乾燥体質よりも乳幼児期の湿疹歴の方が、その後の多くのアレルゲンへの感作に影響する

経皮感作は広く知られた概念になってきました。

■ 乳幼児期の湿疹が、その後のアレルギー疾患の発症に影響することをアトピーマーチと言います。

■ そして、乳幼児期に重篤なアトピ—性皮膚炎になると、その後の感作がどんどん進むことは臨床上も多く経験されます。

「感作」に関して患者さん向けの説明をインスタで作ってみましたので、ご参考まで。
IgE検査が陽性、だったら除去で本当に良いの?

 

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Johansson EK, et al. IgE sensitization in relation to preschool eczema and filaggrin mutation. J Allergy Clin Immunol 2017; 140:1572-9.e5.

大規模出生コホートに参加した小児3201人に関し、就学前の湿疹歴とフィラグリン遺伝子変異(乾燥素因)のどちらがその後の感作に影響するかを確認した。

背景

■ 湿疹(アトピー性皮膚炎)は、IgE抗体を持つリスクの増加と関連している。

■ IgEに感作されることは、障害のある皮膚バリアを通して起こる。

フィラグリン遺伝子(Filaggrin gene ; FLG)突然変異は湿疹と、そしておそらくIgE感作とも関係している。

 

目的

就学前湿疹(preschool eczema ; PSE)、FLG変異、またはその両方と、小児期におけるIgE感作との長期的な関係を探求しようとした。

 

方法

■ 一般集団から募集されたBAMSE(Children Allergy Milieu Stockholm Epidemiology)出生コホートからの小児計3201人が含まれた。

■ 通常の保護者アンケートは湿疹のある児を特定した。

■ 特異的IgE抗体価の評価のために、4、8、16歳の時点で血液サンプルを採取した。

■ FLG突然変異分析は、小児1890人に対して実施された。

 

結果

PSEは、16歳までの食物アレルゲンと吸入アレルゲンの両方に対するIgE感作と関連していた(全体の調整オッズ比 2.30; 95%CI 2.00-2.66)

■ この関連は、持続していたPSEの児においてさらに強かった。

FLG突然変異は4歳時のピーナッツに対するIgE感作と関連していた(調整オッズ比 1.88; 95%CI 1.03-3.44)が、16歳までの他のアレルゲンとの関連は認めなかった

■ FLG突然変異とPSEは、IgE感作と、PSEもしくはFLG突然変異の関連に対する効果を修飾に働かなかった。

■ PSEのある感作された児は多抗原感作によって特徴付けられたが、他の特定のIgE感作パターンは見出されなかった。

 

結論

PSEは、16歳までの食物アレルゲンや吸入アレルゲンの両方に対するIgE感作と関連している。

FLG変異は、ピーナッツに対するIgE感作に関連しているが、他のアレルゲンには関連していなかった

■ PSEが先行して感作された児は、より頻繁に多抗原に感作されやすい。

 

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結局、何がわかった?

 ✅ 就学前の湿疹歴は、16歳までの食物アレルゲンと吸入アレルゲンの両方に対する感作と関連していた(全体の調整オッズ比 2.30; 95%CI 2.00-2.66)。

 ✅ フィラグリン突然変異(乾燥素因)は4歳時のピーナッツへの感作と関連していた(調整オッズ比 1.88; 95%CI 1.03-3.44)が、16歳までの他のアレルゲンとの関連は認めなかった。

 

乾燥素因がアトピ—性皮膚炎の発症リスクにはなるものの、最終的に湿疹を発症すると様々なアレルゲンに感作される。

■ 経皮感作というより、「経湿疹感作」と考えるならばとても理解しやすい結果です。

乾燥素因自体が食物アレルギーのリスクになるという報告はあるものの、湿疹を長引かせないことを考えていくべきでしょう。これまで何度もお話ししてきた通りですが、やはり重要な視点と思います。発症前から保湿、発症した場合ははやめに治療開始、重篤化するまえに医師にご相談ください。

 

今日のまとめ!

 ✅ 乾燥素因よりも、乳幼児期の湿疹がその後の多くの感作に影響する。

 

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