慢性蕁麻疹に抗ロイコトリエン拮抗薬は有効か?

de Silva NL,et al. Leukotriene receptor antagonists for chronic urticaria: a systematic review. Allergy Asthma Clin Immunol 2014; 10:24.

ロイコトリエン拮抗薬は、慢性じんましんに有効か?

 抗ロイコトリエン拮抗薬とは、例えばシングレアやオノンにあたり、じんましんには保険適応はありません。

 しかし、抗ヒスタミン薬だけでは慢性蕁麻疹に十分な効果が認められない場合に追加治療として使われ、本邦のガイドラインにも記載があります。

ガイドライン

 以前ご紹介した小児に対する慢性蕁麻疹の予後研究でも、段階的治療のひとつに組み入れられており、さらに最近のレビューもロイコトリエン拮抗薬に言及しています

小児慢性蕁麻疹の予後: 前向きコホート試験

慢性じんましんは適切に治療されているか?

 しかし、抗ロイコトリエン拮抗薬の慢性蕁麻疹への効果に関する研究は多くはありません。そこで、今回は、それに対するシステマティックレビューをご紹介いたします。

P: PUBMED, EMBASE, SCOPUS, LILACS,Cochrane Central Register of Controlled Trials, Web of Scienceを検索し、慢性蕁麻疹治療にロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を使用した10研究
E: LTRA単剤もしくは抗ヒスタミン薬+LTRA
C: 抗ヒスタミン薬もしくはプラセボ
O: 慢性蕁麻疹にLTRAは有効か

 

 結局、何を知りたい?

 ✅抗ロイコトリエン拮抗薬が、慢性蕁麻疹に効果があるかどうかということを知ろうとしている。

 

結果

 試験の不均一性が高く、メタアナリシスはできなかった。

 

LTRA vs プラセボ

Di Lorenzoらは、慢性特発性じんま疹成人患者160例(年齢18-69歳)に対し、デスロラタジン1日5mg、デスロラタジン1日5mg+モンテルカスト1日10mg、モンテルカスト1日10mg、プラセボでランダム化比較試験を行い、3、6週後、治療終了2週後で評価した。

 そう痒や最も大きな蕁麻疹の大きさに関しては有意差がなかったが、いくつかの転帰尺度においてモンテルカストはプラセボより優れていた(TSS; p=0.005や蕁麻疹数; p=0.001)

 Erbagci らは、一重盲検プラセボ対照試験(n=30)で、モンテルカスト1日10mgvsプラセボを比較し、モンテルカスト群はUrticarial Activity Score (UAS)の有意な改善と週あたりの抗ヒスタミン薬の使用数が減少したと報告した。

 Riemersらによって行われた52例に対する無作為二重盲式プラセボ対照クロスオーバー研究においてzafirlukast 20mgとプラセボを比較したが、転帰尺度のいずれも有意差を示さなかった。

 Agcaoiliらは、29例の慢性蕁麻疹患者における無作為二重盲検試験において、モンテルカストとプラセボを比較し、2週後の治療成功率はモンテルカストでより良好だったと報告した。

 

抗ヒスタミン剤+LTRA vs 抗ヒスタミン剤のみ

 Bagenstoseらは、86例に対する二重盲検プラセボ対照試験でcetrizine 1日10mg+zafirlukast 20mg1日2回 vs cetrizine1日10mg+プラセボで比較し、3週間後、患者と医師によって評価されるVASスコアは、cetrizine+LTRA群で有意に低かったと報告した。

 Nettisらは、81例に対するRCTにおいて、デスロラタジン1日5mg+プラセボ、デスロラタジン1日5mg+モンテルカスト1日10mg、プラセボのみで6週介入を行い、デスロラタジン+モンテルカストの組合せが最も大きな有益性を示したと報告した。

 Wanらは、120例に対する一重盲検無作為抽出試験を行い、ヒドロキシジン25 mg1日2回+cetirizine 5mg、ヒドロキシジン25 mg1日2回+famotidine 20mg、ヒドロキシジン25mg1日2回+montelukast 5mg、プラセボ1日2回を比較した。抗ヒスタミン剤とLTRA併用は、抗ヒスタミン剤二剤併用療法と同等であり、プラセボより優れていたと報告した。

 

LTRA vs 抗ヒスタミン剤

 Di Lorenzoらは、デスロラタジンはモンテルカストと比較して有意に有効性が高いと報告した(TSS(平均差1.66、95%CI 1.28--1.05)、そう痒(平均差0.7、95%CI-0.74--0.66)、蕁麻疹数(平均差-0.21 95%CI-0.27--0.16)、最も大きな蕁麻疹(平均差0.24 95%CI-0.29--0.19))。

 

まとめ

 研究結果の多くは、LTRAは、プラセボや抗ヒスタミン薬に比較して有用とは言えないとしながら、LTRAと抗ヒスタミン薬の併用療法が、抗ヒスタミン剤単剤より有効に見えることを示した。
 副作用プロフィールや耐え難さは受容できる範囲だった。

 

 結局、何がわかった?

 ✅ 慢性蕁麻疹に対する抗ロイコトリエン拮抗薬は、単剤では抗ヒスタミン薬に優る効果を示さないが、抗ヒスタミン薬の効果が不十分な場合、追加で使用すると効果が認められる報告が多い。

 

ロイコトリエン拮抗薬は、蕁麻疹に対する保険は認められていないものの、ガイドライン上では追加薬剤の一つとなっています。

 EAACI/GA2LEN/EDF/WAO治療ガイドライン2009年版では、段階を追っての治療アプローチが提唱されており、そのガイドラインでは、最初の治療法として標準用量の非鎮静性H1-抗ヒスタミン剤で開始し、2週後に治療反応が見られない場合、用量を標準の4倍まで増加するとされているそうです。

 一方、同ガイドラインでは、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の追加は、治療における第3段階として推奨されています。

 このシステマティックレビューは、慢性蕁麻疹に対する単独療法としてのLTRAの単独使用は推奨されることができないとしており、一方、LTRAは抗ヒスタミン剤に対し有効な追加治療であるとされていました。

 そして、抗ヒスタミン剤に十分に反応していない患者に対するLTRA使用は正当であるとされています。

日本ではLTRAはじんましんに保険はおりていませんが、追加薬剤としては使われることが多いです。

 

 今日のまとめ

 ✅慢性蕁麻疹に対し、抗ヒスタミン薬の効果が不十分な場合に抗ロイコトリエン拮抗薬を追加するのは妥当である(ただし保険適応なし)。

 

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