麻黄湯がインフルエンザに有効というランダム化比較試験があります。
■ 漢方薬も臨床的なランダム化比較試験が実施されることがあり、以前、五苓散に関するRCTをご紹介いたしました。
■ 麻黄湯は、インフルエンザに保険適応もあり、ランダム化比較試験が行われています。
Nabeshima S, et al. A randomized, controlled trial comparing traditional herbal medicine and neuraminidase inhibitors in the treatment of seasonal influenza. Journal of Infection and Chemotherapy 2012; 18:534-43.
インフルエンザに罹患した成人28人を、麻黄湯群、タミフル群、リレンザ群にランダム化し、経過を比較した。
■ 日本のインフルエンザ患者には、伝統的に薬草である麻黄湯が処方されている。
■ インフルエンザの治療における麻黄湯の有効性をより理解するため、オセルタミビル(タミフル)またはザナミビル(リレンザ)との比較のためにランダム化試験を行った。
■ 発熱しているインフルエンザ症状を呈した成人患者は、発症48時間以内にインフルエンザの迅速診断キット陽性であり、登録のために評価された。
■ 麻黄湯 10人、オセルタミビル(商品名タミフル) 8人、ザナミビル(商品名リレンザ) 10人にランダム化された28人の患者のデータを、発熱(> 37.5℃)および総症状スコアについて患者により記録された症状カードから分析した。
■ ウイルス分離および血清サイトカイン測定も、1、3、5日目に実施された。
■ 医療で用いられる麻黄湯顆粒は、4種類の植物、麻黄、杏仁、桂皮、甘草から作成される。
■ 麻黄湯、オセルタミビル、ザナミビルに割り当てられた患者の発熱期間の中央値は、それぞれ29、46時間、27時間であり、麻黄湯とオセルタミビルに有意差が認められた。
■ 全体の症状スコアにおいて、3群間で有意差は認めなかった。
■ 試験期間中のウイルス持続率および血清サイトカインレベル(IFN-α、IL-6、IL-8、IL-10、TNF-α)は、3群間に有意差を認めなかった。
■ 季節性インフルエンザに罹患した健康な成人に麻黄湯顆粒の使用は、忍容性が良好であり、ノイラミニダーゼ阻害剤と同等の臨床的およびウイルス学的有効性を示した。
結局、何がわかった?
✅発症48時間以内の成人のインフルエンザに対し、麻黄湯群、タミフル群、リレンザ群の発熱期間の中央値は、それぞれ29、46時間、27時間であり、麻黄湯群の方がタミフルより発熱期間が短かった。
麻黄湯は、タミフルより解熱までの時間が早いという結果だった。
■ インフルエンザに対する一般的な治療として麻黄湯を使用しても良いと思われますが、一般にはやはり、タミフル・イナビル・リレンザを希望される方も多いですし、標準療法と言えましょう。
■ 個人的には、病歴からインフルエンザが疑われても、発熱からの期間が短くまだ抗インフルエンザ薬を使いにくい場面や、より早く症状の改善を目指したい場合に麻黄湯を単独もしくは併用で試みることが多いです。もちろん、保険適応もありますので、特に問題のある治療でもないでしょう。
■ 麻黄湯のみに含有されているわけではありませんが、生薬の一つの「麻黄」にエフェドリンという交感神経刺激物質が含まれます。「実証」向きの方剤です。「実証」というのは体力がありしっかりしている、といったイメージです。「一般的に」、小児は実証と考えますので、まずまず使いやすいともいえましょう。
■ また、この報告はランダム化比較試験とはいえ、盲検化は難しかったようです。
今日のまとめ!
✅麻黄湯は、インフルエンザに対し、リレンザと同等、もしくはタミフルより有意に発熱時間を短縮するかもしれない。