Papathoma E, et al. Cesarean section delivery and development of food allergy and atopic dermatitis in early childhood. Pediatric Allergy and Immunology 2016; 27:419-24.
帝王切開分娩⇔腸内細菌叢の変化⇔アレルギー疾患の報告、3本目。
■ 今週は、腸内細菌叢からアレルギー発症、そこに帝王切開が介在するかもしれないというテーマの報告をご紹介しています。
■ 今回は最終の3本目。
同じ三次病院の産科で出生した計459人を3歳まで追跡し、食物アレルギー発症リスクを検討した。
背景
■ 帝王切開(Cesarean section;CS)による出産は、乳幼児期早期の正常な腸内微生物叢の確立に変化を起こし、アレルギー疾患の原因となるかもしれない。
■ この研究は、均一なpopulationベースの出生コホートからのデータを用いて、帝王切開分娩が、3歳までの医師が診断した食物アレルギーやアトピー性皮膚炎との関連性を調査した。
方法
■ 同じ三次病院の産科で出生した計459人の児を、出生時、生後1、6、12、18、24、30、36ヶ月に追跡調査した。
■ 食物アレルギーまたはアトピー性皮膚炎を示唆する症状のある児は、小児アレルギー専門医によって評価され、明確な基準に基づき診断された。
結果
■ 帝王切開率は50.8%(233人)だった。
■ 食物アレルギーは24人(5.2%)、アトピー性皮膚炎は62人(13.5%)だった。
■ 帝王切開(OR 3.15; 95%CI 1.14-8.70)、児のアトピー性皮膚炎(OR 3.01; 95%CI 1.18-7.80)、親のアトピー(OR 4.33; 95%CI 1.73-12.1)、妊娠期間(OR 1.57; 95%CI 1.07-2.37)は、児の食物アレルギー発症における有意な独立予測因子であった。
数字で「何倍くらい起こりやすいか?」とみていただければOKです。
■ 帝王切開によって出生した少なくとも1種類のアレルギーをもつ両親を持つ児は、アレルギー疾患のない両親から出生した児と比較して、食物アレルギーを発症する確率が高かった(OR 10.0; 95%CI 3.06-32.7)。
■ 一方、アトピー性皮膚炎における帝王切開の影響は有意ではなかった(OR 1.35; 95%CI 0.74-2.47)。
結論
■ 帝王切開による出生は、食物アレルギーの発症の要因だが、乳幼児期のアトピー性皮膚炎の発症には影響しなかった。
■ 帝王切開分娩は、特にアレルギー素因を有する児において、食物アレルゲンに対する免疫応答をアップレギュレートするのかもしれない。
結局、何がわかった?
✅3歳までの食物アレルギー発症リスクに対し、帝王切開分娩(OR 3.15; 95%CI 1.14-8.70)、児のアトピー性皮膚炎(OR 3.01; 95%CI 1.18-7.80)、親のアトピー(OR 4.33; 95%CI 1.73-12.1)、妊娠期間(OR 1.57; 95%CI 1.07-2.37)が、有意な独立予測因子だった。
帝王切開とアレルギーシリーズ。もちろん、帝王切開を恐れるあまり、無理な経膣分娩を選択するべきではありません。
■ 帝王切開分娩が腸内細菌叢の差異を生み、腸内細菌叢は感作の働き、腸内細菌叢はアレルギー疾患の発症に関わる、、、そういった流れで3本の論文をご紹介してきました。
■ もちろん、無理をして帝王切開分娩をさけて母児のリスクをあげては本末転倒です。
■ こういった研究から、腸内細菌叢の改善にどうアプローチしていくかを考えていった方が、より現実的と思います。
今日のまとめ!
✅帝王切開分娩は、腸内細菌叢の変化にともない、食物アレルギー発症リスクをあげるかもしれない。