治療抵抗性の慢性咳嗽にジスロマックは効果があるか?

 Hodgson D, et al. The Effects of Azithromycin in Treatment-Resistant Cough: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Chest 2016; 149:1052-60.

 慢性咳嗽の治療にジスロマックは効果があるか?

■ 慢性咳嗽に関してはガイドラインがあり、皆さん参考にされていることと思います。

■ 一般には、慢性咳嗽の治療に抗生剤の効果はありませんが、副鼻腔炎や百日咳・マイコプラズマ感染の場合には使用すると言えましょう(現実的には、百日咳・マイコプラズマに対し、抗菌薬で咳嗽期間は短くならないようですが)。

■ 今回は、ジスロマックが慢性咳嗽の期間を短縮するかどうか検討した報告をご紹介いたします。

 

 

 慢性咳嗽患者44人に対し、ジスロマック8週間とプラセボ8週間投与で改善するかどうかを検討。

背景

■ 慢性咳嗽は世界的に共通の臨床的問題である。

■ 多くの患者は、喘息、胃食道逆流、鼻炎のような基礎疾患を有するが、多くはこれらの治療にもかかわらず症状は治まらない。これらの群に対する治療には新しいアプローチが必要である。

 

方法

■ 我々は、44例の治療抵抗性咳患者に対し、アジスロマイシン250mgを週3回×8週間の投与が、レスター咳嗽アンケート(Leicester Cough Questionnaire ;LCQ)スコアに影響するかどうかを確認するために、無作為二重盲検プラセボ対照試験を実行した。

■ 咳嗽重症度の視覚的アナログスケール(VAS)と呼気中一酸化窒素をセカンダリアウトカムとして測定した。

 

結果

アジスロマイシン群(変化の平均 2.4; 95%CI 0.5〜4.2)では、プラセボ群(変化の平均 0.7; 95%CI -0.6〜1.9)に比較してLCQスコアの臨床的に重要な改善が認められたが、群間に統計学的に有意差は認めなかった(P = .12)

■ セカンダリアウトカムは、いずれも群間に有意差はなかった。

 

論文から引用。ジスロマック群、プラセボ群で慢性咳嗽の改善に有意差なし。

 

■ レスポンダーのサブ​​グループを確認すると、慢性咳嗽と喘息を併発していた群では、アジスロマイシンで介入した群でLCQスコアが有意に改善していた(平均6.19、95%CI 4.06〜8.32)。

論文から引用。喘息既往のある場合は慢性咳嗽の改善に有意差あり。

 

結論

■ 8週間の低用量アジスロマイシンによる治療は、プラセボと比較してLCQスコアの有意な改善が認められなかった。

■ 治療抵抗性の慢性咳嗽に対してのマクロライドの使用は、この研究から推奨できないが、喘息に関連する慢性咳嗽に対しては治療の価値がある可能性がある。これはさらなる研究に値する。

 

結局、何がわかった?

 ✅慢性咳嗽患者に対しジスロマック週3回×8週間内服しても、プラセボと比較して改善は認められなかった。ただし、喘息患者で検討すると咳嗽が有意に軽減した。

 

 

 ジスロマックは慢性咳嗽に有意な効果はないが、喘息患者には効果があるかも。

■ 以前、非好酸球喘息の増悪を防ぐという報告をご紹介しました。

ジスロマックは非好酸球性喘息の悪化を防ぐ?(AZISASTスタディ)

■ この結果からも、少なくとも咳嗽に対してジスロマック(この場合、”マクロライド系抗生物質"と言い換えてもいいでしょう)は、慢性咳嗽に積極的に処方するものではなく、フェノタイプを確認する必要があるでしょう。

 

 

今日のまとめ!

 ✅慢性咳嗽に対し、ジスロマックは有意な効果はないが、喘息患者はその限りではないかもしれない。

 

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