食物アレルギー治療の現状は?:患者さん向け

食物アレルギーに関する、患者さん向けの総論。

■ 2017年も今日で最後です。2016年3月に私の備忘録として始めたこのブログは、現在は医師、専門医も含め多くの方々に閲覧していただけるようになりました。閲覧していただいた皆様ありがとうございました。

■ 特に、今まで放置していたTwitterでつぶやくようになった10月ごろからTwitterのフォロワーさんが増えて、12月に500フォロワーさんを突破としたと思ったらあれよあれよと1500フォロワーさん近くまで増えることになりました。ありがとうございます。

 

JAMAに掲載された食物アレルギー治療の総論。患者さん向けです。

■ 食物アレルギー治療に関するまとめで、患者さん向けとなっています。紹介された経皮免疫療法はすでに本ブログでもご紹介していますので、ブログカード(リンク)を貼っておくことにします。

■ また、食物アレルギー治療に関しては、脱感作、SU(Sustained unresponsiveness)というという概念が、重要になってきます。最後に解説を少しだけ。

 

Jin J. Treatments for Food Allergies. Jama 2017; 318:1945.

 食物アレルギーの最新治療はどこまで進んでいるか?

イントロダクション

■ 食物アレルギーは、特に小児にとって共通の問題である。

■ アレルギーを引き起こす可能性のある一般的な食物には、ナッツ、牛乳、卵、貝などがある。

■ 子どもの食物アレルギーの一部(牛乳や卵など)は年齢とともに改善する傾向があり、他の食物アレルギー(ナッツや貝など)は成人まで続く傾向がある。

 

食物アレルギーにはどのような治療法が使われるか?

■ アレルゲンとは、アレルギー反応を誘発するものである。

■ 現在、食物アレルギーの唯一の「治療」は、アレルゲンを含むものを厳密に除去することである。

■ 偶発的な摂取の場合、軽度から重度のアレルギー症状の治療に対し、薬剤を使用することができる。

■ 軽度の症状には、発疹(蕁麻疹)、かゆみ、唇や舌の腫脹が含まれ、より重篤な症状には、呼吸困難、喘鳴、喉の腫れ、吐き気、嘔吐、下痢などがある。

■ 非常に重症のアレルギー反応はアナフィラキシーと呼ばれ、生命を脅かす恐れがあり、直ちに医師の診察を必要とする。

 

食物アレルギーと食物不耐性を混同しないことが重要である。

真の食物アレルギーは、食物中に存在するアレルゲンをターゲットとする過剰な免疫反応の結果、起こるものである。

■ 対照的に、食品不耐症は、ある人が特定の食品を消化するのに問題がある場合に起こる。

■ この不耐症性は、胃腸および身体に関連する多くの要因から起こる可能性があるが、免疫反応は関与しない

■ 食物不耐症の症状には、腹部膨満、ガス、腹痛、下痢などがあり、一例として乳糖不耐症が挙げられる。

 

免疫療法とは何か?

■ 免疫療法では、微量のアレルゲンが体内で軽い免疫反応を引き起こすものの、完全なアレルギー反応を引き起こすことはない。

■ これらの曝露を長期間(数年)繰り返すことで、体をアレルゲンが慣れ、最終的にはアレルギー反応が少なくなる。

■ このプロセスを脱感作(desensitization)という。

■ 免疫療法は、皮下注射(皮下免疫療法[subcutaneous immunotherapy]、一般にアレルギー注射[allergy shot]として知られている)、または飲みこむ(経口免疫療法[oral immunotherapy])、または舌の下に薬を置く(舌下免疫療法[sublingual immunotherapy])として体に届けることができる。

■ アレルギー注射は現在、季節的および環境アレルゲン、昆虫刺傷に対するアレルギーの治療に使用されているが、これまでの皮下免疫療法に対する研究結果は、アナフィラキシーなどの重篤な副作用のリスクが高すぎるため、食物アレルギーの治療には使用されていない。

 

食物アレルギーの実験的免疫療法

■ 現在、免疫療法は食物アレルギーの標準治療ではないが、活発に研究が行われている領域である

■ 現在、食物アレルギーに対しいくつかの種類の免疫療法で研究が行われている。

経口免疫療法は脱感作の達成にかなり有効であることが示されている。

■ しかし、重篤な副作用のリスクは高い。

■ 舌下免疫療法は、重篤な副作用に関して経口免疫療法よりも安全であり得るが、治療効果は、治療が中止された後、より早く失われるようである。

 

経皮免疫療法(Epicutaneous immunotherapy)

■ 最近の研究は、皮膚パッチを用いて、皮膚に注射する代わりに体内にアレルゲンを届けるような方法がとられている(皮下ではなく皮膚を通して)

■ この技術は注射よりも重篤な副作用のリスクの点でより安全と思われるが、有効性について長期的なデータが必要である。

■ JAMA2017年11月21日号には、小児のピーナッツアレルギーを治療するための経皮免疫療法を用いた初期の臨床試験について報告した記事が掲載されている。

 

皮下免疫療法の様々なタイプ

■ 食物アレルギーに対する、伝統的なアレルギー注射を用いた研究は極めて大きなリスクが示されたが、少ない断片であるアレルゲンを使用するなど、より新しいタイプの皮下免疫療法が研究されている。

 

結局、何がわかった?

 ✅食物アレルギーの唯一の「治療」は、アレルゲンを含むものを厳密に除去することである。

 ✅真の食物アレルギーは、食物アレルゲンに対する過剰な免疫反応であり、免疫反応を介しない食品不耐症は、食物アレルギーではない

 ✅免疫療法は、皮下免疫療法、経口免疫療法、舌下免疫療法、経皮免疫療法があるが、まだ検討段階である。

 

 

 来年もよろしくお願いいたします。

■ 食物免疫療法は、まず継続的に曝露していれば摂取可能であるという脱感作、そして最終的に自由に摂取できる耐性を目指すことになります。しかし、研究としては耐性を確定することが難しいため、便宜上、数週間から数か月中断しても耐性が維持できる状態をSustained unresponsiveness (持続的な不応答性)と言います。

■ 来年もよろしくお願いいたします。

 

 

今日のまとめ!

 ✅食物アレルギーの患者さん向けの解説を今年の最後の紹介論文とした。

 

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