インフルエンザワクチンは、子どもの死亡率を低下させるか?

 子どもへのインフルエンザワクチンの有効性に関しての検討。昨日は入院率、そして今回は死亡率への効果に関する検討をご紹介します。

■ 昨日、「インフルエンザワクチンは、子どもの入院率を減らすか?」という論文をご紹介しましたが、そのあと、Pediatricsに、インフルエンザワクチンが死亡率を減らすかどうかの論文が発表されているのを見つけました。

 

Flannery B, et al. Influenza Vaccine Effectiveness Against Pediatric Deaths: 2010-2014. Pediatrics 2017; 139.

米国による3つのコホートを使用して、インフルエンザワクチンが小児のインフルエンザ関連の死亡率を低下させるかどうかを検討した。

背景と目的

■ 2004年以来、検査で確認したインフルエンザに関連した小児の死亡におけるサーベイランスでは、大部分の死亡は未接種の小児に起こることが示されている。

■ そこで、インフルエンザワクチン接種が小児および青年のインフルエンザ関連死のリスクを低下させるかどうかを評価した。

 

方法

■ インフルエンザワクチン接種に関し、3つの米国の小児および青年の比較コホートを使用した(National Immunization Survey–Flu [NIS-Flu]、National Health Interview Survey [NHIS]、 MarketScan Commercial Claims and Encounters database [Truven Health Analytics, Ann Arbor, MI])。

■ これら米国における小児コホートにおいて、検査で確認したインフルエンザ関連の小児死亡数と、推定ワクチン接種率とを比較する、症例集団分析を実施した。

■ ワクチン接種したケースとハイリスクであるという状況は、ケースを調査することによって決定された。

■ インフルエンザワクチン接種率は、全国調査データまたは国民保険請求データベースから得た。

■ 比較コホートにおける、ケース間の予防接種のオッズを、予防接種のオッズと比較するというロジスティック回帰により、オッズ比を推定した。

■ さらに、ベイズ法を用いて、(1-オッズ比)×100として計算された、ワクチン有効性(Vaccine Effectiveness;VE)の95%信頼区間(CI)も計算した。

 

結果

2010年7月から2014年6月まで、6ヶ月から17歳までの小児における、検査で確認したインフルエンザ関連の小児の死亡が358件報告された

■ ワクチン接種の状態は291死亡について確認され、75人(26%)がインフルエンザ発症前にワクチン接種を受けていた。

■ 調査群におけるワクチン接種率は平均48%だった。

インフルエンザ関連の小児死亡に対するVEは全体で65%(95%CI、54%~74%)だった。

論文から引用。全体として、小児死亡に対するVE(ワクチンの効果)は65%。ただし、年齢やシーズンで差はある。

■ 基礎疾患のあるハイリスクの医学的状態であった小児における死亡153人のうち、47人(31%)がワクチン接種を受けていた。

ハイリスクである小児のVEは51%(95%CI、31%〜67%)であり、ハイリスクでない小児のVEは65%(95%CI、47%〜78%)だった。

論文から引用。ハイリスク児でVEは51%。ハイリスクでない場合は65%。

 

結論

■ インフルエンザワクチン接種は、検査で確認したインフルエンザに関連する小児の死亡リスクの低下と関連していた。

■ インフルエンザワクチン接種は、インフルエンザに関連する小児および青年の死亡を防ぐことができる。

 

結局、何がわかった?

 ✅インフルエンザ関連の小児死亡に対するワクチンの有効性(VE)は全体で65%(95%CI、54%~74%)だった。ただし、年齢・シーズンによってVEに差はある。

 ✅ハイリスクである小児のVEは51%(95%CI、31%〜67%)であり、ハイリスクでない小児のVEは65%(95%CI、47%〜78%)だった。

 

 

シーズン・年齢・基礎疾患の有無により差はあるものの、インフルエンザワクチンは、インフルエンザによる小児期の死亡率を低下させるといえます。

■ インフルエンザワクチンの有効性に関し、以前、本邦における検討をご紹介しました。

■ さらに、昨日、カナダにおける3シーズンの入院リスクを低下させる報告を示しました。

■ そして、今回、米国における3シーズンにわたる、死亡リスクを低下させる報告を御紹介しました。

■ これらでおおむね、「シーズンや年齢によっても差がでてくるものの、全体として、インフルエンザワクチンは、小児におけるインフルエンザによる入院や死亡のリスクを低下させるでしょう」と言っていいのではないでしょうか。

 

 

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今日のまとめ!

 ✅インフルエンザワクチンは、インフルエンザに関連した小児の死亡リスクを低下させる。

 

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