【部分訳】食物経口免疫療法総論(第4回/全4回):安全性・補助療法

Wood RA. Oral Immunotherapy for Food Allergy. J Investig Allergol Clin Immunol 2017; 27:151-9.

食物経口免疫療法の第4回。安全性と補助療法に関してです。

■ すこし間が空きましたが、経口免疫療法(OIT)の総論を翻訳した第4回目です。以前の記事は、以下をご覧ください。

■ OITも治療である以上、リスクを最小限にする必要性があり、研究が進められています。

■ 後半、長々と私の考えたことなどを書いてしまいました。そのため、今回はとっても長い記事です。私の話は、一医師の現在考えている感想としてご笑覧いただければ幸いです。

 

 安全性の向上に向けて。

経口免疫療法(OIT)の安全性

■ 副作用はOITでは一般的であり、これまでに研究された各食物において、全体的な確率は似通っている。

■ 副反応は一般的に軽症であり、口腔そう痒感などの局所的症状が最も一般的である。腹痛は治療から脱落する最も一般的な症状であり、喘鳴、嘔吐、蕁麻疹などの中等症の副反応が、小さいながら全用量において起こりうる。

■ しかし、長期間にわたり毎日投与されていることから、各患者のリスクは高く見積もられる。例えば、乳児OITの研究では、参加者の47%が治療過程において中等度の副反応を呈した

■ アドレナリンおよびβ-刺激剤による治療を必要とするより重篤な副反応は、摂取用量の漸増フェーズに最もよく見られるが、維持療法中にも起こり得る。Wassermanらは、352人に対するピーナッツOIT実施中に、アドレナリンを必要とする95回の副反応が起こったと報告している。

■ 特に、感染、運動、不安、アレルゲン同時曝露などの補助因子に関連し、それまで耐性を示していた用量でも、とても重篤な副反応が予期せず発生する

■ これらの治療法を実臨床に導入する場合に大きな障害となるのは、OITに耐えられない患者の割合が高いことである。全体として、参加者の10-20%がOIT研究から脱落し、36%という高率であるという検討もある。

■ アナフィラキシーまたは他の急性の副反応により脱落する参加者もいるが、脱落の多くは慢性の腹痛によるものである。

■ これらの症例の中には好酸球性食道炎が報告されており、診断されていない疾患がどの程度OIT治療中に合併する可能性があるかは明らかではない。

■ したがって、有害反応を最小限に抑えることに向けた研究は更に必要であり、これらの治療を臨床的使用に向けて前進させるために非常に重要である。

 

補助的治療

■ 安全性および/または有効性の両方を改善することを目的とし、OITに対し補助療法が研究されている。

■ 牛乳とピーナッツOITにオマリズマブを併用した2件のパイロット研究が報告されている。オマリズマブを併用しした場合、有害事象は比較的よく認められたにもかかわらず、OITによる用量はより急速に増量できる場合があることが示唆された。

■ さらに、オマリズマブにより副作用が減るかどうかを研究した2件の最近のランダム化試験がある。

■ まず、Woodらは、オマリズマブまたはプラセボを追加する、オープンラベル牛乳OITを実施した。治療完了時に、10gOFCで確認したところ、オマリズマブ群88.9%、プラセボ群71.4%が脱感作した(P = 0.18)。さらに、2ヵ月後、オマリズマブ群で48.1%、プラセボ群で35.7%のSUが示された(P = .42)。OITにおける用量増量中の有害反応は、投与に対する症状の割合(2.1%対16.1%、P=.0005)、治療を必要とする用量関連反応(0.0%対3.8%、P=.0008)、維持療法を達成する用量(198 vs 225、P=.008)で、有意に低下した。著者らは、オマリズマブは安全性の改善をもたらすが、OITの有効性は改善しないと結論付けた

■ 2つめの研究は、オープンラベル・ピーナッツプラセボ対照OIT研究に、オマリズマブを使用した。オマリズマブを12週間使用し、その後ピーナッツタンパク質250mgまでの急速免疫療法を実施され、さらに2000mgまで増量された。最初の急速免疫療法時に耐性を示したピーナッツ摂取量の中央値は、オマリズマブ群250mgであったのに対し、プラセボ群22.5mgだった。続いて、オマリズマブ中止後6週間後も、オマリズマブ群79%、プラセボ群は12%がピーナッツタンパク質2000mgに耐性を示した(P <.01)。そして、オマリズマブ投与群ではプラセボ群より有意に多くのピーナッツを摂取したにも関わらず、プラセボ群とオマリズマブ群での副反応率は同様だった(オッズ比 0.57、P = .15)。著者らは、オマリズマブは、ピーナッツアレルギー患者を迅速に脱感作することができ、多くの患者が、オマリズマブが中止された後も脱感作が持続すると結論付けた

■ プロバイオティクスは、吸入アレルゲン免疫療法におけるアジュバント効果があることも示唆されている。

■ Tangらは、この概念を、ピーナッツOITに対し、プロバイオティクスであるLactobacillus rhamnosusをまたはプラセボに追加する研究により、食物免疫療法に拡大した。プライマリアウトカムは、OITを中止してから2~5週間後に誘導されたSUであり、OIT群の82.1%、プラセボ群3.6%が達成した。これらの結果は、プロバイオティクスの追加治療がプラセボ対照研究ではないこと、治療期間が2週間と短いことにより制限されるが、他の研究で認められたSU率より高かったため、プロバイオティクスが免疫療法の効果を高める可能性がある。

■ インターフェロンγ、ケトチフェン、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LRTAs)といった他の補助療法を用いた、症例報告や小規模のオープン試験が実施されている。

■ 2013年に、ピーナッツOITを受けた6人に対するランダム化シングルブラインドプラセボ対照試験により、ケトチフェン2mg1日2回の前投与が、OIT中の胃腸症状の発生率を低下させる可能性があると報告されている。さらに、Takahashiらは、5人の小児に対するレトロスペクティブ研究において、OITにmontelukastを使用し、ロイコトリエン受容体拮抗薬が目標用量に達するのを補助するようにみえる研究を実施した。

■ これら可能性のある補助療法はそれぞれ、さらなる研究を必要とする。

 

今後の検討事項/要約

■ 食物アレルギーは一般的であり、生命を脅かす可能性がある。患者や医療システムにおける食物アレルギーは重大な影響を与えるにもかかわらず、厳格な除去以外に食物アレルギーにおける承認された治療法は現在のところ存在しない

■ 乳、卵、ピーナッツにおけるOITは脱感作に一貫した成功を示したが、現段階の研究結果は、より持続性の耐性は明らかではない。

OITにより誘導された免疫学的変化の理解を改善し、反応性を示すバイオマーカーを特定するためには、さらなるメカニズムの研究が必要である。

OIT中の有害事象は一般的であり、安全性は重大な懸念事項であり、一部の患者でその使用が制限される。OITに、改変された食物アレルゲン、プロバイオティクス、他の免疫調節剤療法などの新規療法を導入することを、安全性および有効性の両方を改善するという目的で進行中である。

■ それが一般的な臨床実践で実現することができる前に、大規模で上手に設計されたランダム化プラセボ対照試験が、OITの有効性および短期/長期の安全性を判断するために必要とされている。

 

結局、何がわかった?

 ✅OIT中の有害事象は一般的であり、安全性は重大な懸念事項である。特に、感染、運動、不安、アレルゲン同時曝露などの補助因子に関連し、それまで耐性を示していた用量でも、重篤な副反応が予期せず発生する場合がある。

 ✅オマリズマブ(ゾレア)や、プロバイオティクスに併用など安全性の改善をもたらすための検討が続けられている。

 

 

 このレビューを通して、色々考えました。

経口免疫療法(OIT)の安全性向上に向けて、考えたこと。

■ 経口免疫療法(OIT)の安全性向上に向けて、多くの研究が行われていることは良くお分かりになるかと思います。

■ 一方で、感染、運動、不安、アレルゲン同時曝露などの因子が加わることで、耐性を示していた用量でも、重篤な副反応が予期せず発生するとされており、注意を要します。ただし、「同時曝露」は、アレルゲンを複数使用した免疫療法ではリスクが上がらないことが示されています。この場合の「同時曝露」とは、抗生剤や解熱剤などを想定しているかもしれません(これらはアレルゲン摂取時の症状を増強させる可能性があります)。

■ また、先日の有害事象後の発表の様に、喘息などの併存疾患も大きなリスクになります。喘息や皮膚状態を安定した状態に保つことはとても重要と考えています。私の患者さんは、私が「皮膚をつるつるにできていない時期は食べていくことはすすめない」「喘息の既往程度でも、喘息治療を行う」「喘息治療は一般的な治療の一段上をしておく」といった話をしつこくするので、うんざりされているかもしれません。でも、「安全性」を優先できなければ、この治療には踏み込んではいけないと思っています。この経口免疫療法は、とても条件の厳しい治療と思っています。私の行っている経口免疫療法は、とてもゆっくりなので、「栄養指導」の範囲とも言える程度かもしれません。特に、重症のお子さんは、負荷試験の上で極微量を定量で行っていることが多く、特に、重症と思われる牛乳アレルギーのお子さんに感しては、無理せず負荷試験を行いながら低アレルゲンミルクなどを定量で摂取していただいていることが多いです。それでも、無理をしないようにいつも考えています。おそらく保護者の皆さんは、「まだ増やさないのか」と思っていらっしゃるかもしれません。

■ そのようにゆっくりの治療でも、これらの沢山の知識が必要です。食物アレルギーの治療は、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎といった治療の上に積み上げるものです。そして、抗原の特性、そのアレルゲンの低アレルゲン化の方法、その他のアレルギーの知識を総動員する必要があります。その度に説明が随時必要になりますし、外来の時間はいくらあっても足りませんし、とても意識を集中して行わなければなりません。多くの患者さんの診療が終わったときは、少し足がふらつくくらいです。

■ それらを行って、ようやく最後まで脱感作(食べていれば維持できる)段階に達しても、その後は維持して摂取いただく必要性があります。中断すればまた多くはアレルギーが再燃する可能性があるからです。

■ 長期間継続すればするほど耐性(自由に摂取しても問題ない)に近づくことは示されるようになりました。

■ しかし、それまで「食べてはいけなかったお子さん」が、「食べなければならない」に変わった時、果たして長期間摂取してくれるでしょうか?負荷試験陰性で解除を指示されたお子さんでさえ、半年後には11%は摂取しなくなっているという結果もあります。

■ 特に、年齢が高くなってから開始すると、継続できない場合が多いように感じます。すでに「除去食」でも生活の質(QOL)がいい場合は、無理に開始する必要もないのかもしれません。治療がでてきたからといって、全ての患者さんがそれを求めているわけではなく、かえってQOLを下げてしまう可能性に対して、我々は無頓着ではいられません。

 

経皮免疫療法(EPIT)と舌下免疫療法。

■ 一方、経皮免疫療法(EPIT)が、安全性を担保する可能性が出てきました。しかし、本当に「日常量まで増量できるかどうか」は、まだ十分わかっていません。EPITで十分なデータはまだ極めて少なく、1年間のピーナッツによる検討を元に議論されているのみです。現状のデータは「食べられる量(閾値)が10倍以上になったか」が目標量になっており、結局、1年間の治療でも中央値でピーナッツ半粒程度までしか摂取できていません。

■ また、EPITは、直接食べているわけではないので、栄養指導をすることはできませんし、11歳以上では効果も認められていません。

■ 除去食が続けば、それだけ栄養的な懸念も大きくなります。

■ 一方、EPITも、長期間継続すれば、徐々に効果が上昇するようで、相当食べられるようになっているという情報もあります。しかし、この研究結果には、私は少し疑問もあります。やたら急に食べられるようになっている方がいらっしゃるのです。これはEPITの効果が、途中から急にあがるちう可能性もありますが、私は、「途中から参加者が少しずつピーナッツを食べている」可能性もあると思っています。すなわち、研究参加者の判断で、EPITからOITにチェンジしている方がいるのではないか?という勘ぐりです。EPITは、二重盲検とはいえ、貼付している場合は参加者自身にもわかってしまう場合があるからです(局所の反応はほとんどでてしまう)。

■ 私は、EPITは、安全な治療導入や、摂取できるようになってからの維持に使うことができればいいと思っています。私は、新しい治療に飛びつくことは控えていますが、一つの治療にこだわらないですし、柔軟に新しい話題も取り入れることも重要と思っています。もちろん、EPITが安全性が高く、それだけで治療が完結できるような治療に育っていけば、私もとてもうれしいです。

■ EPITとOITの間に来る中間的な治療として、舌下免疫療法(SLIT)があります。SLITも発展してくれば、さらに心強いと思っています。EPITやSLITは、今後標準的な製剤が作成される可能性もあります。

 

OITには、様々な安全性対策と食物の知識が必要になります。

■ また、低アレルゲン化された食物による治療も、今後注目されてくるでしょう。食物の低アレルゲン化の知識はとても重要です。

■ さらに、日常量までは治療を完遂出来ないかもしれませんが、少量で定量継続するのも、一つの方法となってくるでしょう。

 

最後に。

■ このWood先生の論文を読みながら、多くのことを考えさせていただきました。

■ アレルギー専門医は平成25年8月現在、3235 名います。しかし、そのうち経口免疫療法を実施しているのは、ごく一部の医師です。今回の有害事象の発生により、この治療から撤退する方もいらっしゃるかもしれません。この食物アレルギーという難題に取り組む医師は、さらに一部の医師になってくるかもしれません。そうなってくると、今後の治療の門戸は狭まってくるのかもしれません。実際、私も外来をこなすことがとても厳しくなってきています。今回の有害事象で、多くの地域での食物アレルギー診療が破綻を迎えないかどうかの懸念を持っています。杞憂に終われば、私もうれしいですが、現状でも、誤食で致命的な症状を起こすひとがいらっしゃることもまた、厳然たる事実です。

■ 経口免疫療法に関して、一緒に考える機会になれば嬉しく思います。私も悩みながら、食物アレルギーに立ち向かっていきたいと考えています。

 

 

 

今日のまとめ!

 ✅食物経口免疫療法の安全性向上のための研究結果をご紹介した。