Bacharier LB, et al. Early Administration of Azithromycin and Prevention of Severe Lower Respiratory Tract Illnesses in Preschool Children With a History of Such Illnesses: A Randomized Clinical Trial. Jama 2015; 314:2034-44.
■ self-limited(自然治癒の見込める)気道感染症に対する抗生剤治療による細菌感染症の予防効果は極めて限定的という報告をUPいたしました。
軽症の呼吸器感染に対して抗生剤を予防的に使用する意味はあるか?
■ 今回は繰り返している重篤な下気道感染症の病歴がある児に対し、早期のアジスロマイシン(商品名ジスロマック)が重篤化を防ぐかもしれないという報告です。
P: 再発性の重篤な下気道感染症(lower respiratory tract illness ; LRTI)の病歴のある生後12ヶ月から71ヵ月乳幼児 607人
E: アジスロマイシン(商品名ジスロマック)を12mg/kg/日×5日間 307人 C: プラセボ 300人 O: プライマリアウトカム: 重篤なLRTの発症数(臨床的に経口コルチコステロイド処方が必要とされたかどうかで判断) セカンダリアウトカム: 咽頭におけるアジスロマイシン耐性菌、副反応 |
結果
■ 除外基準は、過去12ヵ月のコルチコステロイド全身投与が4回以上もしくはの1つ以上の入院、または過去12ヵ月のうち8ヵ月以上の喘息に対するコントローラ使用だったが、研究開始前まで低用量吸入ステロイドもしくはモンテルカストを使用していて研究開始時に中止できた者は研究に参加した。
■ 重篤なRTIsの定義は、
(1) 1時間以上にわたり3回のアロブテロール吸入後も軽症以上の症状がある、
(2) 4時間ごとに1回以上アロブテロール吸入を要する症状がある、
(3) 24時間に6回以上のアロブテロール吸入を必要とする、
(4) 試験薬物(アジスロマイシンもしくはプラセボ)開始後、5日以上中等度もしくは喘鳴が持続している、
とし、試験薬物開始14日以内に重篤なRTIを発症しなかった場合重篤なLRTIは発症しなかったと定義された。
■ RTIsに罹患したエピソードは計937回(アジスロマイシン群473回、プラセボ群464回)で、計443人(アジスロマイシン群223人、プラセボ群57人)で認められた。
■ 重篤なRTIsは、アジスロマイシン群35回、プラセボ群57回だった。
■ アジスロマイシンは、プラセボと比較して有意に重篤なLRTIを発症するリスクを低下させた(危険率 0.64[95%CI 0.41-0.98]; P = .04; 初回のRTIを発症する絶対危険度 アジスロマイシン0.05, プラセボ0.08; リスク差(0.03[95%CI、0.00-0.06])。
■ アジスロマイシン耐性菌は、ランダム化時点でアジスロマイシン群12.2%、プラセボ群 8.9%で検出され、研究終了時、アジスロマイシン群 20.0%、プラセボ群17.0%で検出された。
■ 治療をうけたRTIsにおける胃腸症状(アジスロマイシン群3例、プラセボ群1例)は軽度であり、研究中断にならなかった。
コメント
■ アジスロマイシンは、重篤で繰り返すLRTIsの既往歴をもつ幼児において、プラセボと比較して重篤なLRTIの発症を低下させたとまとめられます。
■ ただし、今回の研究の範囲では耐性菌の増加は認めませんでしたが、今後、耐性菌の増加の情報が必要であるとされています。
■ これも以前UPしましたが、例えばマイコプラズマに関してはクラリスロマイシンやアジスロマイシンの耐性化が進んでおり、治療に難渋することが増えています。
ドキシサイクリンによるマイコプラズマの治療: 後ろ向き症例対照研究 2016年11月11日2017年6月8日
■ この研究は製薬会社も関わっており、必ずしも鵜呑みには出来ないと思いますが、重篤な下気道感染を繰り返している児にはオプションとして覚えておいて良いのではないかと思います。