生物学的製剤による難治性喘息治療のパラダイムシフト~米国で承認された生物学的製剤(第3回/全3回)

Katial RK, et al. Changing Paradigms in the Treatment of Severe Asthma: The Role of Biologic Therapies. J Allergy Clin Immunol Pract 2017; 5:S1-s14.

 

 難治性喘息と生物学的製剤。

■ 難治性喘息に対するバイオマーカーと生物学的製剤に関するレビューの3回目です。

■ 1回目は難治性喘息の置かれている状況に関してでした。

■ そして2回目は難治性喘息を治療するための生物学的製剤を選択をするバイオマーカーに関する話題でした。

■ 今回はいよいよ生物学的製剤の話題です。なお、元文献はあくまで海外のものですので、今回提示している生物学的製剤が必ずしも本邦で使えるものではないことをご留意ください。

 

 

 さまざまな生物学的製剤

抗IgE療法

■ 抗IgE治療薬であるオマリズマブは中等症から重症喘息の治療薬として承認されている。そして、最も一般的な有害事象は鼻咽頭炎、頭痛、呼吸器感染症、副鼻腔炎だった。

■ しかし過敏反応はまれであり、アナフィラキシーはオマリズマブで治療された患者の0.14%であり、対照群では0.07%であった(J Allergy Clin Immunol Pract. 2014; 2: 525–536.e1)。

■ オマリズマブは悪性腫瘍のリスク増加と関連していなかったことも示されている(J Allergy Clin Immunol. 2014; 134: 560–567.e4)。

 

 

抗IL-5療法

■ 今日まで、2種類の抗IL-5療法(メポリズマブおよびレスリズマブ)が承認され、1種類(ベンナリズマブ)が第3フェーズで進行中である。

 

メポリズマブ

メポリズマブは、組換えヒト化IgG1κモノクローナル抗IL-5抗体である。メポリズマブは、好酸球細胞表面上に発現しているIL-5受容体複合体のα-サブユニットへのIL-5結合を阻害し、好酸球の増殖、分化、動員、活性化および生存を阻害する。

■ 2015年に承認されたメポリズマブは、重症好酸球性喘息を有する12歳以上の患者の追加の維持療法である。メポリズマブは、4週間毎に100mgの皮下投与される(表III)。

■ メポリズマブの初期の研究は、気道過敏性に対して有効性を実証できていなかったが(Lancet. 2000; 356: 2144–2148)、喘息が好酸球性である可能性が高い患者に重点を置いた臨床試験では、悪化を軽減して喀痰および血液好酸球数を減らすのに効果的であることが示された

■ また、喀痰および血液好酸球によって難治性喘息の治療におけるメポリズマブの可能性が検討され(N Engl J Med. 2009; 360: 985–993)、喀痰中好酸球増加(>3%)していて前年に少なくとも2回の増悪を起こしている患者における参加者の増悪リスクを減少させた(相対危険度[RR]0.57; 95%信頼区間[CI] 0.32-0.92; P = .02)。

■ しかし、メポリズマブは、気管支拡張薬の使用後のFEV1の改善や気道過敏性には効果がなかった。しかし、高用量ICSの使用にもかかわらず再発性に喘息増悪する患者において増悪率および好酸球性炎症の徴候(末梢血で少なくとも150細胞/μL)を減少させた(N Engl J Med. 2014; 371: 1198–1207)。

■ 最近のメタアナリシスは、メポリズマブが有意に、入院(RR、0.49; 95%CI、0.30-0.80; P = .004)と入院/救急外来受診(RR、0.49; 95%CI、0.33-0.73; P < .001)を、プラセボと比較して減らすと報告した。(J Allergy Clin Immunol. 2016)

* 管理人注; この論文は当ブログでもご紹介いたしました。

■ メポリズマブにはOCSを減量する効果があり好酸球性喘息患者でFEV1を改善することを証明した。しかしながら、低用量(100mgSC)は約50%の患者で痰好酸球増加を抑制せず、痰好酸球増加が抑制される患者と比較するとプレドニゾンの抑制効果が少ないことが示された(Clin Exp Allergy. 2016; 46: 793–802)。

論文から引用。

レスリズマブ

レスリズマブは、好酸球細胞表面上に発現されるIL-5受容体複合体のα-サブユニットへのIL-5の結合を阻害するヒト化IgG4κモノクローナル抗IL-5抗体である。レスリズマブの有効性と安全性は、BREATHプログラムと総称される第3フェーズ無作為化比較試験で確立されている(Eur Respir J. 2014; 44: 4673)。

ベンラリズマブ

ベンラリズマブは、現在フェーズ3にある抗IL-5療法である。IL-5受容体のα-サブユニットに高親和性で結合し、好酸球の増殖および活性化を阻害する一方、同時にナチュラルキラー細胞上のFc受容体FcγRIIIaに結合するヒト化アフコシル化組換えIgG1κモノクローナル抗体である抗体依存性細胞媒介性細胞毒性を介しアポトーシスを誘導することにより、好酸球を効率的に枯渇させる。

* 管理人注;ベンラリズマブに関する報告も、すでに当ブログで紹介いたしました。

 

抗IL-4/13および抗IL-13療法

■ IL-4またはIL-13受容体を標的とする薬剤が開発中であり、患者のサブグループ群において喘息による罹患率を低下させる。

 

デュピルマブ

デュピルマブは、タイプ2受容体の一部であるIL-4受容体α(IL-4Rα)サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体である(IL-4とIL-13により活性化されるヘテロ二量体レセプター複合体)。

■ デュピルマブによる治療は、喘息(N Engl J Med. 2013; 368: 2455–2466)(Lancet. 2016; 388: 31–44)、ならびにアトピー性皮膚炎(N Engl J Med. 2014; 371: 130–139)(Lancet. 2016; 387: 40–52)、および鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎( JAMA. 2016; 315: 469–479)において検討されている。

* 管理人注; デュピルマブのアトピー性皮膚炎に対する効果に関して、すでに当ブログでご紹介いたしました。

 

 

抗IL-13療法

レブリキズマブおよびトラロキヌマブ

■ 抗IL-13療法であるレブリキズマブとトラロキヌマブの研究は進展していない。

 

他の潜在的なターゲット

■ 他のいくつかの新規な治療方法が出現しており、喘息患者のサブグループにおいては潜在的に強力な効果があるかもしれない。

 

考察と結論

■ 多くの生物学的療法が承認されるにつれて、臨床医は、個々の患者にとって理想的な治療選択肢を決定するには、各生物学的製剤のターゲットおよび作用機序を理解する必要があるが、多くの疑問点が残っている。

■ 現在のガイドラインは、重症度の評価と治療法への段階を追ったアプローチを使用している。しかし、生物学的製剤療法の到来は、フェノタイプ、エンドタイプ、おそらくジェノタイプをに基づくテーラーメード治療という新しいパラダイムを要求している(図3)。

図3。論文から引用。

 

■ また、患者のエンドタイプとフェノタイプをより特徴づける方法と、個々の患者に最も適切な治療法を選択する方法についても多くの疑問が残っている。認識された知識にギャップがあるにもかかわらず、難治性喘息の患者を治療する場合は個別化されたアプローチが第一歩であり、依然として臨床医の評価のために重要な部分といえる。

 

 

結局、何がわかった?

 ✅様々な生物学的製剤、抗IgE治療薬であるオマリズマブ、抗IL-5療法であるメポリズマブ・レスリズマブ・ベンラリズマブ、IL-4またはIL-13受容体を標的にするデュピルマブ、抗IL-13療法であるレブリキズマブとトラロキヌマブがある。

 ✅患者のエンドタイプとフェノタイプをより特徴づける方法はまだ不十分であるが、難治性喘息の患者を治療する場合は個別化されたアプローチが第一歩である。

 

 

 喘息患者のPrecision Medicineは始まったばかり。

■ 全文ではありませんので、よくお伝えできていない部分があるかもしれませんが、3回にわたって、難治性喘息とバイオマーカー、そして生物学的製剤のレビューをお届けしました。

■ 今後、Precision Medicine(精密医療)は、さらに進化していくことになるでしょう。

■ 生物学的製剤は極めて高価な薬剤です。患者さんごとの特徴を把握し、分類し、より効果のある治療法を選ぶことで、医療費をより効率的に使うということが求められることになると考えられます。

■ このブログは、診断、病因、治療、予後、そして予防に分けて論文を紹介してきました。Precision Medicine(精密医療)の観点から、再度とらえてみるといいなと考えた次第です。

 

 

今日のまとめ!

 ✅バイオマーカーによるフェノタイプ分類により生物学的製剤を使用する難治性喘息の治療は実用段階に入っているものの、そのフェノタイプ分類のためのバイオマーカーの研究は途中段階である。

 ✅今後、Precision Medicine(精密医療)に進んでいくことは避けられない状況である。生物学的製剤の効果がどんな機序で効果が出るのかを把握する必要があるだろう。

 

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