インフルエンザワクチンは、子どもの入院率を減らすか?

2017年11月25日

Buchan SA, et al. Vaccine effectiveness against laboratory-confirmed influenza hospitalizations among young children during the 2010-11 to 2013-14 influenza seasons in Ontario, Canada. PloS one 2017;12:e0187834.

※ 2017/11/24タイトル変更  「インフルエンザワクチンは、子どもの死亡率を低下させるか?」というタイトルで別の論文を、翌日ご紹介することにした関係上、「子どもに対するインフルエンザワクチンは有効か?」から、タイトルを変更しました。

インフルエンザワクチンの効果を聞かれることは多いです。

■ インフルエンザのテーマに関して、3回シリーズの3回目。1回目と2回目は、「前シーズンのインフルエンザワクチンは、今シーズンに影響するか?」と、「インフルエンザワクチンは、いつまで効果が持続するか?」でした。

■ インフルエンザワクチンの効果に関し、疑問視する患者さんは少なからずいらっしゃいます。そこで、以前、本邦で行われた研究結果をご紹介いたしました。

■ 今回は、そのアップデートのつもりで、カナダからの報告で、3シーズンにわたっての検討の報告を読みました。

■ なお、診断陰性例デザイン(Test negative control design)は、下記のリンクを参照ください(PDFです)(http://www.m-review.co.jp/files/tachiyomi_J0026_1701_0035-0038.pdf)。診断陰性例デザインは、インフルエンザワクチンの研究では最近汎用されており、国によってはそのシーズン中に、その年のワクチンの有効性がわかるそうです。

 

 

2010-11年から2013-14年のインフルエンザシーズンに、カナダのオンタリオ州で入院した小児で、インフルエンザ検査陽性1280人、陰性8702人に関するインフルエンザワクチンの効果を調査した。

■ インフルエンザワクチンの効果の大きさ、特に幼児の重大なアウトカムを防ぐことは、未だはっきりしていない。

■ そこで、生後6〜59ヶ月の小児における、検査で確認されたインフルエンザによる入院に関し、ワクチンの有効性(vaccine effectiveness;VE)を推定した。

■ 2010-11年から2013-14年のインフルエンザシーズンに、カナダのオンタリオ州で入院した小児に診断陰性例デザインを適応し検討した。

■ ワクチン接種状況(完全vs不完全)、年齢、インフルエンザシーズンによりVE推定値を推定するための、年齢・シーズン・シーズン内の時期により調整したロジスティック回帰モデルを使用した。

完全予防接種:今シーズンに2回摂取もしくは前シーズンに1回の接種があり、今シーズンに1回の接種。

不完全予防接種:2回の接種が推奨されるが1回の接種。

(管理人注;もう少し細かい基準が記載されていますが、おおむねこのような基準で完全、不完全が決められていました。海外では、前シーズンにインフルエンザワクチン接種が実施されている場合、今シーズンは小児でも1回良いことになっています。)

論文から引用。データに含まれる参加者の特徴。

■ インフルエンザワクチン接種歴のある場合のVEも評価した。

■ 我々は、4シーズンにわたる、12.8%はインフルエンザ陽性だった9982人の入院患者からのデータサンプルを検討した。

■ ワクチン接種状況、年齢群、インフルエンザの診断時期別にVEの変動を確認した。

ワクチンの有効性(VE)は、完全なワクチン接種群では60%(95%CI 44%-72%)、不完全ワクチン接種では39%(95%CI 17%-56%)だった。

完全なワクチン接種群のVEは、生後24〜59ヵ月の小児では67%(95%CI 48%〜79%)、生後6〜23ヵ月の小児では48%(95%CI 12%〜69%)だった。

論文から引用。ワクチン有効性(VE)のまとめ。

■ さらに、完全なワクチン接種群のVEは、2010〜11年シーズンで77%(95%CI 47%〜90%)、2011〜12年シーズンで59%(95%CI 13%〜81%)、2012〜13年シーズンで33%(95%CI -18%~62%)、2013〜14年シーズンで72%(95%CI 42%〜86%)であった。

■ VEは、2012〜13年のシーズンを除き、現シーズンと前シーズン両方に摂取した群と、現シーズンのみ接種された群とに有意差はなかった。

■ インフルエンザワクチン接種は、多くのシーズンで、検査で確認されたインフルエンザによる小児の入院を予防するのに有効である。

 

結局、何がわかった?

 ✅インフルエンザに関連した入院に関し、6~59ヶ月の小児に対する完全なインフルエンザワクチン接種群では60%、不完全なワクチン接種では39%の低減効果であると推定された。

 ✅インフルエンザに関連した入院に関し年齢ごとで検討すると、完全なワクチン接種群のVEは、生後24〜59ヵ月の小児では67%、生後6〜23ヵ月の小児では48%だった。

 ✅インフルエンザに関連した入院に関し、シーズンごとのVEには違いがある。

 

 

インフルエンザワクチンの有効性は明らか。しかし、2歳未満であると効果は低くなり、シーズン毎の効果の差も大きい。

■ インフルエンザワクチンの入院を減らす効果は明らかと言えましょう。効果が不確かという話も聞くことがありますが、多くは統計がきちんとできていない報告に基づくものが多いと考えています。少なくとも、VEに関しては、「認められた」統計手法です。

■ しかし、2歳未満であると効果は低下し(効果がないわけではない)、シーズン毎の効果の差も小さくありません。また、シーズン中の効果の低減などにも注意が必要です。

■ 私は、インフルエンザワクチンは接種すべきと考えていますが、医療者にはこれらの知識も必要かと思っています。そのうえで、インフルエンザ予防接種に関しては選択いただく必要があるでしょう。

 

 

今日のまとめ!

 ✅小児に対するインフルエンザワクチンの入院抑制効果は明らか。しかし、その効果は2歳未満では低下し、シーズン毎に異なることも承知するべきである。