
慢性じんましんは決して少なくなく、外来でもよく診る疾患のうちの一つですが、実際に治療は適切に行われているでしょうか?その検討をご紹介します。
■ 慢性じんましんは決して少なくなく、外来でもよく診る疾患のうちの一つです。
■ 以前、小児に関しても、慢性蕁麻疹の予後は決して良くないことをご紹介いたしました。
■ また、治療に関し、抗ヒスタミン薬の増量や、オマリズマブ(商品名ゾレア)の投与に関する報告もご紹介しました。
慢性特発性蕁麻疹に対する抗ヒスタミン薬増量は効果があるか?: メタアナリシスとシステマティックレビュー
オマリズマブ(ゾレア)は抗ヒスタミン薬で改善しない慢性蕁麻疹に効果がある
■ そこで、今回は、ドイツでの前向きコホート研究により、慢性じんましん患者さんの生活の質(QOL)や治療実態に関して検討した報告を御紹介いたします。
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O: 慢性特発性蕁麻疹患者の特徴
Maurer M, et al. H1-antihistamine-refractory chronic spontaneous urticaria: It's worse than we thought - first results of the multicenter real-life AWARE study. Clin Exp Allergy 2017.[Epub ahead of print]
治療機関により、薬物治療率に違いがあった。
■ 女性 70%、平均年齢 46.3歳、平均BMI 27kg/m2だった。
■ 生活の質(QoL)は、皮膚科生活品質指数(dermatology life quality index;DLQI)、慢性蕁麻疹QoLアンケート(dermatology life quality index;CU-Q2oL)と血管性浮腫QoLアンケート(angioedema QoL questionnaire;AEQoL)を使用して評価された。
■ 平均urticaria control test (UCT)スコアは7.9であり、二人に一人は血管浮腫があった。
■ 最も多い併存疾患は慢性で誘発可能なじんま疹だった(chronic inducible urticaria; CIndU; 24%)。さらに順に、アレルギー性鼻炎(18.2%)、高血圧(18.1%)、喘息(12%)、抑うつ(9.5%)が多かった。
■ 薬物治療率は、クリニック患者と比較して総合病院施設で高率だった (何らかの治療 65.8%対54.7%;第二世代H1-抗ヒスタミン薬 55.9%対42.9%; ラニチジン 5.7%対1.1%; モンテルカスト 11.2%対1.0%; omalizumab 6.0%対0.8%; シクロスポリン 2.7%対0.9%)。
■ プレドニゾロンでの治療率(11.7%対11.6%)、ダプソン(2.2%対1.1%)、他のコルチコステロイド(3.2%対4.6%)は両群で変わらなかった。
■ DLQIの平均は8.3であり、患者の32.8%はCSU症状はQoLに非常に大きい影響を受けていた。
■ 総CU-Q2oLの平均は36.2で、最も障害がある分野は、そう痒/困惑(平均 48.2; SD26.1)、睡眠(平均 45.2; SD27.3)、精神的状態(平均 41.4; SD26.5)だった。
■ 総AEQoLの平均は46.8であり、最も障害のある分野は、『恐れ/恥』の平均54.5 (27.1SD)と『疲労/気分』の平均46.0 (26.0SD)だった。
■ CSU患者は、救急サービス(29.7%)、クリニック(71.9%)、アレルギー専門医もしくは皮膚科医受診(50.7%)といったヘルスケア資源の使用が多かった。
生活の質(QoL)が低下しているにも関わらず、慢性じんましんの治療は不十分となっているかもしれない。
■ 慢性じんましん(CU)は、最も頻繁な皮膚障害のうちの1つで、6週間以上蕁麻疹もしく血管性浮腫が反復性に発症するものとされています。
■ CUは世界的に約1%の有病率があり、特発性および誘引可能なタイプを含んでいます。
■ 本研究は、大多数の慢性特発性じんましん患者は治療されておらず、さらにはじんましんは十分抑制されておらず、QoLに影響を及ぼしていることが明らかになったと結論されていました。
■ 私は慢性じんましん治療に関し、ゾレアやシクロスポリンを使用した経験はありませんが、抗ヒスタミン薬単剤で不十分な場合は、抗ヒスタミン薬の増量/変更/追加・ロイコトリエン拮抗薬・H2拮抗薬・漢方薬などを使用しています。特に漢方薬は、一般的な治療で手詰まりである場合に使用すると奏功することも多いです。しかし、じんましんに使う漢方薬は四物湯を骨格に持つものが多く、とても苦いことが玉にキズです。