新型コロナ関連の最近の論文を、ざっくりまとめる
■ このブログはたいてい、ひとつの英文医学論文を翻訳して簡単にまとめています。
■ 私の勉強ブログですので、実際のところは日常的にさまざまな論文に目を通しています。
■ どちらかというと、アレルギー・小児科・感染症を中心に、私の興味を持っている、もしくは疑問に思ったテーマを勉強しているのですが、だいたいはざっくり目を通す→必要ならすこしだけ精読→さらに必要ならさらに精読というふうな流れです。
■ 今回はさまざまなオミクロンに対する、小児のワクチンの有効性に関する論文がかなり揃ってきたことから、全体をざっくり眺めたことを共有する回にしたいと思います。
イスラエル:5歳から11歳の小児のオミクロン株による新型コロナ感染に対する、モデルナワクチンの有効性
Cohen-Stavi CJ, Magen O, Barda N, Yaron S, Peretz A, Netzer D, et al. BNT162b2 Vaccine Effectiveness against Omicron in Children 5 to 11 Years of Age. N Engl J Med 2022;387:227-36.
イスラエル最大の医療機関において、2021年11月23日以降(オミクロン株流行中)にBNT162b2(ファイザー)ワクチン接種を受けた5歳から11歳の小児に対するオミクロン株への有効性を調査した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ カルテへの記録のあるVaccine effectiveness(ワクチン有効性)は、初回接種後14~27日で17%(95%信頼区間[CI]7~25)、2回目接種後7~21日で51%(95%CI 39~61)だった。
✅ 症状のある新型コロナに対するVaccine effectiveness(ワクチン有効性)は、初回接種後14~27日で18%(95%CI -2~34)、2回目接種後7~21日で48%(95%CI,29~63)だった。
論文から引用。
シンガポール:5歳から11歳の小児のオミクロン株による新型コロナ感染に対する、ファイザーワクチンの有効性
Tan SHX, Cook AR, Heng D, Ong B, Lye DC, Tan KB. Effectiveness of BNT162b2 Vaccine against Omicron in Children 5 to 11 Years of Age. N Engl J Med 2022;387:525-32.
オミクロン株流行期であった2022年1月21日から2022年4月8日にシンガポールの5歳から11歳の小児255,936人に対するBNT162b2(ファイザー)ワクチンの有効性を調査した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ ワクチン未接種の小児では,報告されたすべてのSARS-CoV-2感染、PCRで確認されたSARS-CoV-2感染、Covid-19関連入院の粗発生率は、それぞれ100万人・日あたり3303.5、473.8、30.0だった。
✅ 完全接種(2 回目接種後 7 日以上経過)群では、 Vaccine effectiveness(ワクチン有効性)はそれぞれ 36.8%(95% CI 35.3~38.2)、65.3%(95% CI 62.0~68.3)、82.7%(95% CI 74.8~88.2 )だった。
論文から引用。
米国:5歳から18歳の小児のオミクロン株による新型コロナ感染に対する、ファイザーワクチンの有効性
Price AM, Olson SM, Newhams MM, Halasa NB, Boom JA, Sahni LC, et al. BNT162b2 Protection against the Omicron Variant in Children and Adolescents. N Engl J Med 2022;386:1899-909.
米国23州の31病院において2021年7月1日から2022年2月17日(デルタ流行期・オミクロン流行期を含む)にCovid-19を発症した症例患者1185人と発症していない対照患者1627人に対し、症例対照試験陰性デザインを用いて、入院に至った新型コロナ症例に対する Vaccine effectiveness(ワクチン有効性)・重症Covid-19(生命維持装置の使用・死亡)のVaccine effectivenessを評価した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ デルタ優位の時期は、12~18 歳の Covid-19 による入院に対するVaccine effectiveness(ワクチンの有効性)は、接種後 2~22 週で 93%(95% 信頼区間 [CI], 89~95)、23~44 週で 92%(95% CI, 80~97)だった。
✅ オミクロン優位の時期は、12~18 歳(ワクチン接種からの間隔中央値 162 日)に対するVaccine effectivenessは、入院に対して 40%(95% CI,9~60)、重症 Covid-19 に対して 79%(95% CI,51~91)だった。
✅ オミクロン優位の時期、5~11 歳の小児の入院に対するVaccine effectivenessは 68%(95% CI 42~82; 接種からの間隔中央値 34 日)だった。
論文から引用。12歳から18歳の青少年におけるBNT162b2ワクチンの重症入院に対する有効性(5 歳から 11 歳の小児では、重症度別に層別化するには人数が不十分)。
米国:5~11歳・12~15歳のオミクロン株による新型コロナ感染に対する、ファイザーワクチンの有効性
Fowlkes AL, Yoon SK, Lutrick K, Gwynn L, Burns J, Grant L, et al. Effectiveness of 2-Dose BNT162b2 (Pfizer BioNTech) mRNA Vaccine in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Children Aged 5-11 Years and Adolescents Aged 12-15 Years - PROTECT Cohort, July 2021-February 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:422-8.
5~15歳・12歳~15歳の小児1,364人に対し、2021年7月25日から2022年2月12日に前向きコホートを実施、症状に関係なくSARS-CoV-2の検査とCOVID-19に関連した症状に関する調査を毎週実施した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ 5~11 歳の完全接種している児は、2回接種後14~82 日までのオミクロン株感染に対するVaccine effectivenessは 31%(95% CI = 9%~48%)だった。
✅ 12~15歳の児は、接種2回後14~149日のデルタ株感染に対して87%(95%CI=49%-97%)、オミクロン株感染に対して59%(95%CI=22%-79%)だった。
✅ オミクロン感染者のワクチン接種児は、オミクロン感染者のワクチン非接種者に比べて、病床で過ごす時間が平均して半日ほど短かった。
米国CDC:小児の新型コロナ感染に対する、ファイザーワクチンの有効性
Klein NP, Stockwell MS, Demarco M, Gaglani M, Kharbanda AB, Irving SA, et al. Effectiveness of COVID-19 Pfizer-BioNTech BNT162b2 mRNA Vaccination in Preventing COVID-19-Associated Emergency Department and Urgent Care Encounters and Hospitalizations Among Nonimmunocompromised Children and Adolescents Aged 5-17 Years - VISION Network, 10 States, April 2021-January 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:352-8.
2021年4月9日から2022年1月29日に米国10州の5~17歳のCOVID-19の症状がある39,217件の救急外来・緊急医療に受診し入院1,699件を調べ、症例対照試験陰性デザインを用いてVaccine effectivenessの推定した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ 5~11歳の児では、2回接種後14~67日にCOVID-19に関連した救急外来受診・緊急医療を受けることを予防するVaccine effectivenessは46%だった。
✅ 12~15歳および16~17歳の児では、接種2回後14~149日のVaccine effectivenessはそれぞれ83%・76%であり、接種2回後150日以上のVaccine effectivenessはそれぞれ38%・46%だった。
✅ 16~17歳の児では、Vaccine effectivenessは3回接種(ブースター接種)後7日以上経過すると86%に増加した。
✅ COVID-19に関連した救急外来・救急受診に対するVaccine effectivenessは、12~17歳の児において,オミクロン優位の時期にはデルタ優位の時期よりも大幅に低下し、オミクロン優位の時期には接種2回後150日以上になると有意な予防効果は認められなかった。しかし、16~17歳の児では、オミクロン優位の期間のVEが3回目のブースター接種後7日以上経過すると81%に上昇した。
イタリア:5~11歳の児におけるオミクロン感染・重症感染に対するファイザーワクチンの有効性
Sacco C, Del Manso M, Mateo-Urdiales A, Rota MC, Petrone D, Riccardo F, et al. Effectiveness of BNT162b2 vaccine against SARS-CoV-2 infection and severe COVID-19 in children aged 5–11 years in Italy: a retrospective analysis of January–April, 2022. The Lancet 2022;400:97-103.
5~11歳のイタリアの全児童を対象とし、2022年1月17日から4月13日まで全国サーベイランスとワクチン接種登録を連携しSARS-CoV-2感染・入院・死亡に至った感染に対するVaccine effectivenessを評価した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
5~11歳の児2965 918人のうち、2回接種を受けたのは1063 035人(35.8%)、1回のみ接種を受けたのは134 386人(4.5%)、未接種1 768 497人(59.6%)を対象にした。
✅ 2回接種群のVaccine effectivenessは、SARS-CoV-2感染に対して29.4%(95%CI 28-5-30-2)、重症COVID-19に対して41.1%(22.2~55.4)、1回接種群のVaccine effectivenessはSARS-CoV-2感染に対して27.4%(26.4~28.4)、重症COVID-19に対しては38.1%(20.9~51.5)だった。
✅ 感染に対するVaccine effectivenessは、2回接種後0~14日で38.7%(37.7~39.7)にピークを示し、2回接種後43~84日で21.2%(19.7~22.7)に減少した.
論文から引用:新型コロナ感染に対するBNT162b2ワクチンの有効性。
英国:ワクチン接種を受けた学齢期の小児および青年におけるファイザーワクチン接種後の感染率と症状
Molteni E, Canas LS, Kläser K, Deng J, Bhopal SS, Hughes RC, et al. Post-vaccination infection rates and modification of COVID-19 symptoms in vaccinated UK school-aged children and adolescents: A prospective longitudinal cohort study. The Lancet Regional Health - Europe 2022;19:100429.
2021年8月5日から2022年2月14日に、スマートフォンアプリを通じて報告された12~17歳の児 115,775人のデータを分析した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ ワクチン接種により,感染リスクが低下した(14~30 日後にデルタ流行期 80.4%(95% CI 0.82 ~0.78)、オミクロン流行期 53.7%(95% CI 0.62~0.43)、61~90 日後にデルタ流行期 61.5%(95% CI 0.74~0.44)、オミクロン流行期 63.7%(95% CI 0.68 -0.59))。
✅ デルタ流行期にSARS-CoV-2に感染したワクチン接種児はワクチン未接種の児より軽症だった。
米国:オミクロン優勢時の小児におけるファイザーワクチン接種と新型コロナ感染との関連
Fleming-Dutra KE, Britton A, Shang N, Derado G, Link-Gelles R, Accorsi EK, et al. Association of Prior BNT162b2 COVID-19 Vaccination With Symptomatic SARS-CoV-2 Infection in Children and Adolescents During Omicron Predominance. Jama 2022;327:2210-9.
2021年12月26日から2022年2月21日まで、全米の薬局ベースの新型コロナ検査6897件のデータ(5歳から11歳の児の74 208検査+12歳から15歳の児47 744検査)を用いて、症例対照試験陰性デザインによる解析を実施した。
この論文でわかったことを、ざっくりまとめると?
✅ 接種後2週間から4週間後、5歳から11歳の調整OR 0.40(95%CI 0.35~0.45、推定VE 60.1%[95%CI 54.7%-64.8%])、12歳から15歳では調整OR 0.40(95%CI 0.29-0.56、推定VE 59.5%[95%CI 44.3%-70.6%])となっている。
✅ 2回目接種後の2カ月目では、5歳から11歳のORが0.71(95%CI 0.67-0.76; 推定VE 28.9%[95%CI 24.5%-33.1%])、12歳から15歳では0.83(95%CI 0.76-0.92; 推定VE 16.6%[95%CI 8.1%-24.3%])であった。
✅ 12歳から15歳では、ブースター接種後2~6.5週間のORは0.29(95%CI 0.24-0.35; 推定VE 71.1%[95%CI,65.5-75.7%])だった。
今日のまとめ!
✅ オミクロンに対する新型コロナワクチン(多くはファイザーワクチンのデータ)の有効性はある。
✅ デルタよりオミクロンのほうがワクチンの有効性が低い(今後、オミクロン株に向けたワクチンの普及は必要と思われる)。
✅ 感染予防効果は1ヶ月程度で下がってくる(ゼロになるわけではない)。
✅ 12歳以上の児に対するブースターワクチンの効果ははっきりみとめられる。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
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