレルギー疾患の発症率が低くなっています。

喘息や他のアトピー疾患の低いことは、試験による治療介入(保湿薬、ピメクロリムス外用、ステロイド外用)に起因する可能性があるとされていました。またアトピー性皮膚炎重症度とアトピー性疾患の発症には相関があることが報告されており、今回はランダム化されたにも関わらず中等症以上のアトピー性皮膚炎患者が介入群で多かったことも影響した可能性があるとされています。

この結果のみでは、効果があったともなかったともいえませんが、ピメクロリムスor保湿を3日間塗布して、改善なければステロイド外用薬という方針であれば、湿疹の増悪期間はとても短く、結果には影響しないような印象を持ちます。