こどもの長く続く咳(慢性咳嗽)を診ていくための心構えとは?

慢性咳嗽とは、「長く続く咳」ということになります。その小児慢性咳嗽の基本アルゴリズムが米国呼吸器学会から提言されています。

■ 今回はCHEST(米国呼吸器学会)から発表された、小児慢性咳嗽の基本アルゴリズムを定めたステートメントです。

■ とても基本的なまとめなので、読む方によっては、”当たり前じゃん!”で役には立たないかもしれませんが、CHESTの公式ステートメントを知っておいて損はなかろうかと思い、ご紹介させていただきます。

 

結局、何を知りたい?

 ✅小児慢性咳嗽に関する、推奨ステートメントを発表しようとしている。

 

 

Chang AB,  et al. Use of Management Pathways or Algorithms in Children With Chronic Cough: CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest 2017; 151:875-83.

要約

■ 咳嗽管理のアルゴリズムまたは経路を使用することは、臨床的な結果を改善するかもしれない。

■ Population、Intervention、Comparison、Outcomeフォーマットを使用している鍵となる質問(KQs)に基づく、小児(≦14歳)の慢性咳嗽のマネージメントの一般的な方法(咳アルゴリズムや検査)の様々な面をシステマティックレビューの方法を用いて調査した。

■ システマティックレビューは、CHEST Expert Cough Panel's protocol、 American College of Chest Physicians (CHEST) methodological guidelines、 Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation frameworkを使用した。

■ デルフォイ手順は、最終的な等級づけを得るのに用いられた。

■ 2006年の咳嗽ガイドラインと比較すると、小児(≦14歳)の慢性咳嗽(>4週間)において、高品質のエビデンスが得られた。

■ 咳マネージメント・プロトコル(またはアルゴリズム)の使用は臨床アウトカムを改善すると考えられる。

■ また、咳の管理や検査のアルゴリズムは、咳や病歴に関連する特徴によって異なると考えるべきである。

胸部X線と、年齢として可能ならばβ刺激剤の前後のスパイロメトリー(呼吸機能検査)が実施されるべきである。

■ 他の検査は、通常、ルチーンには行われるべきではない。臨床セッティング、小児の臨床症状や徴候に基づき実施されるべきである(例えば、児は結核に曝露したときに結核の検査を行う)。

 

勧告/提唱の概要

1. ≦14歳の小児においては、少なくとも4週間の連日の咳嗽がある状態を慢性咳嗽と定義すると提唱する (Ungraded, Consensus Based Statement)。

2. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、咳嗽のある児だけでなく、家族からの影響を評価することが臨床的な診察として実施されるべきである (Ungraded, Consensus Based Statement)。

3. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、児に特有の咳嗽の取り扱い、プロトコルもしくはアルゴリズムを使用することを推奨する(グレード1B)。

4. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、咳嗽のの原因を決めるためには体系的なアプローチ(例えば、検証されたガイドラインを使用)を使用することを推奨する(グレード1A)。

5. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、咳嗽の特徴と関連した病歴に関係する管理を行ったり、それに関連した検査アルゴリズムに基づくことを推奨する(例えば、痰が多い/湿性咳嗽の存在の様な特異的な咳のヒントを使用する(グレード1A)。

6. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、咳嗽の病因に対する管理を基本とすることを推奨する。 症状が持続するという以外の特徴が持続しない限り、鼻副鼻腔症状、胃食道逆流症および/または喘息のため上気道咳症候群を治療することを目的とするエンピリカル(経験的)アプローチを使用してはならない(グレード1A)。

7.慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、エンピリカル治療が仮定した診断と整合した特徴に対して開始された場合、診断を確定するか、もしくは否定するかを確認するためには、限定した期間のエンピリカル治療でなければならない (Ungraded, Consensus Based Statement)。

8. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、胸部X線と、年齢が適切ならばスパイロメトリーを実施することを推奨する(β刺激剤の前後)(グレード1B)。

9. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、百日咳を臨床的に疑う場合、最近、百日咳菌感染したかどうかを評価する検査を実施することを推奨する (Ungraded, Consensus Based Statement)。

10. 慢性咳嗽に罹患した14歳以下の小児において、通常は、追加検査(例えば、皮膚プリックテスト、皮内テスト、気管支鏡検査、胸部CT)を実施しないことを推奨する。これらは、臨床的な状況と小児の臨床症状と徴候に基づき、個々の症例に区別をつけて実施されなければならない(グレード1B)。

11.慢性咳嗽と臨床的に疑われる喘息に罹患した>6歳かつ≦14歳の児において、気道過敏性検査(AHR)を考慮するよう推奨する(グレード 2C)。

 

結局、何がわかった?

 ✅小児の慢性咳嗽は4週間以上と定め、症状や病歴を重視し、検査はあくまで症状や病歴から考慮し、ルチーンには行わない。

 ✅β刺激薬による気道可逆性を重視し、前後でのスパイロメトリーを行う。

 ✅エンピリカル治療は期間を定めて行い、漫然と行わない。

 

慢性咳嗽を4週間以上をとらえて検査は定型的には行わず、病歴から選択して行うということ。

■ それぞれのステートメントは当たり前と言えることではありますが、忘れがちなことでもありましょう。

■ ただし、一般診療では気道過敏性検査はなかなか難しそうです。

■ もう一度頭にいれて診療したいと思いました。

 

 

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今日のまとめ!

 ✅小児の慢性咳嗽診療のポイントが発表された。慢性咳嗽を4週間以上をとらえて検査は定型的には行わず、病歴から選択して行うという、当然ではあるものの重要なステートメントと思われる。

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