Rabito FA, et al. A single intervention for cockroach control reduces cockroach exposure and asthma morbidity in children. J Allergy Clin Immunol 2017.[Epub ahead of print]
topic
■ 学会期間中ですが、また更新してみます。ざっくりとした読み方ですけど、、
■ 以前、環境整備を行っても、喘息症状は十分改善しないという報告をご紹介いたしました。
気管支喘息に対する環境整備は、治療薬を減少させるか?: ランダム化比較試験
■ この研究結果をよく見ると、環境中のダニの量が、明らかに本邦より少なく、ベースラインでのダニアレルゲン量(Der f1)がコントロール群0.06μg/g (0.05-0.08) 、介入群0.07 μg/g(0.06-0.09) でした。
■ 一方、最も多いアレルゲンであるゴキブリアレルゲンBla g 2は0.73μg/g (0.48-1.11)であり、ダニよりはるかに多いという結果です。
■ 地域によっての環境整備の相手は異なる可能性があると言えましょう。
■ 今回、ニューオーリンズでの検討で、ゴキブリの殺虫剤入りの餌により喘息が改善するかという研究結果です。
E: ゴキブリの殺虫剤入りエサを1回配置
C: エサなし
O: 12ヶ月間の患児の喘息症状は改善するか
結局、何を知りたい?
✅ニューオーリンズの中等症以上の喘息児の家庭で、ゴキブリ駆除で喘息症状が改善するかどうかということを知ろうとしている。
結果
■ 台所、リビングルーム、小児のベッドルームにそれぞれ6枚のフェロモン粘着トラップ(Victor Roach Pheromone Traps, Woodstream, Lititz, Pa)を計18枚配置した。
■ トラップは3日後に取り出され、ゴキブリが罠で捕まえられた家庭が、参加条件を満たした。
■ ゴキブリ感作は、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)かアメリカゴキブリ(Periplaneta americana)の特異的IgE抗体価0.35以上と定義され、ゴキブリ特異的IgE抗体価0.35KU/L以上が27%だった。
■ 餌は、Maxforce FC Magnum(Bayer Environmental Science, Research Triangle Park, NC; fipronil 0.05%) かAdvion (DuPont, Wilmington, Del; indoxcarb 0.6%)だった。
■ 12ヶ月の間に、6回家庭訪問され、喘息症状は2ヵ月毎に評価された。
■ 介入家庭は、対照家庭より、有意にゴキブリが少なくなった(罠で捕まえられるゴキブリの変化の平均 13.14; 95%CI、6.88-19.39; P < .01)。
■ 対照家庭の喘息児は、介入家庭に住んでいる喘息児と比較して、前2週間の有症状(オッズ比 1.82、95%CI、0.14-3.50、P = .03)と予定外受診率(オッズ比 1.17、95%CI、0.11-2.24、P = .03)が高く 、80%未満の予測FEV1である率が高かった(オッズ比 5.74; 95%CI、1.60-20.57; P = .01)。
結局、何がわかった?
✅ゴキブリがいることがわかった家庭で、ゴキブリの殺虫剤入りの餌を配置すると喘息児の症状が改善した。
コメント
■ New Orleans Roach Elimination Study (NO-Roach)と名付けられたスタディです。
■ 少なくとも、ニューオーリンズのゴキブリが多い家庭では、ゴキブリ駆除が喘息症状の改善に関与するとまとめることができます。
■ 海外の一部の地域では、特に都心の喘息患児では、ゴキブリ曝露は、重要な喘息トリガーになっていますが、ゴキブリ曝露を低下させると喘息が改善するかどうかは、わかっていませんでした。
■ これまでの研究は、多面的な介入を使用し喘息の改善を示していましたが、殺虫剤入りの餌(安価)の戦略的な配置は、毒性は低く、広く利用でき、12ヵ月にわたりゴキブリを持続に除去し喘息症状を改善したと述べられていました。
■ 以前ご紹介した環境整備によっても喘息症状が改善しなかったという結果と対照的といえます。
■ しかし、本邦ではダニが多くゴキブリは多くありません。すなわち、環境に応じ、力を入れるべき相手が違うといえるかもしれません。
今日のまとめ!
✅ゴキブリが多い環境でのゴキブリ駆除は、喘息症状の改善に有効である。