新生児期からのオイルマッサージは、皮膚構造の発達を阻害するかもしれない

Cooke A, et al. Olive oil, sunflower oil or no oil for baby dry skin or massage: a pilot, assessor-blinded, randomized controlled trial (the Oil in Baby SkincaRE [OBSeRvE] study). Acta dermato-venereologica 2016; 96:323-30.

新生児期に保湿剤として、何を塗るか?

■ 新生児期から保湿剤を塗布することで、アトピー性皮膚炎/皮膚トラブルの発症リスクが低下することが、いくつかのランダム化比較試験で示唆されるようになりました。

新生児期からの保湿剤定期塗布はアトピー性皮膚炎を予防する: ランダム化比較試験

新生児期からの保湿ケアは、皮膚トラブルとおむつ皮膚炎を予防する

■ 一方で、「何を保湿剤として塗布するか」は、現状ではあきらかではありません。

■ そんな中、新生児期からオイルを塗布すると、脂質ラメラ構造の発達を阻害する可能性を示唆する報告がなされました。脂質ラメラ構造とは、油と水の繰り返しから成ってバリア機能を発揮している皮膚保湿保持構造のことです。

ラメラ構造脂質

 

 

新生児115人を、オリーブオイル群、ヒマワリオイル群、オイル無し群を1日2回4週間塗布して、皮膚構造を評価した。

■ 赤ちゃんの皮膚へのオイル塗布は、小児期のアトピー性皮膚炎の発症に寄与する可能性がある。

■ そして、評価者盲検ランダム化比較パイロット試験では、新生児における影響を調査している、最終的な試験の実現可能性を示した。

■ 2013年9月と2014年7月に、32%にアトピー性皮膚炎の家族歴がある満期産の新生児115人(出生72時間以内)を、オリーブオイル群、ヒマワリオイル群、オイル無し群にランダム化し、1日2回4週間塗布した。

■ 初回評価の翌日から、両親は指示されたとおりにオイルを使用開始した。

■ 両親は赤ちゃんの左腕/左大腿/腹部に4滴のオイルを1日2回使用した。油残りによって引き起こされる可能性のある結果への干渉を回避しするため、検査当日にオイルを塗布しなかった。

■ さらに、脂質ラメラの分光プロフィール、経表皮水分蒸散量(trans-epidermal water loss;TEWL)、角質水分量、pH、記録した臨床所見を試験開始時、および出生4週間後に測定した。

■ 母1037人のうち、115人が研究参加に同意し(リクルート率 11.1%)、アドヒアランスは79-100%だった

■ 両オイル群は、角質水分量は有意に改善されたたが、オイル無し群と比較して脂質ラメラ構造の改善は有意に低下した

■ TEWL、pH、紅斑/皮膚スコアには有意差はなかった。

■ 脂質ラメラ構造の問題点に関し臨床的に重要とまではいえなかったが、さらなる研究が実施されるまで、新生児の皮膚にオイルを使用することを推奨するには注意が必要である。

 

結局、何がわかった?

 ✅新生児期からオリーブオイル、ヒマワリオイルを塗布すると、生後4週でのTEWL、pH、紅斑/皮膚症状には変化はなかったが、脂質ラメラ構造(皮膚の保湿保持構造)の発達が遅れた。

 

 

新生児期の保湿として何を塗るかを検討する必要がある。

■ 新生児期から保湿剤を塗布することは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを減らす可能性があることは、最初に述べた通りです。最近、多くのレビューで、皮膚バリアからのアトピー(アレルギー)マーチの予防に言及されるようにもなってきています。

The skin as a target for prevention of the atopic march

■ しかし、「何を塗るか」は、まだ明らかになったとは言えません。論文内でも、以下のように述べられています。

Our study was not designed to provide definitive answers on whether or not specific defined olive or sunflower oils should be used on babies’ skin.

「この研究は、特定のオリーブオイルまたはヒマワリオイルが赤ちゃんの肌に使用されるべきかどうかについての決定的な答えを提供するようには設計されていませんでした」

■ 過去、ピーナッツオイルを塗布することで、むしろピーナッツアレルギーを発症させたのではないかという報告があります。そういった意味でも、少なくとも、「食品成分」の含まれた保湿剤には注意が必要でしょう。

Factors Associated with the Development of Peanut Allergy in Childhood

■ この報告では、”臨床的に重要とまではいえなかったが、さらなる研究が実施されるまで、新生児の皮膚にオイルを使用することを推奨するには注意が必要である”と述べられています。

■ 私は、アトピー性皮膚炎の湿疹病変を改善後、保湿成分が含まれていたほうが、基剤のみよりも再燃が少ないことが示されていることから、保湿成分が含有されていたほうがいいのではないかと考えています。

アトピー性皮膚炎に対する保湿剤は、保湿成分を含むほうが効果的

■ もしくは、「マッサージ」自体の問題なのか、、この点の検討はさらに必要だろうと思っています。

 

 

 

今日のまとめ!

 ✅臨床的には重要視されるほどではないが、新生児期からのオイルの塗布は、皮膚の保湿保持構造である脂質ラメラ体の発達を阻害するかもしれない。

 

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