経皮免疫療法(EPIT)の第II相試験

Sampson HA, et al. Effect of Varying Doses of Epicutaneous Immunotherapy vs Placebo on Reaction to Peanut Protein Exposure Among Patients With Peanut Sensitivity: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2017; 318:1798-809.

 経皮免疫療法の第II相試験の結果が公表されました。

■ 学会中ですが、現在注目されているEPIT(経皮免疫療法)の第II相試験が公表されているのを、Sampson先生のご講演を聞いていて知りました。

■ すでに、EPITは第I相以降、いくつかの報告が出てきています。

経皮的ピーナッツ免疫療法: 第I相試験

ピーナッツ経皮的免疫療法(EPIT)は有効である: ランダム化比較試験

■ そこで、早速(Abstractだけですが)、読んでみました。

■ 学会はとても楽しいです!でも、宿のデスクライトはチラつくし、電灯は暗いし、値段はボラれるし、その中でブログ更新しています!

 

 221人のピーナッツアレルギーに対し、異なる量でEPITを実施した。

重大性

■ Epicutaneous immunotherapy(EPIT;経皮免疫療法)は、ピーナッツアレルギー治療の可能性を秘めている。しかし、前臨床試験と初期の臨床試験しか評価されていない。

 

目的

■ 最適用量、有害事象(AE)、およびピーナッツアレルギー治療に対するピーナッツEPITの有効性を調査する。

 

計画、セッティング、参加者

■ フェーズⅡの二重盲検プラセボ対照・用量変更の試験である。

■ 22の医療センターからピーナッツアレルギー患者(6〜55歳)が参加し、2年間のピーナッツEPITのオープンラベル試験を実施した(2012年7月31日〜2014年7月31日予定、2016年9月29日に延長し完了)。

■ 221人は、ピーナッツに感作され、ピーナッツタンパク質300mg以下の二重盲検プラセボ対照負荷試験で陽性だった。

 

介入

■ 無作為に割り当てられた患者(1:1:1:1)は、50μg(n = 53)、100μg(n = 56)、250μg(n = 56)のピーナッツタンパク質EPITまたはプラセボパッチ(n = 56)を実施された。

■ 12ヶ月間毎日パッチを使用後、患者は二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を実施され、誘発閾値の変化を確定した。

 

プライマリアウトカムと測定

■ 有効性におけるプライマリエンドポイントは、12ヶ月後での各群とプラセボ群の治療反応率(誘発閾値:ピーナッツタンパク質10倍以上および/または1000mg以上)だった

■ セカンダリエンドポイントには、年齢別および治療中に発生した有害事象(treatment-emergent adverse events TEAE)に対する反応率だった。

 

結果

無作為化された221人(年齢中央値、11歳 [四分位1、四分位3:8,16]、女性37.6%)のうち93.7%が試験を完了した。

12ヵ月後、250μg群(n = 28; 50.0%)とプラセボ群(n = 14; 25.0%)に有効率に有意差が認められた(差25.0%、95%CI 7.7%-42.3%; P = .01)

■ プラセボパッチ群と100μgパッチ群には有意差は見られなかった。

■ 統計試験階層分類上の原則のため、50μgのパッチは、プラセボと比較されなかった。

■ 年齢別の相互作用は、250μgパッチ群においてのみ有意であった(P = .04)。

6~11歳群において、250μg群(n=15; 53.6%)とプラセボ群(n=6; 19.4%)における反応率の差は、 34.2% (95% CI, 11.1%-57.3%; P=. 008)であった。

若年成人/成人は、250μg群(n=13; 46.4%)とプラセボ群(n=8; 32.0%)において有意差を認めなかった(差14.4% [95% CI, 11.6% to 40.4%; P=. 40]).

■ 用量関連性の重篤なAEは観察されなかった。

■ 1回以上のTEAE(主に局所的皮膚反応)を有する患者の割合は、各群で同程度だった(50μg群= 100%、100μg群= 98.2%、250μg群= 100%、プラセボ群= 92.9%)。

■ 全体の平均遵守率は1年後に97.6%だった。治療関連AEによる脱落率は0.9%であった。

 

結論と妥当性

■ ピーナッツアレルギー患者に対するこの用量範囲試験では、ピーナッツパッチ250μgは12ヶ月間の治療で、プラセボパッチより有意に治療効果を示した。これらの所見は第III相試験を必要とする。

 

結局、何がわかった?

 ✅12ヶ月間のピーナッツEPIT(経皮免疫療法)において、250μg群のみ有効性があった。

 ✅有害事象は皮膚症状が主であり軽かった。

 ✅しかし、6~11歳群での有意な効果は認められたものの、11歳以上では有効性は認められなかった。

 

 

経皮免疫療法(EPIT)はさらに発展するでしょう。ただ、限界もあるかもしれません。

■ EPITは、安全性が高く、また、アドヒアランスも良い、注目されている方法です。

■ EPITに関する有効性は、ピーナッツタンパク質の負荷試験閾値が10倍以上および/または1000mg以上とされており、閾値の10倍以上のクリアがメインです。すなわち、「普通に食べられる」という結果を求めていません。

■ また、年齢が高くなると効果は限られるようです。

【全訳】経皮免疫療法(EPIT)の有用性と限界は?

■ 今後の改良の余地はあると言えそうですが、さらに発展すれば、もしかすると経口免疫療法にとってかわる、もしくは補佐することにとても有効かもしれません。

 

 

 

今日のまとめ!

 ✅EPITは有効で安全性も高い。しかし、目標はあくまで摂取量の増加となっており、「日常摂取量」が目標にされていないことや、有効な年齢も限定されていることに弱点もある。

 

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